SSDとフラッシュメモリの進化【前編】
「256TBのSSD」が登場しても素直に喜べない理由
2023年8月の「Flash Memory Summit」で、さまざまなストレージベンダーが新世代の技術を採用したSSDを紹介した。企業がこれらの革新的な技術を最大限に享受するには、時間が必要だという見方がある。なぜなのか。
先進的な技術を採用する「SSD」が相次いで発表されている。2023年8月開催のイベント「Flash Memory Summit」で、キオクシアはSSD「KIOXIA CD8P」シリーズを、Samsung Electronicsは256TBのSSDを発表した。同イベントでは、Micron Technologyによる新メモリモジュールの発表もあった。これらの製品はストレージおよびメモリの今後を示すものだ。
コンサルティング会社Coughlin Associatesのトーマス・コフリン氏は、「現在の市場状況に基づくと、ベンダーがストレージおよびメモリ分野の新技術を一般製品に適用するまでには約1年掛かる」と述べる。その背景についてコフリン氏は、「たいていのストレージベンダーは財務状況が厳しく、利益があまり見込めない初期製品を市場に投入するわけにはいかない」と話す。
他の業界専門家は、新技術が真に発揮する効果を享受するためには、インフラの刷新が必須であることを指摘する。具体的にはどういうことなのか。
最先端過ぎて追い付けない? 「新世代SSD」の正体とは
Samsungが発表した256TBのSSDは、1つのメモリセルに4bitを格納する技術「クアッドレベルセル」(QLC)を採用している。同社は他にも、AI(人工知能)モデルの学習や推論向けに使える、SSDでペタバイト規模が可能になる設計「PBSSD」を発表した。
半導体市場リサーチ会社Objective Analysisのゼネラルディレクター兼半導体アナリストであるジム・ハンディー氏は、Samsungが発表した256TBのSSDは、2023年時点において「市場で手に入るSSDの容量を大きく超えている」と評価する。同時にハンディー氏は、「企業が256TBの容量を持つSSDを活用できるようになるまでには幾つかの障害がある」との見解を示す。企業のシステムは現状、このSSDの能力を十分に引き出せるインタフェースを備えていないためだ。「ストレージの容量はあってもインタフェースが遅ければ効果は見込めない」と同氏は指摘する。
Samsungは、最大15.36TBの容量を持つ2.5型SSD「PM9D3a」も公表した。PM9D3aは従来製品と比較して、データの読み書き速度や電力効率の向上が期待される。
キオクシアのKIOXIA CD8Pシリーズは、汎用(はんよう)インタフェース規格「PCI express 5.0」(PCIe 5.0)に準拠したSSDだ。「PCIe 5.0は速いが、一度に送れるデータ量には限りがある。SSDをより効果的に使用するには新しいタイプのインタフェースが必要だ」(ハンディー氏)
KIOXIA CD8Pシリーズに先行する「CD8」は「PCI Express 4.0」(PCIe 4.0)に準拠している。KIOXIA CD8Pシリーズは最大200万IOPS(1秒間に処理できる入出力数)のランダム読み取り性能と、最大30.72TBの容量を有する。フォームファクタとしては、「EDSFF E3.S」(EDSFF:Enterprise and Data Center SSD Form Factor)と「U.2」を選択可能だ。
Western DigitalはFlash Memory Summitで、PCIe 4.0準拠のSSD「Ultrastar DC SN655」を発表した。Ultrastar DC SN655はフォームファクタとしてU.2およびU.3を選択でき、最大15.36TBの容量がある。
コフリン氏によれば、Western Digitalは「次のステージ」に進んだことになる。「PCI Express 3.0」(PCIe 3.0)は長らく主流のインタフェース規格だったが、PCIe 4.0が普及してきている。「市場には幾つものPCIe 4.0準拠製品があり、当面の主流となる」と同氏は推測する。今後はPCIe 5.0も広がりを見せると考えられる。「PCI Express 6.0」(PCIe 6.0)もその後に控えている。
後編は、相互接続プロトコル「Compute Express Link」(CXL)に関する動向を紹介する。
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