競合他社が模倣できない強み
半導体不足の2026年に30TBのQLCドライブが投下された“真の意図”
半導体不足が懸念される2026年、Dell Technologiesはオールフラッシュストレージ「PowerStore」で30TBのQLCドライブを選択可能にした。その背景にある独自の武器と、企業が得られる恩恵について、専門家が解説する。
AI(人工知能)技術用のインフラ需要は衰えを見せない。フラッシュメモリをはじめとする半導体記憶デバイスの世界的な不足が見込まれる中、企業のIT部門はこれまで以上に投資対効果のシビアな判断を迫られている。
こうした状況下で、Dell Technologiesはオールフラッシュストレージ「PowerStore」の効率性を大幅に高めるアップデートを発表した。1つのメモリセルに4bitを格納するQLC(クアッドレベルセル)方式のNANDフラッシュを採用する「PowerStore Q」シリーズにおいて、新たに30TBの大容量QLCドライブを選択可能にした。従来の15TBモデルと比較して、半分のラックスペースで同等の容量を確保できる。
ストレージベンダーが供給調整を迫られる中、Dell Technologiesはなぜこうした“強気”の戦略を採用できるのか。その答えは製品スペックの細部ではなく、Dell Technologiesという企業そのものが持つ「構造的な優位性」にある。
Dellはサプライチェーンの混乱をどう突破する?
併せて読みたいお薦め記事
Dell Technologiesの動向
今回の発表の背景にはAIインフラの急速な拡大がある。NVIDIAが2026年1月に発表した新ハードウェアの影響によって、世界的な半導体供給網の混乱が起きるとの見方が強い。
調査会社Forrester Researchでアナリストを務めるブレント・エリス氏は次のように分析する。「Dell Technologiesはフラッシュメモリメーカーと長期的な供給契約を締結している。そのため、将来にわたってアップグレードや交換部品を確実に提供できる体制を整えている」
ソフトウェア定義ストレージ(SDS)を展開する競合他社は、重複排除や圧縮といったソフトウェア機能で容量不足を補おうとしているが、この場合ハードウェアの調達自体はユーザー企業や別のパートナーが手配しなければならないことがある。「こうした場合と比べて、ストレージ現物を確保しているDell TechnologiesやNetApp、HPEから購入することには、大きな安心感がある」とエリス氏は付け加える。
値上げ前の「先手」を打つ選択肢
Dell Technologiesは2025年11月の決算説明会で、2026年11月までに製品価格上昇の可能性があることを認めている。調査会社Omdiaのアナリスト、サイモン・ロビンソン氏は、今回のアップデートが、市場価格が高騰する前に容量を確保したい企業にとって重要な選択肢になると指摘する。
「将来さらに高い価格で買うことになるなら、今のうちに購入しておこうと考える企業は確実に存在する」とロビンソン氏は語る。リプレースせずに「既存の資産を使い倒す」という選択をする企業もいることは確かだが、いずれにせよ「いかに効率よく容量を使い切るか」が、2026年のストレージ業界における最大の課題になるという。
価格高騰前の駆け込み需要に応える
PowerStoreは、Dell Technologiesのストレージ製品群の中で成長をリードする存在だ。同社の2026年度第2四半期(2025年5~7月)決算によると、ストレージ部門全体の売上高は2025年度同期比(2024年5~7月)で3%減となったものの、PowerStoreは6四半期連続で成長を記録し、そのうち5四半期は2桁成長を達成している。特筆すべきは、2026年度第2四半期のPowerStoreユーザーの46%が同製品ラインの新規ユーザーであり、23%はDell Technologiesのストレージ自体を初めて導入する企業だった点だ。
この成長の背景には、旧製品「VxRail」からの移行だけではなく、競合他社からのシェア奪取があるとロビンソン氏はみる。
ストレージ市場が成熟し、各社の製品機能が拮抗(きっこう)する中で、Dell Technologiesはサポート体制の強化に注力している。Pure Storageのサブスクリプションモデル「Evergreen」に近いプログラム「Lifecycle Extension」はその一例だ。「Dell Technologiesは、Pure Storageのサブスクリプションモデルを評価する企業の声に応えてみせた」とロビンソン氏は評価する。
論理容量で5倍のデータ格納を保証するプログラムも強力な武器だ。規定の削減率を達成できなかった場合、Dell Technologiesは不足分のディスクドライブを無償で提供する。「供給不安が続く中、この保証は顧客にとって非常に魅力的な提案になる」とロビンソン氏は述べる。
機能アップデートの詳細
Dell Technologiesは2026年1月にPowerStore用OS「PowerStoreOS」のバージョン4.3を公開し、以下のアップデートを適用した。
- ファイバーチャネル(FC)を用いたレプリケーション機能の拡充
- ブロックデータとファイルデータの両方で、同期/非同期のローカルおよび近距離間レプリケーションが可能になった。
- システムのレジリエンス(回復力)の強化
- AI技術を活用したIT運用「AIOps」の適用範囲の拡大
- ファイルの通信を監視する機能「Top Talkers」の追加
- 重要な操作に対して複数の承認を必要とする「マルチパーティ認証」の追加
- ファイル共有プロトコル「NFS」(Network File System)バージョン4.2での接続時に利用可能な「セキュリティラベル」機能の追加
- 個々のファイルに機密レベルなどの識別情報を付与して厳格に管理できる。
エリス氏は、AIOpsツールによる複数筐体(きょうたい)の一括アップグレード機能について、「点在するストレージの管理を一元化し、運用の負荷を大幅に軽減するはずだ」と、その実効性に期待を寄せる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー