Macに愛想が尽きた人が「Windowsこそ絶望だった」と感じる理由脱MacからのWindowsは正解か?【第1回】

長年「Mac」を使い、近年はややApple製品への期待感が薄れてきたユーザーとして、「Windows」搭載PCを使ってみることにした。両者にはさまざまな違いがあるが、筆者にとって許容しにくい問題が幾つかあった。

2025年03月16日 08時00分 公開
[Gabe KnuthTechTarget]

 AppleのクライアントPC「Mac」から、MicrosoftのクライアントOS(デスクトップOS)「Windows」搭載のPCに乗り換えることに長い間関心があった。それが大変な決断だとしても、MicrosoftはPC市場で健闘しているし、Appleの影響を受けながらWindows搭載のPCのハードウェアは良くなってきているので、考える価値はあるはずだ。

 AI(人工知能)技術をPCで稼働させる「AI PC」に関心が集まっていることを契機に、Macを封印してWindowsの世界に入ってみることにした。その結果、MacとWindows搭載PCの違いに関して、重要な気付きが得られた。脱Macを考えている人や、Windowsに満足できていない人、AI PCを検討している人などに向けてお伝えしよう。

脱Macユーザーが「Windowsに絶望」する根本的な問題

 筆者が試しに使ってみることにしたのは、MicrosoftがAI PCブランドとして提供する「Copilot+ PC」の機種、Dell Technologiesの「XPS 13」だ。このモデルは、Qualcomm TechnologiesのArmプロセッサ(Armアーキテクチャのプロセッサ)「Snapdragon」シリーズを搭載している。

 「iPhone」「Apple TV」「iPad」「HomePod」「AirPods」など、Appleのデバイスにはかなり投資してきた。だがスマートフォンやPCを中心に他ベンダーの製品がレベルアップし、Apple製品がそれほど魅力的には思えなくなってきている。Appleが競争に対して強引な部分があることや、ノートPCにタッチスクリーンを採用しようとしないことも相まって、自分が何かを見逃しているのではないかという気持ちが湧いてきている。

 ときにはWindowsの仮想マシン(VM)を使ったり、家族のWindowsのテクニカルサポートを引き受けたりすることはある。それを除いて16年間、毎日使ってきたMacにしばしの別れを告げ、丸8週間はWindowsを使ってみることにした。Appleが開発した独自のArmベースプロセッサ「M1 Pro」を搭載した「MacBook Pro」の電源を切り、未知の領域に飛び込んでみた。

ささいだが重要だった問題

 通常の「IT管理者」ならやりたくなるような作業の衝動は抑えることにした。プリインストールされていたソフトウェアはそのままにしておいた。アプリケーションは公式のアプリケーションストア「Microsoft Store」から入手するようにした。システム設定のデータベースのような存在である「レジストリ」には触らず、コマンドラインツール「PowerShell」も使わないことを目指した。管理者ではなく、一人のエンドユーザーとして体験したいと思ったのだ。

 初めは順調だった。箱から出して使用可能にするまでの手順「OOBE」(Out-Of-Box Experience)には問題がなかった。パスワードマネージャーや、「Evernote」「iCloud」といったアプリケーションをインストールした。写真や音楽などのファイルにアクセスするためだ。キーボードショートカットはMacとかなり異なるが、それほど問題ではなかった。

 だが、ささいなことではあるが筆者にとっては重大な問題があることにすぐに気付いた。外付けマウスのホイールのスクロール方向が、Macとは逆になっていることだ。

 設定変更は、「レジストリエディター」(regedit)を使えばいいことは分かっていたが、できるならそれを使わずに済ませたかった。そこでMicrosoftのAIアシスタント「Copilot」に教えてもらうことにした。

 新しいCopilotキーを押し、「マウスのスクロール方向を変更する方法を教えてください」と尋ねた。返ってきた答えは、正直期待外れだった。「中国でお茶はいくらですか」と質問したのと変わらないほど、役に立たない回答だった。それは「ホバーしたときに非アクティブウィンドウをスクロールする」というオプションを変更する手順であり、知りたい手順とは関係ないものだった。

 「その設定ではないのでは」と聞いたところ、次の返答が来た。「おっしゃる通りです。混乱させてしまい申し訳ありません」。それと同時に別の手順を教えられた。それは、デバイスマネージャーを開き、使用するマウスを見つけ、デバイスインスタンスパスを取得し、regeditでそのパスに移動し、「FlipFlopWheel」というレジストリキーを編集し、各マウスを再起動するという手順だった。

問題は“Copilotの回答”ではない

 ここで私がどんな気持ちになったか、経験者なら分かってくれるだろう。regeditを使わない方法を見つけようという目的は無残にも打ち砕かれた。私はCopilotに言った。「GUI(グラフィカルユーザーインタフェース)の設定はないんですか。いまだにregeditを使えと。2024年にもなって」

 これは皮肉だが、Copilotから返ってきた答えがなかなかよかった。「そうですね。今は、このような基本的な機能をもっと簡単に変更できるようにすべきでしょう」

 これは、大規模言語モデル(LLM)が事実に基づかない回答を出力する現象「ハルシネーション」ではない。Microsoftは本当に、もっと簡単に変更する方法を用意していなかったのだ。レジストリを編集したり、サードパーティー製ツールを使ったりせずに、チェックボックス1つで変更できるようにすべきだ。さらに腹立たしいことに、タッチパッド用にはこの設定があるのに、マウス用はなかった。

 他にも細かい問題はいろいろあったが、割愛する。ただ、このエピソードは私がどれだけ熱意を持ってこのプロセスに取り組んだかを示すものであり、私が経験した他の多くの問題を象徴する一例でもあるため、伝えることにした。


 Macユーザーにとって重大になるであろう課題もあった。他のデバイスとの統合や、ショートカット、ワークフローなどだ。これについては次の回で紹介する。

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