現場DXを阻む“7つの時間ロス”
ツール導入あるある せっかく入れたのに役に立たない理由は?
スタディストは、業務の属人化や標準化の取り組み状況を探る調査結果を公表した。回答からは、業務の属人化や口頭確認への依存が常態化している実態や、業務効率化に対する経営層との認識の差があることが分かった。
「DX(デジタルトランスフォーメーション)に向けてツールを導入したのに、現場の負荷が減らない」「マニュアルを整備したいが、日々の業務に追われて手が回らない」――。こうした状況に直面する企業は少なくないようだ。
ソフトウェアベンダーのスタディストが公開した調査結果によると、業務の属人化が進み、口頭確認や“経験と勘”に依存した業務運営が続いている企業の実態が明らかになった。調査は2026年2月、製造・小売・卸売・サービス業等の現場経営者・役員/管理職/従業員1233人を対象に実施したものだ。
ツールを入れたものの……
調査では、従業員数300人以上の企業の59.2%、300人未満の企業の58.0%が、「特定の人にしかできない」「経験や勘に頼った」属人的な業務が存在すると回答した。企業規模にかかわらず、業務が個人へ依存している実態が浮き彫りになった。
さらに、「マニュアルや手順が不足しており、どう動いていいか分からなかった経験がある」とした回答は、300人以上の企業で57.7%、300人未満でも42.1%に達した。一定規模以上の企業でも、業務遂行に必要な情報や判断基準が十分に整備されていない実態がうかがえる。
業務標準化への取り組み状況を見ると、300人以上の企業では、業務フロー整備(44.9%)や手順書整備(56.9%)が一定程度進んでいる。一方、300人未満の企業では59.1%が「特に取り組みを行っていない」と回答しており、標準化の格差も見えてきた。
「困ったら人に聞く」が63.8%
現場従業員層(n=412)に、困った際の確認方法を尋ねたところ、「上司・先輩に聞く」が63.8%で最多だった。マニュアルやナレッジベースではなく、人への口頭確認に依存する現場運営が依然として中心であることが分かる。
調査では、こうした現場には以下に記載している“7つの時間ロス”が存在すると分析している。
- 情報が見つからない
- 特定の人待ち
- 伝達ミス
- やり直し
- 判断に迷う
- 無駄な作業
- 教育に時間がかかる
スタディストは、これらを単なる個別問題ではなく、「業務プロセスや情報共有の不備に起因する構造的課題」だと指摘する。
特にストレス要因として大きかったのは、「無駄な作業ロス」(16.2%)、「やり直しロス」(14.4%)、「特定の人待ちロス」(11.5%)だった。例えば、「昔から続いているが実は意味がない作業」「人によってやり方が違うため発生する差し戻し」「特定の担当者の返答待ちで業務が止まる」といった状況が、現場で日常的に発生しているという。
さらに、非効率の“しわ寄せ”は現場と中間管理職へ集中している。調査では、部長・課長クラスほど「特定の人待ち」に強いストレスを感じる傾向があり、業務のボトルネックが中間層へ集まりやすい構造も見えてきた。
このような状況は、単なる業務効率の問題にとどまらない。調査では、時間ロスによるストレスが強いほど「成長実感を持てない」傾向が確認された。モチベーション低下や転職意向を持つ層では、約7割が成長実感を得られていないという。
背景には、現場で「仕組み化」にまで手が回らない構造があると考えられる。スタディストは、日々の業務遂行や教育対応を優先せざるを得ない現場では、マニュアル整備やナレッジ管理の運用まで十分に対応できないケースが少なくないと指摘する。
現場と経営の“認識ギャップ”が改善を止める
調査では、現場のオペレーション効率化を巡って、経営層と現場の間に大きな認識ギャップが存在することも明らかになった。部長・課長クラスの70.3%が、「経営層が考える課題の優先度」と「現場が感じる課題の優先度」にギャップを感じていると回答した。
さらに、60.7%が「経営層から突然導入されたシステムやツールが、現場でうまく機能せず、結果として自分の負担が増えた経験がある」と回答している。現場の実態を十分に踏まえないまま進められた効率化施策が、逆に混乱や運用負荷を生んでいる可能性がある。
実際、現場側が求めているのは「とにかく新しいツールを入れること」ではない。調査では、「現場の実態に合ったツール選定」(41.2%)や、「導入前に現場の意見を十分に聞くこと」(31.6%)が、システム定着に必要な要素として上位に挙がった。加えて、「段階的な導入」「導入後のフォロー体制」「業務フローの可視化」といった“運用設計”の重要性も指摘されている。
調査結果から見えてくるのは、「ツール導入」と「現場の標準化」が必ずしも一致していない現実だ。DXや業務効率化施策では、SaaSやAIツールの導入そのものが目的化しやすい。しかし、現場側では「誰が、どの手順で、どの情報を基に業務を進めるのか」が整理されていなければ、ツールを導入しても運用が属人化したまま残る。
特に現場業務では、「ベテランしか分からない操作」「口頭で引き継がれる判断基準」「部署ごとに異なる運用ルール」が積み重なりやすい。こうした状態では、システム導入後も“実際の業務フロー”が統一されず、結果として「結局、人に聞くしかない」という状況が残り続ける。
情報システム部門(以下、情シス)にとっても、この問題は無関係ではない。業務標準化が進まないままツール導入だけが先行すると、「システムは入れたのに定着しない」「問い合わせが減らない」「現場ごとに運用が違う」といった問題が発生しやすくなるためだ。
本稿は、2026年5月14日にスタディストが公開した調査結果「現場の非効率実態調査 2026年版」を記事化したものです。
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