「Apple Pay」の便利さだけじゃない“隠れた利点”とは「Apple Pay」導入を考えるときのヒント【後編】

決済サービスの「Apple Pay」は、エンドユーザーのクレジットカードや銀行口座の情報を守るための仕組みを備えている。同サービスのセキュリティ面での利点と、小売業者が導入するときに掛かる費用を説明する。

2024年05月09日 07時00分 公開
[Katie FentonTechTarget]

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 Appleはモバイル決済サービスの「Apple Pay」を提供している。Apple Payを利用することで、エンドユーザーは自身の「iPhone」や「Apple Watch」といったApple製端末で非接触型決済(決済端末に端末やカードをかざす決済方法)が可能になる。

 エンドユーザーにとっても小売業者にとっても、Apple Payを利用することにはセキュリティをはじめとした幾つかの利点がある。Apple Payの仕組みと併せて、セキュリティ面での利点や、小売業者が同サービスを導入するときに掛かる費用を紹介する。

エンドユーザーの“あれ”を保護する「Apple Pay」の仕組み

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 Apple Payの導入はセキュリティ面でもメリットがある。同サービスは安全な取引のために、エンドユーザーに認証を求める。決済を承認するには、エンドユーザーはAppleの指紋認証システムの「Touch ID」または顔認証システムの「Face ID」、パスコードで認証しなければならない。もし端末をなくした場合でも、Appleの「探す」機能を有効にしていれば、端末を紛失モードにすることでApple Payを停止させることができる。端末をなくしたからといって、クレジットカードを無効にして再発行する必要はなくなる。

 決済のとき、Apple Payはカード情報を暗号化して取引をトークン化(解読が難しいランダムな文字列に置き換えること)する。Appleのセキュリティポリシーは、エンドユーザーにとっても小売業者にとっても助けになる。エンドユーザーがApple Payにカードを追加すると、銀行やカード会社は「デバイスアカウント番号」というその端末固有のトークンを作成する。Apple Payはこのトークンを使って決済を完了し、銀行口座情報を守る。デバイスアカウント番号がAppleのサーバに保存されたり、オンラインストレージ「iCloud」にバックアップされたりすることはなく、Appleは元のカード番号にアクセスできない。これによりエンドユーザーのクレジットカードや銀行口座情報の安全が保たれる。小売業者もApple Payの決済時に利用客の実際のカード番号を受け取らないため、取り扱いに注意を要するデータを扱わずに済む。

キャッシュレス決済を可能にするための選択肢

 Apple Payそのものの初期導入費用や月額利用料金は無料だ。新しい決済用端末を調達したり、新しいPOS(販売時点情報管理端末)を導入したりする必要がある場合は、そのコストがかかる。利用客がApple Payを通じてクレジットカードやデビットカードで支払いをすると、小売業者に通常のクレジットカードの決済手数料がかかる。決済代行サービス会社を経由してApple Payと契約する場合、追加の初期導入費用や利用料金が掛かる場合がある。

 AppleはApple Payと併せて使用できる小売業者向けのオプションサービスも提供している。iPhoneを店頭の決済用端末として利用可能にする「Tap to Pay on iPhone」はその一例だ。同サービスを利用すれば、さまざまな規模の小売業者が初期導入費用を抑えながらより容易にApple Payを導入できるようになる。

 小売業者は、利用客全員がAppleユーザーというわけではないことに注意する必要がある。Apple PayはAppleの端末でしか利用できない。例えばGoogleはモバイルOS「Android」搭載のスマートフォン向けの決済サービスとして「Google Pay」を提供している。このような他の非接触決済手段も提供する必要がある。大抵の非接触決済は全て同じNFC(近距離無線通信)技術を利用している。そのためApple PayとGoogle Payは同じ決済用端末を利用して、ほぼ同時に導入や設定ができる。

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