シンクライアントに搭載するOSであるシンクライアントOSには、普通のOSとは異なる管理方法が求められる。シンクライアントOSの種類と一般的な管理方法を説明する。
どのような種類のOSであろうと、IT管理者は従業員が使うOSのセキュリティと信頼性を確保しなければならない。それはシンクライアントに搭載されるOS(以下、シンクライアントOS)であっても同様だ。
シンクライアントOSを利用する際に必要なことは、更新プログラムを適用するといった管理作業だけではない。まずはシンクライアントOSの種類を踏まえつつ、管理の方法や機能の違いを押さえておく必要がある。
シンクライアントOSは、「Linux」が基になったOSと、Microsoftの「Windows」が基になったOSの2種類に大別できる。いずれのOSにも独自の管理機能がある。一般的にシンクライアントのベンダーは、各社独自の管理ソフトウェアを用意している。IGEL Technologyは「Universal Management Suite」を、Hewlett Packard(HP)は「HP Cloud Endpoint Manager」を、Dell Technologiesは「Wyse Management Suite」をシンクライアントOSの管理ソフトウェアとして提供する。
シンクライアントOSの管理ソフトウェアは、日々の管理作業に加えてシンクライアントの初期設定にも利用できる。具体的には電源とスリープの設定、全てのクライアントデバイスへの構成の適用などの作業が可能だ。無線LANといったネットワークの設定機能を搭載したソフトウェアもある。シンクライアントを従業員に支給する場合はまず、クライアントデバイスをインターネットや社内ネットワークに接続可能にしておく必要がある。
デスクトップイメージ(OSやアプリケーション、各種設定を含むデスクトップのテンプレート)の管理方法は、管理ソフトウェアによって異なる。例えば、単一のデスクトップイメージの構成ファイルを社内ネットワークに用意し、そのネットワークで全てのシンクライアントが最新バージョンのデスクトップイメージを取得できるようにするシンプルなシンクライアント管理ソフトウェアがある。その一方で、デスクトップイメージを作成した後に、管理者がシンクライアントにインストール作業をしなければならない管理ソフトウェアもある。
こうしたデスクトップイメージの配信作業を自動化して、IT管理者の負担を軽減する管理ソフトウェアもある。そうした管理ソフトウェアを使えば、これまでは管理者が毎月1回USBメモリを使い、シンクライアント1台ごとに新しいデスクトップイメージを手作業で読み込ませていた企業でも、デスクトップイメージの配信を自動化できる。こうした機能を使って小まめにセキュリティ更新プログラムを配信することで、セキュリティの強化もできるようになる。
Windowsベースのシンクライアントは一般的に、エンドユーザーが利用可能なアプリケーションやOSの機能を制限するロックダウン機能を用意している。ロックダウンできる設定には、仮想デスクトップに接続できるデバイスの種類や、シンクライアントでアクセスできるWebサイト、マウスやモニターの設定の変更可否などが含まれる。
シンクライアントOSは、基本的な制御機能と入力機能のみを備えるIoT(モノのインターネット)デバイスや、IoTデバイスに搭載されるOSと似ている。シンクライアントデバイスとIoTデバイスの違いの一つとして、エンドユーザー向けのGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)を備えているかどうかが挙げられる。
後編は、PCをシンクライアントに変換する方法や、シンクライアントの管理方法について解説する。
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