ベンダーに課題を残すモバイルBI【後編】
「モバイルBIアプリ」ならではの強みを生かすとはどういうことか
PC向けBIアプリのユーザーインタフェースをモバイルデバイスに無理に移植しようとしてもうまくいかない。そうであればむしろ、モバイルデバイスならではの新しい体験を作ることを目指すべきだ。
2008年に、ビジネスインテリジェンス(BI)ベンダーのYellowfin Internationalは同社初のモバイルアプリケーションを発表した。そのアプリは一度だけ更新されたが、多くのエンドユーザーを引き付けることはなかった。
最近、YellowfinはそのモバイルBIアプリを徹底的に見直した。デスクトップでのエクスペリエンス(経験価値)を再現するのではなく、ソーシャルメディアに外観や動作がよく似たユーザーインタフェース(UI)に変えた。そのUIは、最も関連性が高いと見なされる情報を強調し、モバイルユーザーが見やすい方法で表示するようになった。
YellowfinのCEOグレン・ラビエ氏によると、モバイルBIアプリが効果を発揮する可能性が高いのは、そのコンテンツやエクスペリエンスの提供がモバイルデバイス固有の設計になっている場合に限られる。「デスクトップのダッシュボードエクスペリエンスをスマートフォンに強引に押し込めようとしてはならないことに気付いた」とラビエ氏は話す。
MicroStrategyもモバイルアプリに積極的に投資しているBIベンダーだ。同社は2009年にモバイルBIアプリの開発を始めた。同社で製品マーケティング部門のシニアバイスプレジデントを務めるヒュー・オーウェンは「当社は常に、できるだけ多くのユーザー企業に、場所を問わずにインテリジェンスを提供することに力を注いでいる」と主張。モバイルBIアプリのおかげで「デスクトップのBIアプリを見ることがないエンドユーザーに、BIという武器を与える新たな機会がもたらされる」と説明する。
モバイルBIアプリとデスクトップBIアプリは別者だと考えるべし
BIベンダーはデスクトップBIアプリ開発に多額の投資をしてきた。その多くはまだモバイルBIアプリに同様の投資をしようとはしていない。
MicroStrategyの現在のモバイルBIアプリは、ユーザー企業がカスタマイズできる。例えば小売業の顧客は取引を実行する機能を組み込むことが可能だ。同社は自社のBIツール「MicroStrategy 2019」の可視化機能群「HyperIntelligence」の一部として、モバイルデバイス向けの「HyperIntelligence for Mobile」を提供している。HyperIntelligence for Mobileは、その拡張知能機能と機械学習機能により、ある程度のコンテキストを理解し、直感的にエンドユーザーに情報カードを提供する。
HyperIntelligence for Mobileは店内に入った客に、要求されなくてもその店に関するカードを提示する。カレンダーを確認し、言葉や案内状をざっと調べ、それをカードと照合してプッシュ通知を表示できる。「これは一風変わったアプローチとなり、当社を目立たせるのに役立った」(オーウェン氏)
ファーマー氏によると、DomoもまたBIをモバイルデバイスに順応させる方法を学んだベンダーだという。Qlik TechnologiesやOracleも同様だ。だが効果的なモバイルBIアプリの開発に苦戦しているベンダーも少なくない。そうしたベンダーについて「戦略が曖昧だ。一部をモバイルデバイス向けに変化させているのに、それほど面白い部分や魅力的な部分がない」とファーマー氏は述べる。
「なぜモバイルなのか」を理解するベンダーがイノベーションを起こす
モバイルBIアプリはスマートフォンの画面が小さいことによって制約を受ける。だが成長の余地は残っている。
スマートフォンやタブレットにはデスクトップPCにはない独自の機能がある。その一例がGPS(全地球測位システム)だ。カメラはデスクトップPCにも搭載されているが、その場から動かすことはできない。スマートフォンやタブレットのカメラはどこにでも持ち歩ける。
例えばGPSがあれば、複数の場所で仕事をしている従業員が、適切に設計されたモバイルBIアプリを使用して、ある場所に赴いたときに、その場所に関するすぐに使えるデータを自分のモバイルデバイスに直接転送できる。
「優れたモバイルBIアプリは、スマートフォンやタブレットに物理的に付属する機能を活用する」とオーウェン氏は語る。位置情報を利用する。カメラを使って写真を撮影し、QRコードやその他のバーコードを読み取る。「こうした作業をノートPCですることはないだろう」(同氏)
モバイルBIアプリの進化は受身ではなく、先回りして対処できるようにすることが次の一歩になるとオーウェン氏は話す。機械学習などのAI技術を使用して行動パターンを学習することが、その実現につながる。「何が必要なのかをエンドユーザーが知る前に答えを提示する」と同氏は述べる。
BIベンダーは、モバイルBIアプリの開発を進める中でセキュリティに対処することも必要だろう。従業員が個人所有のデバイスを仕事に使う場面はかなりある。セキュリティはほぼ全ての組織にとって最優先事項になる。そのため「エンドユーザーのみならず、デバイスにも基づいて、適切なレベルの制御とガバナンスを整備することがゆくゆくは重要になる」とレオーネ氏は語る。
結局のところモバイルデバイスは、エンドユーザー同士が会話するためのツールだ。モバイルデバイスをありのままに捉え、モバイルデバイス固有の力を生かしたモバイルBIアプリを開発するベンダーがイノベーションを先導する。
「モバイルデバイスは、熟考や分析のためのデバイスではない。重要なことをちらりと確認するためのデバイスだ」とファーマー氏は語る。同氏によると、本当に優れたモバイルアプリは2つのことを実現する。それは重要な情報を一目で確認できること。そして、そうした情報についてコミュニケーションを取れることだ。「結局のところ、モバイルデバイスはコミュニケーションデバイスだ」(同氏)
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