コンテナネットワークの基礎知識【第7回】
Red Hat、VMware、Ciscoの「商用Kubernetes」とは? それぞれの違いは
オンプレミスインフラ向け製品を手掛けてきた主要ベンダー各社は、さまざまなアプローチで「Kubernetes」を自社製品に取り込んでいます。Red Hat、VMware、Cisco Systemsの取り組みを紹介します。
第6回「AWS、Azure、GCPの『Kubernetesサービス』とは? 可用性を高めるための工夫」では、コンテナオーケストレーター「Kubernetes」を取り込んだ代表的な製品やサービスのうち、大手クラウドベンダーのKubernetes関連サービスを紹介しました。オンプレミスインフラ向け製品を提供するベンダー各社も、Kubernetesに関連する取り組みを重要視しているようです。Red HatとVMware、Cisco Systemsの取り組みと、各社のKubernetes関連製品を見てみましょう。
Red HatのKubernetes関連製品
Red HatはKubernetesの登場後間もなく、コンテナ管理製品群「Red Hat OpenShift」の中核機能をKubernetesに置き換え、さらに「Red Hat OpenShift Enterprise」の製品名を「Red Hat OpenShift Container Platform」(以下、OpenShift)に変更して提供しています。オープンソースソフトウェアであるKubernetesへのコントリビューション(オープンソースソフトウェアの開発に貢献する活動)はもちろん、M&A(合併・買収)によるOpenShiftの機能強化も進めています。例えば2018年にコンテナ実行環境向けOSを提供していたCoreOSを買収し、その中核的な技術をOpenShiftに取り込みました。OpenShiftはオンプレミスのインフラだけではなく、「Amazon Web Services」「Microsoft Azure」「Google Cloud Platform」などの主要なクラウドサービスでも利用可能です。
VMwareのKubernetes関連製品
VMwareは、Kubernetesのサポート機能やサービスを提供するHeptioや、同じDell Technologiesグループでコンテナ関連の機能をPaaS(Platform as a Service)として提供していたPivotal Softwareを買収しました。VMwareはハイパーバイザーの印象が強いベンダーですが、こうした取り組みを進めることで、ハイパーバイザーからコンテナまでを対象にするベンダーへの進化を図っています。
M&Aに加え、VMwareはモダンアプリケーションを構築・運用するための、Kubernetesを中核とした製品群「VMware Tanzu」も提供し、さまざまなインフラにおけるKubernetesのコンテナクラスタ(Kubernetesクラスタ)の利用を可能にしています。同社はフラグシップ製品であるサーバ仮想化ソフトウェア「VMware vSphere」のバージョン7に、Kubernetesの機能を追加しました。さらにネットワーク仮想化やストレージ仮想化の自社製品に関しても、Kubernetesと連携させる取り組みを進めています。
Cisco SystemsのKubernetes関連製品
Cisco Systemsは、オンプレミスインフラ向けのKubernetes製品として「Intersight Kubernetes Service」(IKS)を提供しています。IKSはインフラ管理SaaS(Software as a Service)の「Cisco Intersight」に含まれるサービスで、Cisco Intersightが管理対象とするインフラにKubernetesクラスタをデプロイ(配備)できます。Cisco IKSは、Cisco Systemsのハイパーコンバージドインフラ(HCI)製品である「Cisco HyperFlex」にKubernetesをデプロイ可能であり、Cisco HyperFlexにおけるコンテナ運用を実現します。
SDN(ソフトウェア定義ネットワーク)製品の「Cisco Application Centric Infrastructure」(Cisco ACI)とIKSを連携させることで、ネットワークポリシーに基づくKubernetesクラスタの通信制御も実現します。今後はHyperFlexで稼働するコンテナの運用に加えて、パブリッククラウドのコンテナ管理サービスとの連携も視野に入っています。オンプレミスのインフラとパブリッククラウドのKubernetesを連携させることで、双方のインフラにまたがってKubernetesクラスタの作成や管理ができるようになります。
ハイブリッドクラウドで重要になるKubernetes
ここまで紹介してきたKubernetes製品は、いずれも業界団体CNCF(Cloud Native Computing Foundation)の認定基準「Kubernetes Software Conformance」に準拠しています。Kubernetes Software Conformanceに認定されたKubernetes製品は互換性があるため、いずれかのKubernetes製品で構築したアプリケーションをそのまま別のKubernetes製品でも運用できます。
本稿で紹介したKubernetes製品とKubernetesそのものとの大きな違いは、Kubernetesクラスタの構築作業を簡素化できることです。ノードのOSに対するパッチ管理やKubernetesクラスタのアップグレードも、GUI(グラフィカルユーザーインタフェース)やCLI(コマンドラインインタフェース)を使って容易に実行できます。
