英国のITエンジニアは、採用や人員配置、昇進のための評価プロセスなど、人事にまつわる判断がツールで自動化されている状況を不快に感じていることが調査から見えてきた。従業員が抱いている不安の正体は。
英国IT専門職の労働組合Prospectが2023年6月に公開した資料によると、英国のITエンジニアは、人事に関する重要な判断がAI(人工知能)技術のアルゴリズムを介して決定されることに不快感を示している。従業員は具体的にどのような懸念を抱いているのか。専門家の見解は。
この調査はProspectの委託で調査会社Opinium Researchが2023年5月に実施したもので、IT企業に務める英国人1000人以上が対象。調査によれば回答者の62%が、人事部門がソフトウェアを使って採用や昇進に関する意思決定を自動化することに不快感を抱いている。一方、こうした「自動意思決定」を快適だと思っている人は17%にとどまる。
調査からは、IT製品の導入プロセスに関する不満もうかがえる。新しい技術の導入時や使用時、「経営者はきっと自分に相談してこないだろう」と思っている回答者は45%に上る。
Prospectの副代表であるアンドリュー・ペイクス氏は、この調査結果を「多くの従業員が、業務に侵入してくるデジタルな業務監視に深い懸念を抱いていることを示すものだ」と説明する。経営者が従業員と適切な話し合いをせずに、業務監視ツールを導入するケースは「あまりにも多い」という。
あらゆることがデータ化されている状況は、仕事に対するプレッシャーや負荷を増加させ、従業員の生産性や健康、士気に悪影響を及ぼす懸念がある。調査の回答者は「自分が人ではなく作業機械と思われているように感じる」と表現していたという。「威圧感を受け、信頼されていないから監視されていると考えている様子だ」(ペイクス氏)
第3回は、「AI技術のリスク」に対する英国の業界団体の動向について紹介する。
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