「オンライン授業」実践ガイド【第1回】
「オンライン授業」を難しくする3大課題とは? 新型コロナで脚光のIT活用法
新型コロナウイルス感染症の拡大が、ITを活用した「オンライン授業」の必要性を顕在化させた。だがオンライン授業にハードルを感じる教育機関や教員は少なくない。何が課題なのか。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は「教育機関におけるIT活用を避けて通れないものにした」と、IT活用に先駆的に取り組んできた青山学院中等部・高等部の安藤 昇氏は述べる。特に教育機関の間で関心が広がったのが、インターネットを介した遠隔授業「オンライン授業」だ。感染拡大防止策の一環として、政府が2020年2月に発表した全国全ての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校に対する一斉休校要請で、教育機関は学習者の登校を前提としない教育活動を余儀なくされた。こうした中で白羽の矢が立ったのがオンライン授業だった。
オンライン授業には、学習者が任意のタイミングで教材を閲覧できる「オンデマンド型」と、教員が授業をライブ配信する「リアルタイム型」がある。オンデマンド型はあらかじめ撮影しておいた、教員による授業の映像を動画教材として学習者に提供。リアルタイム型はインターネットを介して教員と学習者との間をつなぎ、通常の対面授業に近い感覚で授業ができる。
教育機関が新型コロナウイルス感染症のような緊急事態下でも教育活動を止めない策として、オンライン授業は大いに役立つ。ただし実践に当たっては幾つもの課題がある。教育機関がオンライン授業に対して抱えている主な課題は3つある。
課題1.機材不足
1つ目に、オンライン授業に必要な機材の不足が挙げられる。オンデマンド型であれ、リアルタイム型であれ、オンライン授業を実施するには撮影用のカメラやマイク、PCといったハードウェアが必要だ。あらゆる教育機関で、こうした機材が十分に整っているわけではない。文部科学省は、新型コロナウイルス感染症対策として教育機関がオンライン授業を実施する際の機材不足を考慮し、カメラやマイクといった機材の整備支援策を打ち出している。
リアルタイム型の場合はさらに、映像の安定的な配信のために十分な回線容量(帯域幅)を持ったネットワークを配備しなければならない。文部科学省が2019年12月に発表した「平成30年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」によると、全国の公立学校(小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校)におけるデータ伝送速度30Mbps以上のインターネット回線普及率は、2019年3月時点で93.9%に上る。ただし高精細映像の配信に適する100Mbps以上のインターネット回線普及率は70.3%にとどまる。
課題2.システム不足
2つ目はシステムの不足だ。学習者の学習状況を管理する「LMS」(学習管理システム)といった教育用システムは、あらゆる教育機関に十分に整備されているわけではない。オンライン授業の効果を高めるには、教員と学習者がコミュニケーションを取る機会を意図的に設け、綿密に学習状況を把握して効果を検証することが重要だ。その上でLMSなどの教育用システムが大きな役割を果たす。
課題3.スキル不足
3つ目は教員のスキル不足だ。教育機関がさまざまな機材やシステムを整えても、全ての教員がそれらをうまく活用できるとは限らない。プレゼンテーション用ソフトウェアでデジタル教材を自作することさえ「国内の全教員ができるとは考えていない」と安藤氏は見解を示す。オンライン授業はこれらを効果的に組み合わせることが必要になるため、教員にとってさらにハードルは高くなる。
オンライン授業が変える「良い教員」の定義
オンデマンド型のオンライン授業でも活用する動画教材は、教員が自作する以外にも、市販のものや無料で公開されているものがある。教員にとっては、さまざまな動画教材を通じて自分の授業と他人の授業を比較する新たな機会が生まれることになる。これまでは自校、あるいはその中の同じ教科担当の授業など、限られた範囲にしか比較対象がなかった教員にとっては、動画教材を通じて多様な教員の授業を確認しやすくなることで、自らの授業の参考になる材料が増える。一方で熟練者の授業と自らの授業とを比較する中で、教員によっては「自信をなくしたり、つらいと感じたりする人も出てくるのではないか」と、教育ITに詳しいラックの武田一城氏は言う。
「オンライン授業が広まることは『良い教員』の定義を変える可能性がある」と武田氏は述べる。従来は「授業内容を分かりやすく板書する」などの豊富な対面授業のスキルを持った「良い授業ができる教員」が良い教員だと見なされてきた傾向がある。オンライン授業は、こうした対面授業のスキル以外にも、機材やシステムの活用スキルを含めて、さまざまなスキルが必要だ。「学習者の学習進行度や理解度に応じて適切な教材を提供する『ファシリテーター』の役割をうまく遂行できる教員が『良い教員』だ、という見方が生まれる可能性がある」と同氏は説明する。
第2回は、オンライン授業に際して教員や学習者が用意すべきIT製品・サービスを紹介する。
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「オンライン授業」実践ガイド
停滞する国内の教育IT導入は、新型コロナウイルス感染症による休校措置で強制的に推し進められた。教育活動を止めないための対策としてますます重要性になる「オンライン授業」のポイントを探る。
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