オンプレミスインフラ向け製品のベンダー各社は、もともと得意とするオンプレミスインフラだけでなく、クラウドサービスでKubernetesクラスタを容易に構築・運用する機能の強化も進めています。これらのベンダーは、オンプレミスインフラとクラウドサービスのKubernetesを一元管理するための製品も提供しています。Red Hatの「Red Hat Advanced Cluster Management for Kubernetes」やVMwareの「VMware Tanzu Mission Control」、Cisco SystemsのIKSなどがあります。
ベンダー各社がKubernetesへの投資を強化する背景には、Kubernetesがコンテナオーケストレーターとしてデファクトスタンダードになったことに加え、ハイブリッドクラウド(オンプレミスインフラとクラウドサービスの混在環境)やマルチクラウド(複数のクラウドサービスの混在環境)の利用が広がっていることがあります。さまざまなKubernetes製品がCNCFのKubernetes Software Conformanceに準拠することで、Kubernetesの標準化が進んでいます。これはいずれかのKubernetesで実行できるアプリケーションは、オンプレミスインフラであってもパブリッククラウドであっても、Kubernetesクラスタが構成されていれば同じように実行できることを意味します。
もう少し具体的に説明してみましょう。Kubernetesを活用する際は、アプリケーションをコンテナイメージ(アプリケーションの実行に必要な要素をまとめたファイル)としてカプセル化し、アプリケーションの実行方法をマニフェスト(Kubernetesクラスタのリソース構成の定義)としてコード化します。これらのコンテナイメージやマニフェストは、標準化されたKubernetesクラスタであれば、オンプレミスでもクラウドでも、同じようにアプリケーションを実行できます。こうした「可搬性」のメリットがあることから、Kubernetesはハイブリッドクラウドやマルチクラウドでのアプリケーション運用を実現する要素としてとして注目されているのです。
執筆者紹介
奈良昌紀(なら・まさのり) ネットワンシステムズ ビジネス開発本部 第1応用技術部
通信事業者のデータセンターにおいてネットワークやサーバの運用を経験後、ネットワンシステムズに入社。帯域制御やWAN高速化製品、仮想化関連製品を担当後、主にクラウドや仮想インフラの管理、自動化、ネットワーク仮想化の分野に注力している。
細谷典弘(ほそや・のりひろ) ネットワンシステムズ ビジネス開発本部第3応用技術部
データセンターネットワークの他、マルチクラウド向けのハードウェアやソフトウェアの最先端技術に関する調査・検証、技術支援などを担当。注目分野は「Kubernetes」。放送システムのIP化に向けた技術調査・検証も担当している。
千葉 豪(ちば・ごう) ネットワンシステムズ ビジネス開発本部 第1応用技術部
IaaS(Infrastructure as a Service)をはじめとしたクラウド基盤技術および管理製品を担当。コンテナ技術を中心とした開発・解析基盤の構築から運用、コンテナに関連した自動化技術や監視製品の技術検証などに注力している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
コンテナネットワークの基礎知識
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[サイボウズ株式会社] DXに必要な「Dスキル」「Xスキル」を持った人材を育成するには? -
市場調査・トレンド
[サイボウズ株式会社] データで見る、DXが「順調に進む企業」と「つまずく企業」の違い -
製品資料
[サイボウズ株式会社] 賛否が割れがちな「Notesからの移行」 新環境への移行を納得してもらうには? -
事例
[ServiceNow Japan合同会社] 農林中金に学ぶ内製開発 処理効率を約2倍に高めAI活用も加速させた方法とは? -
事例
[ServiceNow Japan合同会社] NTTグループのデジタル変革術、17万人が利用する決裁プロセス刷新の全貌
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
2
「ITインフラとデータ保護・バックアップ対策」に関するアンケート
-
3
MS月例パッチが1000件突破 人手不足の情シスを襲う「月1回メンテ」の崩壊
-
4
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
5
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
6
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
7
「Linuxサーバの長期運用とRed Hat Enterprise Linux」に関するアンケート
-
8
「企業内サーバ環境の利用実態」に関するアンケート
-
9
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
-
10
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
生成AIのハルシネーションを防止 回答精度を高めるセマンティックレイヤーとは
-
2
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
7
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
8
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
9
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー