Microsoftクラウドライセンス慣行の問題
「Microsoftが市場競争を阻害」は本当か? GoogleとAWSの主張で“泥沼状態”に
Microsoftのクラウドライセンス慣行を英当局が調査している件で、MicrosoftはGoogleやAWSの主張が調査を「泥沼化」させていると批判した。各社の主張は何か。
Microsoftのクラウドサービスに関する価格やライセンス体系が市場競争を妨げている恐れがあるとして、英国競争市場庁(CMA)が調査を進めている。Microsoftは、競合するGoogle とAmazon Web Services(AWS)が調査への意見書を提出し、事態を「泥沼化」させたと批判した。GoogleとAWSはどのように主張し、Microsoftはいかに反論したのか。
「泥沼化」させたGoogle、AWSの主張とは?
併せて読みたいお薦め記事
Microsoftのライセンスを巡る問題
CMAは2024年6月、Microsoftのクラウドサービスライセンスについて調査した暫定報告書を公開した。英Computer Weeklyが以前報道した通り、CMAは「Microsoftが他社のクラウドサービスでMicrosoftのライセンスを利用するユーザー企業に対して料金を高く設定することで、市場競争を妨げている恐れがある」と指摘し、その証拠があると述べている。
英国のクラウドインフラ市場の関係者はCMAの暫定報告書に対するフィードバックを求められており、Microsoftとその競合が意見書を提出した。
Googleは、提出した意見書の中で次のように述べている。「Microsoftのライセンス慣行は競合他社のコストを上昇させ、顧客需要の相当部分を奪い合う競合他社の競争力を弱めさせるもので、競争に対する明白な悪影響がある」
「CMAの証拠は(懸念に対する)是正装置が直ちに必要なことを裏付けている。われわれはCMAの見解を支持し、Microsoftがこれ以上競争を阻害しないための解決策が存在する」。Googleはそう主張した。
一方、Microsoftは、法律事務所Latham & Watkinsがまとめた意見書を通して、Googleの見解に反論した。この意見書は「Microsoftの知的財産ライセンス条件は、競合他社のコストの実質的な上昇にはつながっていない」という主張で始まる。
CMAはMicrosoftのライセンス慣行について、競合するAWSとGoogle Cloud Platform (GCP) は「相当の」運営コスト上昇を強いられる可能性があり、「genuine foreclosure」のリスクがあるとしていた。「genuine foreclosure」とは、競合他社による新興市場への進出を妨げ、実質的に競争から締め出す慣行や戦略を意味する用語だ。
Microsoftの意見書はこの部分に反論し、自社の行為がAWSやGCPに対してそこまでの影響を及ぼすとは考えていない。Microsoftは「AWSとGoogleはあらゆる観点から見て、競争して利益を出す十分な余裕(現金)がありそうだ」と主張する。
「AWSは500億ドル、Googleは300億ドルの設備投資がある。これは『口先だけの約束ではない』という信念の表れであり、クラウドサービスの将来の収益性と競争力を確信しているものだ。Microsoftの(知的財産を)大規模に利用したことに対し、補償という重荷を背負ったために、弱体化したライバルの行動とは言えない」(Microsoft)
MicrosoftはAWSとGCP、欧州のクラウドサービスの業界団体Cloud Infrastructure Services Providers in Europe(CISPE)にも矛先を向け、Microsoftのライセンス慣行が市場競争に悪影響を及ぼしているという偽情報を拡散させていると批判した。
Microsoftは「要約すると、Amazon、Google、CISPEなどによって、『正しい』市場競争への影響と対処法について混乱が生じた」と主張する。
CISPEは過去にMicrosoftのライセンス慣行を批判し、繰り返し「不当」と表現していたが、両者は休戦状態に向かっている。2024年7月のComputer Weeklyの報道によると、CISPEはMicrosoftがEU競争法(欧州における独占禁止法)に違反に対する欧州委員会への長年の申し立てを取り下げ、和解した。
一方、AWSは2024年7月にCMAに提出した意見書の中でMicrosoftのライセンス慣行に矛先を向け、Microsoftがレガシー技術を利用して、クラウドインフラサービス市場の在り方をゆがめていると批判した。
AWSは「Microsoftと異なり、他のITベンダーのほとんどは、競争をゆがめて顧客に不利益をもたらすこともある『必須の』レガシー技術を持たない傾向がある」と主張。「ライセンス慣行は人為的に顧客の選択肢を制限して移行を難しくさせる目的で使用すべきではない」と批判した。
Microsoftは意見書の結論部分で、自社のライセンス慣行について「どのような形や程度であれ、競争に悪影響を及ぼすほどAmazonやGoogleのコスト上昇につながることは、まずない」と述べ、Microsoftのライセンス慣行について浮上した懸念をCMAが却下するよう「謹んで提案する」とした。
「CMAはそうした懸念について、競争への悪影響に関する暫定的な判断のために、ましてや蓋然性の均衡に関する確固たる結論を出すためには根拠不十分として退ける十分な理由がある」とMicrosoftは言い添えている。
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー