現場従業員の使いやすさを優先
紙の日報廃止で年間200万円分のコスト削減 インフラ企業がDXを成功させた秘訣は?
ヤマトカンキョウは、スタメンの「TUNAG」を導入し、紙の日報と押印業務を廃止、年間約200万円のコストと残業時間を削減した。ベテラン従業員にもツールの導入を浸透させた秘訣とは?
日報や運行記録のデジタル化を進めようとしても、「現場が使ってくれない」「紙の方が楽だと言われる」といった壁に直面する企業は少なくない。現場業務を抱える企業では、システムを導入しても定着せず、結局は紙運用に戻ってしまうケースもある。
水道事業を中心にインフラサービスを展開する佐賀県のヤマトカンキョウは、紙の日報と押印業務を廃止し、ソフトウェアベンダーのスタメンが提供する従業員体験プラットフォーム「TUNAG」を導入。年間約200万円のコスト削減を実現した。さらに、月20~25時間あった残業時間を30分以下まで削減したという。同社はなぜ日報や運行記録のデジタル化を成功させることができたのか。
ヤマトカンキョウによるTUNAGの導入は、スタメンが2026年6月2日に公表した。
成功の秘訣1.「現場が楽になる」を最優先した
ヤマトカンキョウでは従来、日報を紙で運用していた。従業員は帰社後に日報を記入し、複数の上長が日報に順に押印するプロセスを取っていた。この作業が残業や待ち時間の原因になっていただけでなく、人件費や用紙代で年間約200万円のコストが発生していたという。
そこでヤマトカンキョウが重視したのは、管理側の効率化ではなく、まず現場従業員の負担を減らすことだった。
全従業員に社用スマートフォンを配布し、日報や運行記録の入力をTUNAGで実施する運用に統一した。さらに、前回入力した内容をコピーできる機能を活用することで、毎回同じ内容を入力する手間を削減した。
現場から見れば「会社のためのシステム」ではなく、「自分たちの仕事が楽になる仕組み」として受け入れやすかったことが、定着につながったと考えられる。
成功の秘訣2.ITに不慣れな従業員でも使える環境を整えた
業務のデジタル化でしばしば障壁となるのが、ベテラン従業員への浸透だ。ヤマトカンキョウには社歴の長いベテラン従業員も在籍している中、全従業員が迷わず利用できるコミュニケーション基盤としてTUNAGを活用した。
高機能なシステムを導入しても、操作が複雑であれば現場には定着しない。デジタル化を進める際は機能の多さよりも、「スマートフォンで直感的に操作できるか」「現場で数分以内に入力できるか」といった使いやすさが重要であることを示している。
成功の秘訣3.管理職の業務も同時に変えた
現場だけをデジタル化しても、承認フローが紙のままでは効果は限定的だ。ヤマトカンキョウでは、管理職もスマートフォンから承認できる仕組みを整備した。
その結果、押印のためだけに出社したり、帰社を待ったりする必要がなくなった。
デジタル化の対象を入力作業だけに限定せず、承認プロセスまで含めて見直したことが、残業削減につながった。
実際、同社では日報のデジタル化を含む業務改善によって、従業員1人当たり月20~25時間あった残業時間が、約30分以下まで減少したという。
成功の秘訣4.日報を「報告書」で終わらせなかった
日報システムは、単なる業務報告ツールとして運用されることが多い。しかしヤマトカンキョウは、日報を組織づくりにも活用した。
例えば新入社員の研修日報は全管理職が閲覧できるように設定した。これにより、各従業員の成長状況や適性を複数の管理職が把握でき、人材配置の判断材料として活用できるようになった。
さらに経営陣は、自社のビジョンや考え方を継続的に発信している。
その結果、「私たちは街づくりの会社である」という理念が現場に浸透し、従業員同士の会話にも自然に登場するようになったという。
成功の鍵は「システム導入」ではなく「業務設計」
日報や運行記録のデジタル化というと、ツール選定に目が向きがちだ。
しかしヤマトカンキョウの事例を見ると、成功の要因はシステムそのものではない。
現場が楽になる仕組みを用意し、ITに不慣れな従業員でも使える環境を整え、承認フローまで含めて業務を見直したこと。そして日報を情報共有や人材育成にも活用したことが定着につながったといえる。
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