長年「Mac」を使い、近年はややApple製品への期待感が薄れてきたユーザーとして、「Windows」搭載PCを使ってみることにした。両者にはさまざまな違いがあるが、筆者にとって許容しにくい問題が幾つかあった。
AppleのクライアントPC「Mac」から、MicrosoftのクライアントOS(デスクトップOS)「Windows」搭載のPCに乗り換えることに長い間関心があった。それが大変な決断だとしても、MicrosoftはPC市場で健闘しているし、Appleの影響を受けながらWindows搭載のPCのハードウェアは良くなってきているので、考える価値はあるはずだ。
AI(人工知能)技術をPCで稼働させる「AI PC」に関心が集まっていることを契機に、Macを封印してWindowsの世界に入ってみることにした。その結果、MacとWindows搭載PCの違いに関して、重要な気付きが得られた。脱Macを考えている人や、Windowsに満足できていない人、AI PCを検討している人などに向けてお伝えしよう。
筆者が試しに使ってみることにしたのは、MicrosoftがAI PCブランドとして提供する「Copilot+ PC」の機種、Dell Technologiesの「XPS 13」だ。このモデルは、Qualcomm TechnologiesのArmプロセッサ(Armアーキテクチャのプロセッサ)「Snapdragon」シリーズを搭載している。
「iPhone」「Apple TV」「iPad」「HomePod」「AirPods」など、Appleのデバイスにはかなり投資してきた。だがスマートフォンやPCを中心に他ベンダーの製品がレベルアップし、Apple製品がそれほど魅力的には思えなくなってきている。Appleが競争に対して強引な部分があることや、ノートPCにタッチスクリーンを採用しようとしないことも相まって、自分が何かを見逃しているのではないかという気持ちが湧いてきている。
ときにはWindowsの仮想マシン(VM)を使ったり、家族のWindowsのテクニカルサポートを引き受けたりすることはある。それを除いて16年間、毎日使ってきたMacにしばしの別れを告げ、丸8週間はWindowsを使ってみることにした。Appleが開発した独自のArmベースプロセッサ「M1 Pro」を搭載した「MacBook Pro」の電源を切り、未知の領域に飛び込んでみた。
通常の「IT管理者」ならやりたくなるような作業の衝動は抑えることにした。プリインストールされていたソフトウェアはそのままにしておいた。アプリケーションは公式のアプリケーションストア「Microsoft Store」から入手するようにした。システム設定のデータベースのような存在である「レジストリ」には触らず、コマンドラインツール「PowerShell」も使わないことを目指した。管理者ではなく、一人のエンドユーザーとして体験したいと思ったのだ。
初めは順調だった。箱から出して使用可能にするまでの手順「OOBE」(Out-Of-Box Experience)には問題がなかった。パスワードマネージャーや、「Evernote」「iCloud」といったアプリケーションをインストールした。写真や音楽などのファイルにアクセスするためだ。キーボードショートカットはMacとかなり異なるが、それほど問題ではなかった。
だが、ささいなことではあるが筆者にとっては重大な問題があることにすぐに気付いた。外付けマウスのホイールのスクロール方向が、Macとは逆になっていることだ。
設定変更は、「レジストリエディター」(regedit)を使えばいいことは分かっていたが、できるならそれを使わずに済ませたかった。そこでMicrosoftのAIアシスタント「Copilot」に教えてもらうことにした。
新しいCopilotキーを押し、「マウスのスクロール方向を変更する方法を教えてください」と尋ねた。返ってきた答えは、正直期待外れだった。「中国でお茶はいくらですか」と質問したのと変わらないほど、役に立たない回答だった。それは「ホバーしたときに非アクティブウィンドウをスクロールする」というオプションを変更する手順であり、知りたい手順とは関係ないものだった。
「その設定ではないのでは」と聞いたところ、次の返答が来た。「おっしゃる通りです。混乱させてしまい申し訳ありません」。それと同時に別の手順を教えられた。それは、デバイスマネージャーを開き、使用するマウスを見つけ、デバイスインスタンスパスを取得し、regeditでそのパスに移動し、「FlipFlopWheel」というレジストリキーを編集し、各マウスを再起動するという手順だった。
ここで私がどんな気持ちになったか、経験者なら分かってくれるだろう。regeditを使わない方法を見つけようという目的は無残にも打ち砕かれた。私はCopilotに言った。「GUI(グラフィカルユーザーインタフェース)の設定はないんですか。いまだにregeditを使えと。2024年にもなって」
これは皮肉だが、Copilotから返ってきた答えがなかなかよかった。「そうですね。今は、このような基本的な機能をもっと簡単に変更できるようにすべきでしょう」
これは、大規模言語モデル(LLM)が事実に基づかない回答を出力する現象「ハルシネーション」ではない。Microsoftは本当に、もっと簡単に変更する方法を用意していなかったのだ。レジストリを編集したり、サードパーティー製ツールを使ったりせずに、チェックボックス1つで変更できるようにすべきだ。さらに腹立たしいことに、タッチパッド用にはこの設定があるのに、マウス用はなかった。
他にも細かい問題はいろいろあったが、割愛する。ただ、このエピソードは私がどれだけ熱意を持ってこのプロセスに取り組んだかを示すものであり、私が経験した他の多くの問題を象徴する一例でもあるため、伝えることにした。
Macユーザーにとって重大になるであろう課題もあった。他のデバイスとの統合や、ショートカット、ワークフローなどだ。これについては次の回で紹介する。
米国Informa TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
企業のITシステムのクラウド化が進むにつれ、情報システム部門の運用管理負担が増している。しかし、IT人材の不足により、人的リソースの補充は容易ではない。そこで本資料では、AWS運用の負担を軽減する方法を紹介する。
カスタマーサービスのサイロ化、問題解決の長時間化などの課題が顕在化している今、CXを変革する方法として、生成AIと自動化が注目されている。これらを活用することで、顧客満足度や問題解決時間はどう変わるのか、3つの実例から探る。
企業の生産性を向上させるためには、従業員が快適に働ける環境作りが重要になる。そこで参考にしてほしいのが、サイボウズが導入している「PCの従業員選択制」だ。業務用の端末を従業員が自由に選べることによる効果を紹介する。
Windows Server 2025は、セキュリティや可用性の向上に加え、Active Directory不要のワークグループ環境でもフェールオーバーとHyper-Vによるライブマイグレーションを実現した。Windows Server 2025が備える特長を詳しく解説する。
企業ITの複雑化が加速する中、安定運用とセキュリティリスク低減を図るため、マネージドサービスの採用が拡大している。本資料では、コンサルティング支援からシステム設計・構築、運用までを包括的にサポートするサービスを紹介する。
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...