AI技術の活用が広がる中で、フロントラインワーカー(現場従業員)がさまざまな不安を抱え始めている実態が明らかになった。AI技術は現場従業員の仕事にどう影響を与えようとしているのか。
さまざまな業界で急速にAI(人工知能)技術活用が進む中で、医療や建設、食品といった業界のフロントラインワーカー(現場従業員)がAI技術の普及に不安を感じ始めている。AI技術が労働に与える影響をテーマにしたウェビナーのパネリストの意見や調査結果から、現場従業員が直面しているAI技術活用の実態が明らかになった。
米国科学技術機関の統合団体である全米科学アカデミー(National Academy of Sciences)は、2024年4月にウェビナー「AI for the Rest of Us: How Equitable Is the Future of Work for Front-Line Workers?」を公開した。
ウェビナーのパネリストの一人、セントラルフロリダ大学(The University of Central Florida)の心理学教授を務めるミンディ・ショス氏は、業務に従事し始めたばかりの現場従業員向けの業務や定型業務をAI技術が担うことに懸念を示す。本来そのような業務は、現場従業員がスキルを獲得したり知識を習得したりするための機会だったからだ。AI技術がその業務を担うことで、現場従業員のキャリアアップやスキル向上の機会が減る可能性がある。
「AI技術が自身の業務にどのような影響を及ぼすのか」という単なる不安感でさえ、労働者に影響を与えている――。ウェビナーのパネリストであり、米国心理学会(APA)の応用心理学研究室でアソシエイトディレクターを務めるベス・シュワルツ氏はこう指摘する。
APAの年次調査レポート「2023 Work in America」によると、AI技術の台頭に不安を募らせる現場従業員とそうではない現場従業員では、業務に対する意識に違いがある。同レポートは、2023年4月にAPAの委託で調査会社The Harris Pollがオンラインで調査したものだ。米国の成人労働者2515人が回答した。調査対象者のうち、「AI技術によって自分の業務がなくなることを恐れている」と回答したのは64%だった。そのうち24%が「自分は評価されていないと感じる」と回答。75%が「新たな技術が今後10年のうちに自分の業務の一部あるいは全てを奪う」と不安を感じていると答えた。
AI技術によって自分の業務がなくなることを恐れていない方の集団では、20%が「自分は評価されていないと感じる」と回答。23%が「新たな技術が今後10年のうちに自分の業務の一部あるいは全てを奪う」と答えた。
パネリストの一人であり、ウィスコンシン大学マディソン校(The University of Wisconsin-Madison)で工学の教授を務めるジョン・リー氏は、AI技術が雇用を創出したり生産性を高めたりするとしても、そのせいで「行き場を失う労働者が大勢出る」と指摘する。100人の現場従業員からなる部門の生産性が20%向上することで、その部門からは20人の現場従業員が減る可能性がある。
このような問題への対策としてリー氏が提示するのが、現場従業員を含む労働者への学習機会の提供だ。年単位の時間が必要な学習機会ではなく、誰でも簡単に受講可能な短期間の教育制度を用意することを同氏は推奨する。
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