先進企業のIT幹部が語る現実的なAI戦略
シェル、ハリバートン、ユニバップが考える「今のAIにできること」
いち早くAI技術を活用した企業は、AI技術を自社のビジネスに積極的にどう生かしているのか。先駆的な企業の話から、AI技術の可能性を明らかにする。
さまざまな企業のIT部門の幹部が、社内の業務改善や複雑な問題の分析、自社の最終利益の実現に人工知能(AI)技術を導入している。調査会社Constellation Researchのカンファレンス「Connected Enterprise 2019」のパネルディスカッションに登壇したIT部門幹部は、自社のビジネスモデルを変革する際にAI技術がいかに役立ったかを説明した。
創業100年の歴史を有するHalliburtonは、エネルギー業界に製品やサービスを提供する世界有数の企業だ。同社でチーフデータサイエンティストを務めるサティヤム・プリヤダルシ氏によると、同社は過去20年にわたってAI技術を利用してきたが、AI戦略を多面的な問題に応用できるようになったのはつい最近のことだという。
他の大企業と同様、Halliburtonも社内全体の情報へのアクセスを容易にするデジタル戦略を進めている。「従業員の退職に伴い多くの知識が失われる。そのため、その知識を取り込む手段を用意しなければならない」とプリヤダルシ氏は言う。取り込む情報が多くなれば、AI技術を利用した情報の分析や検索が容易になる。
予防保全にAIを利用するShell
Shell InternationalはHalliburtonと協力関係にある企業だが、AI技術には独自に投資している。Shellでデータサイエンティストを率いるデヴァル・パーンディヤ氏によると、同社でAI技術が大きく関与する分野は予防保全であり、AI技術がサポートするのは、石油掘削装置などのシステム部品を交換する時期の把握だ。
世界各地にガソリンスタンドを持つ世界有数の小売業者であるShellは、1000億個を超えるデータポイントから顧客の行動や作業の傾向を集めている。このデータを有効活用すべく、同社はAI技術を生かそうとしている。そのためには、まず文化を変えなければならなかった。
Shellの文化は「早めに失敗を経験し、その失敗から学ぶように変わった」とパーンディヤ氏は話す。数十億ドルが絡む同社にとっては、大きな考え方の変化だ。「AI技術が可能にすることに目を向けたことが、考え方を変えるのに役立った」(同氏)
最初からAIを利用 「月の採掘」を目指すUnibap
AI技術の最大の可能性は、最初からAI技術を利用することを前提に構築された企業によって引き出される可能性がある。スウェーデンの企業Unibapは最初からAI技術を利用して、自動製造と自動塗装のシステムを開発してきた。
UnibapのCEOを務めるフレドリック・ブルーン氏によると、同社は米航空宇宙局(NASA)が使用する人工衛星の開発に携わっており、最終的には約15年後に月での採掘作業を支援する計画だという。現在同社はAI技術を工場の自動化に利用している。「将来は月での採掘作業にAI技術を利用する」(ブルーン氏)
インテリジェント企業の登場
「インテリジェント企業」に関するセッションでは、ある講演者が「AI技術はビジネスに多くの洞察をもたらすようになったが、AI技術はもっと簡単になるべきだ」と語った。「ソフトウェアは簡単でなければならない。ビジネスプロセスのレベルを引き上げるには、その出発点から簡単にする必要がある」と語ったのは、Celonisで最高情報責任者(CIO)を務めるマルセル・フォルマー氏だ。Celonisは企業の業務効率化を支援する「プロセスマイニング」ソフトウェアを提供するベンダーで、そのユーザー企業にはAirbus、Siemens、Uber、Vodafoneなどを抱える。
「将来向かう先に比べて、現在のAIシステムのインテリジェンスは非常に限られている」とフォルマー氏は話す。ユーザー企業が求めるのは実用的な洞察だ。「将来は、ユーザー企業がシステムやソフトウェアロボットに適切な質問をするだけでプロセスを自動化できるような簡単なものになるだろう」と同氏は言う。
Oracleでアダプティブインテリジェンス担当のバイスプレジデントを務めるメリッサ・ボクサー氏も、全ての問題が複雑なAI技術を必要とするわけではないと警鐘を鳴らす。「誰もが『自社の事業は特別だ』と考える。だが共通の課題を含む部分はある」とボクサー氏は話す。
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