Windows愛好家が驚く「Linuxこそ本当に自由だった」の深い理由LinuxとWindowsの本質に迫る【第1回】

WindowsとLinuxの違いは、性能や安定性、セキュリティなどさまざまな点に表れる。その違いがどこから来ているのかを知ることで、より的確なOS選定ができるはずだ。

2025年07月04日 08時15分 公開
[Damon GarnTechTarget]

 デスクトップOSとして「Windows」と「Linux」を比べる場合、通常ならば市場シェアやアプリケーションの互換性、コストなどが考慮ポイントになるだろう。だが、各OSの“カーネルの違い”を無視してはいけない。これは両OSの根本的な違いを生み出している、重要な考慮事項だ。

 各OSをカーネルレベルから理解すれば、システム管理者はパフォーマンスや互換性、GUI(グラフィカルインタフェース)といった一般的な視点で比較する場合にも、各OSをより的確に評価できるようになる。では、WindowsとLinuxを利用する上での大きな違いになる要因は、どこから来ているのか。

Linuxがもたらす自由の正体

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 システムのパフォーマンスや機能を最大限に引き出したいと考えるサーバ管理者ならば、カーネルの詳細は重要だと考えるだろう。それはPCの管理者も同じだ。PCを管理するデスクトップチームは、より高いパフォーマンスを必要とする“パワーユーザー”をサポートしなければならない。システムの安定性やソフトウェアの互換性に関する問い合わせにも注意を払わなければならい。全てのチームが懸念すべき事項としてはセキュリティもある。

 こうした背景からも、LinuxのカーネルとWindowsのカーネルの違いを理解することは重要な意味を持つ。サーバの管理者だけでなく、PCを担当する管理者にとってもカーネルは鍵になる要素なのだ。

LinuxカーネルとWindowsカーネルの構造

 Linuxのコード全般、特にカーネルはオープンソースであるという性質から、世界中の専門家によるレビュー体制の下で、セキュリティ問題の監視やドライバ管理、パフォーマンスの向上が継続的に行われている。Linuxのカーネルは「モノリシックカーネル」と呼ばれる構造となっており、ドライバとカーネルの分離度が低い。この点は、Windowsが採用する「ハイブリッドカーネル」構造とは異なる。

 両OSのカーネル構造の違いは、管理性に影響を与える。Linuxでは、カーネルと各種ドライバが密接に結び付いて動作するため、自由度の高いカスタマイズが可能だ。それは個々のディストリビューション(配布パッケージ)が、独自に機能を追加したり、独自のタイミングでカーネルを更新したりできる柔軟性につながっている。

 一方のWindowsは、ドライバやシステム機能が比較的分離され、標準化された形で管理される。これはバージョンの整合性を確保したり、サポートの面での安定性を維持したりすることにつながる。こうしたカーネル構造の違いは、運用の自由度や、将来的な変更に関する予測可能性といった観点で、システム管理者がOSを選択するに当たっての重要な選判断材料になる。

Linuxディストリビューションが違えばカーネルも異なる?

 LinuxとWindowsのカーネルの根本的な違いの一つがバージョン管理だ。Windowsは、Microsoftがリリース日を予測可能な形で設定しており、バージョン管理の点では厳格な製品だ。

 一方でLinuxには幾つものディストリビューションが存在し、どのカーネルバージョンを使用するかや、いつ更新するかといった方針は、それぞれのディストリビューションごとに決まる。そのためLinuxでは、デスクトップチームはそれぞれがわずかに異なるカーネルバージョンを搭載した複数種類のディストリビューションを扱うことになる可能性がある。一般的にはこの違いが大きな問題になることはないが、システム管理の点では注意が必要だ。

 Linuxの各ディストリビューションは、それぞれ独自の番号付けと命名方式を使ってカーネルを識別している。こうした違いは、バージョン管理やトラブルシューティング時の混乱を招く可能性がある。ユーザーやシステム管理者はデバイスごとに、カーネルのアップグレードやロールバック(以前のバージョンへの復元)は、手動で選択して実行する必要がある。

 現行のカーネルバージョンや旧バージョン、将来のリリース候補を確認する場合は、Webサイト「kernel.org」にアクセスする必要がある。Linuxカーネルのコピーは簡単に入手できる。それがオープンソースの素晴らしさだ。これはLinuxの長所とも言える柔軟性だが、企業の運用環境や構成管理システムにおいては、予測可能な運用や一貫した構成の維持が求められる場面がよくあるため、逆に短所となる可能性もある。

メモリ管理の違い

 LinuxとWindowsのカーネルは、メモリ管理の方法においても違いがある。Linuxのカーネルは、メモリを使用しているプロセスを逐一追跡することなく、RAM(メインメモリ)とストレージとの間でメモリのスワップ処理をする。これは、物理メモリが不足した場合に、使用頻度の低いメモリページ(メモリを一定サイズに区切ったもの)をストレージに一時的に退避させる仕組みだ。

 一方のWindowsのカーネルは、各プロセスに関連付けられた独立したメモリページ単位で、使用状況を追跡しながらスワップ処理をし、プロセスごとのメモリ利用状況を細かく把握する。


 次回は、WindowsとLinuxのもう一つの大きな違いであるGUIにおける考慮事項を解説する。

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