AIツールの導入が加速する中、導入の効果を感じている経営層と、使いこなせていないと感じる従業員の間に認識のずれが生まれている。効果的に使えないといくら損してしまうのか。導入を無駄にしないための施策とは。
企業が人工知能(AI)ツールを導入したものの、従業員が使いこなせないだけではなく、投資が無駄になっている場合があることが調査から明らかになった。損失の規模はどの程度なのか。
デジタルアダプションツール(業務用アプリケーション定着支援ツール)WalkMeは2025年2月、調査レポート「2025 State of Digital Adoption Report: Special AI Edition」を公開した。それによると、AIツールの導入において経営層と従業員の間には認識のギャップがある。経営層はAIツールを使った変革目標の達成に自信を示す一方、現場でAIツールを使用する従業員はそう感じていなかった。本調査の対象者は、最高経営幹部(Cレベル)1700人を含む企業の経営層と、マネジャーやインターンを含む従業員2051人だ。
調査レポートによると、「AIツールの使い方について十分な研修を受けた」と答えたのは回答者の28%、「AIツールが業務の効率化に寄与している」と答えたのは回答者の25%だった。
この状況からは、従業員がAIツールの使用に不満を募らせていること、AIツールを使っても期待通りの成果を上げられなければ、導入費用の浪費につながることが分かる。調査レポートによると、AIツールの未活用や不十分な活用、生産性の低下によって、企業は平均1億400万ドルの損失を被っている。従業員が年間平均36営業日を無駄にしていることも明らかになった。
WalkMeの共同創業者兼CEOのダン・アディカ氏は、「AI技術がビジネス目標や戦略に影響を与えている一方、その成功は“人”にかかっていることが明確になった」と語る。
10年以上にわたってITツールやサービスの導入と企業のイノベーションを観察してきたアディカ氏は、「導入するだけでは成果を生み出すことはできない。導入を通じて成果を出すためには、従業員の存在が肝要だ」と説明する。「調査結果から、経営層がAIツールの導入において準備すべき取り組みや、AIツールへの投資を具体的な成果につなげるために取るべきアクションが見えてきた」と同氏は言い添える。
経営層と従業員の認識の違いはAIツール以外のソフトウェアの使用においても顕著だ。調査レポートによると、自社で運用しているアプリケーションの個数を尋ねた質問に対して、回答者が示した個数の平均は37個だった。一方、詳細な調査を進めた結果、実際の平均数は約625個に上ることが判明した。
調査レポートからは、ITツールの導入や活用に向けた投資が増加する動きが見て取れる。投資額は2024年の400万ドルから、2025年には510万ドルに増加するとの予測を同レポートは示す。
エネルギー企業EDF Renewablesでデジタルツール研修部門のシニアマネジャーを務めるアレクサ・コーデル氏は次のように述べる。「企業におけるAIツール導入の成功は実行力にかかっており、このレポートが示すように、そのほとんどは従業員の手に委ねられている。AIツールを業務プロセスにシームレスに導入して統合できるようにすることが、従業員と企業の成功につながる」
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