Cleveland ClinicのCOVID-19戦略【第1回】
医療機関がコロナ対策でデータ活用 「患者数の把握」より重要な効果とは?
米国の学術医療センターCleveland Clinicは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の急増に備え、SAS Instituteとデータモデルを共同開発した。その経緯とデータ活用の効果を探る。
Cleveland Clinicは米国の3つの州で11カ所の病院と19カ所の保険医療施設を運営する学術医療センターだ。世界中の医療機関と同様に同施設も新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療に必死に取り組んでいる。COVID-19のパンデミック(世界的大流行)がどこまで広がるのかまだ分からないため、同施設はすでに新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した患者の治療と同時に、これから感染する可能性のある患者への対応に備えている。
データモデル開発の経緯とデータ活用の“真の効果”
どうなるか予想もできない今後に備えるために、Cleveland Clinicは複数のシナリオに基づいて感染者数を予測するデータモデルの活用が不可欠だと考えた。米国オハイオ州で初めてSARS-CoV-2の感染者が判明したのは2020年3月9日だった。それからすぐに、Cleveland Clinicはデータモデルの開発に着手した。
Cleveland Clinicは2020年3月16日の週に単独で作業を開始し、翌月曜日までにはSAS Institute(以下、SAS)にデータモデルの共同開発を依頼した。Cleveland ClinicとSASは1982年からのパートナーだ。Cleveland Clinicは、各種シナリオ別のCOVID-19感染拡大予測モデルを約1週間で作成し、患者の急増に備えてデータドリブンな意思決定をスタートした。外出を制限する命令が何も発動しない場合や、そうした命令が早期に発動する場合、または別の時期に発動する場合など、複数の状況を想定してさまざまなシナリオを用意したという。
「私たちが採用した手法は、一定の仮定を基準にして後からそれを調整するといった従来の手法とは少し異なる」と、Cleveland Clinicでエンタープライズアナリティクス担当エグゼクティブディレクターを務めるクリス・ドノバン氏は説明する。同施設は複数のシナリオを想定して最悪の事態を予想し、それを反復しながら経営陣にさまざまな可能性を示せるようにした。
2020年3月23日にオハイオ州が自宅待機命令を施行するまでの間、Cleveland Clinicは、外出が制限されないことを前提としたデータモデルに基づいて最悪のシナリオに備えた。実際には自宅待機命令が出たため、オハイオ州は最悪の事態には至らず、Cleveland Clinicは早めに設備や人員を確保しておくことができた。
「データモデルを利用する場合『患者数や死者数はどうなるか』を知りたくなるものだ」と、SASでグローバルパブリックセクターおよび財務サービス担当ディレクターを務めるスティーブ・ベネット氏は指摘する。ベネット氏によると、これらのデータモデルの本当の力は、想定し得る施策ごとに効果を検証し、どの結果が一番良いかを考える「What-If分析」ができる点にある。これにより「医療機関だけでなく政府や公衆衛生当局の上層部も、さまざまな施策の効果の予測に基づく意思決定ができるようになる」(同氏)
次回はCleveland Clinicがデータモデルを開発した際のプロセスと課題を解説する。
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