「vSphere」「ESXi」のサポート終了を乗り切るには【第4回】
ESXiサポート終了後では遅い 「ハイパーバイザー移行」を考えるもっともな理由
各ベンダーが提供するハイパーバイザーには一定のサポート期間がある。サポート期間が終了する前にハイパーバイザーの移行を検討すべき理由や、検討時に確認すべきベンダーのサポート体制、移行の選択肢とは。
VMware(Broadcomが2023年11月に買収)のハイパーバイザー「ESXi」を含むサーバ仮想化ソフトウェア群「VMware vSphere」(以下、vSphere)を利用する企業にとって、考慮すべき点の一つになるのがサポート切れだ。EoTG(End of Technical Guidance:テクニカルガイダンス期間の終了)を迎えたバージョンのvSphereは、セキュリティパッチ(パッチ:修正プログラム)の配布や新機能の追加がされなくなる。
vSphereのサポート期間の終了は、Nutanixの「Nutanix AHV」(以下、AHV)といったESXi以外のハイパーバイザーへの移行を検討する機会でもある。仮想マシン(VM)やハードウェアの管理の負荷を軽減させるために、インフラをクラウドサービスに移行するという選択もできる。ハイパーバイザーの移行を検討すべき理由や、各ハイパーバイザーのサポート体制、VMのクラウド移行に関してどのような点に気を付ければよいのかを詳しく説明する。
ESXi「サポート切れ」では遅い? ハイパーバイザー移行を検討する理由
併せて読みたいお薦め記事
連載:「vSphere」「ESXi」のサポート終了を乗り切るには
- 第1回:サポート切れの「vSphere」はなぜ危険なのか? “安定稼働”に油断できない訳
- 第2回:VMware vSphereのバージョン6、7、8の違い バージョンアップの利点とは?
- 第3回:「ESXi」「Hyper-V」「KVM」「AHV」の違いとは ハイパーバイザーを選ぶときのポイント
「vSphere」のサポート終了を乗り切る
vSphere 7.0のEoGS(一般サポートの終了)は2025年4月2日だ。更改を検討すべき時期が迫っている。これはvSphere7.0を利用しているユーザー企業にとっては、新しいバージョンもしくは別のハイパーバイザーへの移行、あるいはクラウドサービスへの移行を検討するタイミングだと言える。
バージョンアップや別のハイパーバイザーへの移行を検討する際は、「サポートが切れるから」という理由で検討するのではなく、「セキュリティリスクを軽減する」といった具体的な目的を持って検討することが望ましい。バージョン切れのvSphereを使い続けることには、セキュリティリスクが増大する問題が伴うからだ。ITシステムの改善やモダナイゼーションが遅れるという問題も起こり得る。
ハイパーバイザーへの移行を検討する際は、まずは仮想化ソフトウェアベンダーの製品ライフサイクルを理解する必要がある。VMwareはESXiのサポートとして、提供開始から5年間の「一般サポート」と、一般サポート終了から2年間の「テクニカルガイダンス」を提供している。最初のバージョンがリリースされた後は、約半年ごとに「VMware ESXi 8.0 Update 1」といったアップデート版を発表する。
同社は定期的なアップデートに加え、不具合や脆弱(ぜいじゃく)性などが発見された場合は、その都度パッチ(修正プログラム)を提供している。セキュリティ対策のためにパッチは定期的に適用すべきだが、全てを反映するのが難しい場合は、最低限の対策としてアップデート版や緊急度が高いパッチだけでも適用する必要がある。
Nutanix製品のサポート体制は
他のベンダーも独自のライフサイクルを採用している。NutanixはAHVのライフサイクルにおいて、LTS(Long Term Support)とSTS(Short Term Support)に分けてサポートを提供している。
LTSでは、バージョンが12~15カ月ごとに更新される。アップデートの内容は主に不具合修正に重点を置いており、新機能の追加は最小限にしている。次期LTSの更新日から3カ月が、前期のバージョンのメンテナンス期間だ。メンテンス期間終了後9カ月がサポート期間になる。
STSは、バージョンが3~6カ月ごとに更新され、次期STSの更新日から3カ月がサポート期間となる。LTSと比較してサポート期間が短いが積極的に機能追加がされるため、最新の機能を利用できるのが特徴だ。
次期バージョンが発表される時期によって、利用中のバージョンのサポート切れの時期が変わるため、注意が必要だ。例えばLTSを採用する場合は、次期バージョンがリリースされたら12カ月以内にバージョンアップする運用体制にする必要がある。
Nutanix製HCI(ハイパーコンバージドインフラ)でvSphereを採用する場合は、vSphere側のライフサイクルと合わせて管理する必要がある。
VMのクラウド移行という選択は適切か
セキュリティ対策の徹底が必要になった昨今は、常に最新バージョンのハイパーバイザーを利用することが重要になっており、ユーザー企業はそうした考え方を基にした運用方法に切り替える必要がある。そもそもサポート期間の長さで採用する製品を決めるのではなく、導入後の運用体制を考慮して製品を決めるべきだ。ハードウェアやハイパーバイザーのライフサイクル管理の負担を軽減するには、IaaS(Infrastructure as a Service)への移行も選択肢に入る。
IaaSには複数の選択肢がある。Amazon Web Services(AWS)の同名サービスやMicrosoftの「Microsoft Azure」、Googleの「Google Cloud Platform」(GCP)では、オンプレミスと同じアーキテクチャをクラウドサービスでも利用できる。例えばこうしたクラウドサービスでは、vSphereやAHVによるVMサービスを利用できる。
AWSやMicrosoft、Googleは、ユーザー企業のデータセンターで稼働するプライベートクラウド(リソース専有型のクラウドインフラ)を、それぞれのクラウドサービスと同じ手法で管理可能にするサービスやアプライアンスを提供している。ユーザー企業はこれらのサービスを利用することで、プライベートクラウドとパブリッククラウド(リソース共有型のクラウドインフラ)を連携させる「ハイブリッドクラウド」を構築できる。
基本的にはパブリッククラウドでは、バージョンアップなどVMに関連するメンテナンスをベンダーが担う。ハイブリッドクラウドを構築する場合、自社のデータセンターで稼働するプライベートクラウドも、クラウドサービスに追従してメンテナンスすることが望ましい。つまりハイブリッドクラウドを実現するためには、オンプレミス側の運用を変える必要があるのだ。
バージョンを常に最新にしておくことは、企業の財産であるデータや、VMで稼働するシステムを脅威や不具合から守ることにつながる。VMを最新の状態に保っておけば、IaaSへの移行や、新しい技術の採用も検討しやすくなる。そうした運用が結果的には運用にかかる人的リソースやコストの低減につながり、生産性の向上が可能になる。
執筆者紹介
小林浩和(こばやし・ひろかず) ネットワンシステムズ ビジネス開発本部応用技術部
主にVMware製品を担当し、製品の評価・検証を実施。近年ではエッジコンピューティングやAI(人工知能)技術など、クラウドインフラに関わる先進技術の調査にも取り組んでいる。
篠崎智昭(しのざき・ともあき、「崎」は正しくは「たつさき」) ネットワンシステムズ ビジネス開発本部応用技術部
2018年からビジネス開発本部 応用技術部に所属。サーバやHCI(ハイパーコンバージドインフラ)製品担当としてプラットフォーム製品の提案や設計、検証、構築、運用などに取り組み、技術的観点からビジネスを推進している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「vSphere」「ESXi」のサポート終了を乗り切るには
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー