意外と簡単
セルフサービスBI導入、3つの「しくじり」を避けるための原則
セルフサービスBIは企業の全員に大きな変化をもたらす可能性がある。本稿では、導入を容易にするために心に留めておくべき原則を紹介する。
セルフサービスBI(ビジネスインテリジェンス)の導入が失敗しがちなのはなぜだろう。理論的には、セルフサービスBIはさまざまな問題の答えになる。だが、最終的に失望を感じる企業が少なくない。データの量に圧倒され、有益な情報が得られずに悩んでいる。洞察を得ることができず、データの混乱と無秩序状態が生じている。
セルフサービスBIツールを初めて導入する企業は、次に挙げるシナリオのいずれかに陥る傾向がある。
- 複数のセルフサービスBIツールを評価してそのうち1つを購入し、全社規模で導入する。だが、大半の従業員がすぐにスプレッドシートの利用に逆戻りする。
- 少数の従業員はセルフサービスBIツールを自力で習得して成果を出す。ただし、それ以外の従業員は既存のレポートやスプレッドシートの利用を続ける。
- 全社規模で多くの従業員がセルフサービスBIツールを利用している。だが、運用がサイロ化している。そのため、各事業部門が、他の部門とは異なる独自の数値を生み出している。
シナリオ1と2では、従業員がスプレッドシートの利用を続けているため、重要データを含むスプレッドシートが無秩序に複製され、最新データの在りかが不明瞭になる「データシャドーシステム」(別称「スプレッドマート」)が生まれる。シナリオ3では、セルフサービスBIツールがデータシャドーシステムと同様の問題を生み出す。どのシナリオも、完全に混乱した無秩序状態になっている。
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セルフサービスBI導入の前に知っておきたいこと
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セルフサービスBI活用事例
適切なセルフサービスBIツールをどう選べばいいのか
企業がセルフサービスBIツールを評価するのは、自社に適したものを1つ選びたいからなのだが、無意識に汎用(はんよう)のツールを選んでしまうことが少なくない。このアプローチの問題は、従業員はそれぞれ全く同じではないことにある。分析のニーズはそれぞれ異なり、分析スキルもさまざまだ。だが企業は、全従業員がパワーユーザーで、自身でダッシュボードの構築やデータ視覚化、レポート作成をしたいと考えているという前提でツールを選んでいる。現実は正反対だ。大半の従業員は、データに振り回されるのではなく、データを利用して各自の仕事をする必要がある。
業務で分析に携わる役割には複数がある。ビジネスアナリストやデータアナリスト、さらにはデータエンジニアデータ、サイエンティストなどもある。もちろん、一般的な情報消費者(情報を利活用する従業員)であっても分析が必要なことはある。
分析には以下の4種類がある。
- 記述的分析
- 診断的分析
- 予測分析
- 処方的分析
このうち、圧倒的にニーズが高いのは記述的分析だ。記述的分析では、事業で何が起きているか、事業の動向はどうなっているかを、担当者が調べることができる。これは一般的な情報消費者が必要とする種類の分析だ。
情報消費者はダッシュボードの作成は望まない。ただし、既存のダッシュボードや視覚化、レポートを利用してデータをフィルタリングし、掘り下げて調査したいと考える。画面に何も映っていないセルフサービスBIツールを目の前に置かれれば、間違いなく戸惑い、再びスプレッドシートに戻るだろう。
セルフサービスBIツールには、使うのにふさわしい時と場所がある。セルフサービスBIツールが最も適しているのは、ビジネスアナリストやデータアナリストがする診断的分析だ。こうしたアナリストは、データを分析し、可能であれば自身や他の従業員向けにダッシュボード、視覚化、レポートを作成する。
予測分析と処方的分析は、データエンジニアとデータサイエンティストの仕事だ。こうした仕事では、セルフサービスBIツールだけでなく、統計アプリケーションや、分析用データの事前準備を容易にするデータプレパレーションツールも必要になる。
セルフサービスBIツールを選択する前に、分析のニーズとスキルの点からユーザーの区分を分析する。その区分に応じて、適切なツールと分析環境を設定してセルフサービスBIツールの普及を促す。そうすれば、購入したツールを結局誰も利用しないという事態を避けることができる。
事業部門とIT部門の役割の変化
これまで事業部門の担当者は、IT部門が開発した企業アプリケーションやカスタムBIアプリケーションに組み込まれたレポートとダッシュボードを利用してきた。こうした組み込みレポートやダッシュボードの内容が十分なものではなかったり、組み込むべきアプリケーションが多岐にわたったりすると、IT部門のバックログ(開発に着手できない案件)が増え続けるという状況に陥る。こうしたバックログはIT部門だけでなく、事業部門の担当者にもストレスを与える。そして、事業部門はセルフサービスBIツールベンダーの「IT部門が不要になる」という宣伝文句に踊らされることになる。IT部門がこれまで担ってきたBI業務の全てが事業部門に移管されるようになっても、事業自体にメリットは生まれない。
セルフサービスBIツールの導入を成功に導くためには、事業部門とIT部門との連携が必要だ。IT部門は、データウェアハウスをはじめとするデータのバックボーンを構築し、管理する。そして、一般的な情報消費者が必要とする記述的分析をサポートする。ビジネスアナリストとデータアナリストは、IT部門が構築したデータのバックボーンを利用して診断的分析を実行し、その結果を公開する役割を担う。データエンジニアとデータサイエンティストは、同様にデータのバックボーンを利用して、予測分析と処方的分析を実行し、結果を公開する。
データガバナンスの導入
セルフサービスBIツールがどのように構築されているかにかかわらず、複数の事業部門が共有するダッシュボードやレポートには、データガバナンスが必要になる。データを選択し、データにフィルターを掛け、企業内の規則に基づいて、ビジネス指標や主要業績評価指標(KPI)を作成する。データのサイロ化を避けるには、KPIをきちんと定義した上で、その定義をダッシュボードとレポートに適用する必要がある。こうした合意は、データガバナンスを確立し、それが企業のビジネスプラクティスとして受け入れられたときに実現する。
セルフサービスBIツールの導入を成功に導くのはツールではない。むしろ本稿で紹介したように、ポリシーとプロセス、駆け引きに適切に焦点を当てることが必要だ。
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