英国の財務大臣が2025年度の春季予算を発表した。同発表では、複数の分野においてAIの活用を進めることが明らかになった。英国政府はAIで何を実現しようとしているのか。
英国の財務大臣レイチェル・リーブス氏は2025年3月26日、同年度の春季予算(Spring Statement)を発表した。発表で同氏は、さまざまな分野における人工知能(AI)の活用について言及している。
リーブス氏は、公共サービスの根本的な改革を支援するために、32億5000万ポンド(約6200億円)規模の「トランスフォーメーション基金」(Transformation Fund)を創設すると発表した。トランスフォーメーション基金の目的は、デジタル技術とAIの活用を推進し、行政サービスの効率化を通じて長期的な財政負担を軽減することだ。
トランスフォーメーション基金は、英国政府の科学・イノベーション・技術省(DSIT)が主導する、先端AI技術の実証プロジェクト「フロンティアAIエグゼンプラー」(Frontier AI Exemplars)に4200万ポンドを投じる予定だ。フロンティアAIエグゼンプラーは、AI技術を活用して不要な官僚的手続きを削減し、公共部門の生産性を高める3つのプロジェクトで構成されている。リーブス氏は、同プロジェクトが国民にとってより良い成果をもたらすと期待を寄せている。
英国政府は規制改革を続けており、大規模な経済インフラプロジェクトの計画承認を加速させる方針を示している。AI分野においては、この取り組みに関連してデータセンター建設の許可手続きが短縮する可能性がある。この動きは、2025年1月に発表された「AI機会活用行動計画」(AI Opportunities Action Plan)と連動するもので、AI技術が英国経済の効率化と成長を牽引するための環境整備を目的としている。
英国国防省(MoD)においてもAI活用は進むようだ。MoDは、2025年度から調達予算の10%を「デュアルユース技術」(軍事と民間両方で使用可能な技術)、自律システム、AIを活用した防衛技術といった「革新的技術」に充当するとしている。
国防省に新規技術を導入する計画の一環として、MoDは「英国防衛イノベーション」(UKDI:UK Defence Innovation)を通じて、革新的企業の防衛調達への参入を支援するために4億ポンドを確保するという。防衛技術の調達を迅速化し、英国の防衛技術産業を強化するのが目的だ。
さらに、高額納税者による租税回避地(タックスヘイブン)を使った租税回避行為(法律の抜け穴を利用して合法的に税負担を軽減、回避する行為)への対策を全面的に見直し、未納税額5億ポンドの回収を目指すことが発表された。民間の資産管理専門家の採用や、AIをはじめとした高度な分析技術の活用を通じて脱税行為の監視を強化するという。
ただしリーブス氏は、英国政府の公共部門におけるAIの導入や活用を妨げる要因である「レガシーシステム」については言及していない。レガシーシステムについては、英国公会計委員会(PAC:Public Accounts Committee)がその問題をレポートで指摘している。PACが2025年3月に公開したレポート「Use of AI in Government」によると、AIは高品質なデータを必要とするが、政府が保有するデータの多くは低品質で、アクセスしにくく活用することが困難な状態だ。
AIが英国政府の経済戦略の中核を担うことは当然の流れと言える。調査会社GlobalDataの最高戦略責任者、ジョナサン・ハーディングズ氏は、「ビジネスの低迷期を乗り越えるためには、課題を素早く特定し、冷静に戦略を実行する能力が求められる」と述べる。同氏は、AIが現在の複雑な貿易環境や地政学的緊張に対応するための有力なツールになり得ると指摘し、「われわれは、かつてないほどの革新的ツールを手にしており、それらを活用することで業務をより効率的に進められる」と語る。
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