それぞれのメリットとデメリットを解説
「VM」「コンテナ」「サーバレス」の違い アプリ実行に最適な技術は?
アプリケーションを稼働させるITインフラの自由度を高める技術に「仮想マシン」「コンテナ」「サーバレスコンピューティング」がある。どの技術を選ぶべきなのだろうか。
アプリケーションの構造は、それを実行する物理サーバやOSなどのITインフラに依存する。ベンダー各社は何年もの間、そうした依存関係を少なくして、アプリケーションの構造を単純化しようとしてきた。「仮想マシン」(VM)や「コンテナ」「サーバレスコンピューティング」はそれぞれ異なる技術だが、アプリケーションとITインフラの結び付きを弱める効果を持つ点は共通する。いずれもアプリケーションを稼働させるITインフラを変更しやすくする半面、IT担当者にアプリケーション管理に関する課題をもたらす。
仮想マシン
調査会社Gartnerのサンフランシスコ地域担当副社長兼アナリスト、アルン・チャンドラセカラン氏は「VMは物理サーバが持つ機能を抽象化してアプリケーションを稼働させるための、仮想的な専用ハードウェアだ」と解説する。VMを使うと、CPUやメモリ、ストレージといったリソースの利用効率が劇的に向上する。組織はVMを利用することで、1つのアプリケーションに1台の物理サーバを割り当てるのではなく、1つの物理サーバを使って複数のアプリケーションを運用できるようになる。
VMには限界がある。VMはゲストOSと結び付いている。「Windows」をゲストOSにしたVMで稼働するアプリケーションを、「Linux」で実行することはできない。その逆も不可能だ。
コンテナ
移植性の低さといったVMの課題を解消するのが、コンテナだ。コンテナはアプリケーションとその関連プログラム、ライブラリ(拡張機能群)を内包するが、OSは含んでいない。「コンテナはOSを仮想化して、複数のコンテナが単一のカーネル(OSの中核要素)を共有できるようにする」とチャンドラセカラン氏は解説する。コンテナはOSの1つ上の層で稼働して、アプリケーションをOSから切り離す。2018年12月に調査会社451 Researchが発表した調査結果によると、コンテナ利用は2022年には43億ドル以上に増え、CAGR(年平均成長率)は30%に達する。
コンテナは必要に応じて起動し、数秒から数分だけ稼働した後に消滅することもある。組織が大量のコンテナを生成すると、コンテナがどう機能して、どんなボトルネックが生じるかを把握するのが難しくなる。
サーバレスコンピューティング
サーバレスコンピューティングは、ストレージの割り当てやネットワーク接続の設定といった、従来のITインフラで必要だった大量の単純作業から開発者を解放する。アプリケーションを稼働させるには物理サーバが必要だが、サーバレスコンピューティングでは開発者が物理サーバを構築する必要はなくなる。代わりに必要なときだけリソースを呼び出すAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を利用する。
開発者はサーバレスコンピューティングを採用することで、ITインフラを抽象化できる。「開発者はITインフラ関連の初期設定や管理よりも、アプリケーションの設計と構成に集中できるようになる」(チャンドラセカラン氏)
必要に応じてリソースを呼び出すサーバレスコンピューティングは、従来のアプリケーションの開発手法とは異なる。そのためサーバレスコンピューティングを採用する場合は、開発者がアプリケーションの構築方法を再考しなければならず、トレーニングを要することもある。
サーバレスコンピューティングを採用したアプリケーション(以下、サーバレスアプリケーション)が動作するときは、その都度ネットワークを介してリソースを呼び出さなければならない。結果として通信に遅延が生じることもあり、リアルタイムのデータ処理が必要なアプリケーションでは問題が発生する可能性がある。
ベンダーロックインの恐れもある。例えばAmazon Web Services(AWS)のイベント駆動型ツール「AWS Lambda」を使って構築したサーバレスアプリケーションを、Microsoftのクラウドサービス「Microsoft Azure」に移植して機能させるのは容易ではない。
最後にどうするか
VM、コンテナ、サーバレスの中から、組織はどの技術を選ぶべきなのか。「その答えはアプリケーション次第だ」と、ITコンサルティング会社Enterprise Management Associatesのマネージングリサーチディレクター、トーステン・ボルク氏は言う。
組織が利用する技術をどれか1つだけに決める必要はない。この3つの技術は異なるが、併用はできる。例えばコンテナをVMで実行することも可能だ。こうすることで「開発者は、VMの管理・監視のしやすさと、コンテナが実現する移植性の高さを組み合わせることができる」とボルク氏は指摘する。同様に、コンテナをサーバレスアプリケーションと連携させることもできる。
VM、コンテナ、サーバレスの実現にはそれぞれ、個別のツールが必要だ。仕組みが異なる複数のツールの使用には困難が伴う。VMはこの3つの中では早期に普及した技術で、管理ツールも充実している。コンテナやサーバレスのための管理ツールはまだ開発の初期段階にある。組織の究極の望みは、この3つの技術全てを対象にした管理ツールだ。「単一の統合された管理ツールの開発は、まだごく初期の段階にある」とチャンドラセカラン氏は語る。
アプリケーションとITインフラの間の強固な結び付きを絶ち、アプリケーションの移植性を向上させたいと望む組織は少なくない。その万能薬は、依然として見つかっていない。
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