捨てるつもりが情報流出に
データ漏えいを恐れてIT機器を「物理破壊」するのは本当に正解か?
セキュリティ上の懸念から、本来なら再利用できるはずのIT機器を物理的に破壊してしまう企業が後を絶たない。調査で浮き彫りになった、組織の過信と廃棄プロセスに潜む欠陥とは。
不要になったIT資産の廃棄を請け負うITAD(IT Asset Disposal)業界は、サステナビリティ(持続可能性)とセキュリティの両方の観点から、存在感が増している。
データ消去技術を扱うBlancco Technology Groupが2026年5月に発表したレポート「2026 State of Data Sanitization Report: Enterprise Security Anxiety」は、IT機器の廃棄において、情報流出への過度な警戒が新たな問題を生んでいることを指摘する。このレポートは、2026年1月~2月にかけて、北米、欧州、アジア太平洋の従業員5000人以上の大企業に属するIT、コンプライアンス、サステナビリティのリーダー1460人を対象にしたものだ。
調査は、廃棄プロセスに対する企業の過信と、日々のIT運用の間に生じている乖離(かいり)を浮き彫りにした。機密情報が残ったままのHDDが廃棄プロセスを擦り抜けて流出している一方で、本来なら再利用できたはずの機器も物理的に破壊されているのが実態だ。
調査で判明した「廃棄の矛盾」
調査が指摘するのは、「自社の処分プロセスが適切に機能している」という、大半の企業における誤った認識だ。極端な例では、正常に動くハードウェアを物理的に破壊することこそが、データ漏えいを防ぐ最善の手段だと信じ込まれている。
データがデバイスに残存するという懸念は決して杞憂(きゆう)ではない。調査期間において、データ漏えいを経験した企業(全体の38%)のうち32%が、再利用されたデバイスを原因に挙げた。廃棄プロセスを擦り抜けたとみられるハードウェアの紛失や盗難に起因する情報漏えいも起きている。
Blancco Technology Groupは、現場で実施されている一部のデータ消去手法を「基準を満たしていない」と評価している。データ消去を完了したことの証明書を伴わない簡易的な工場出荷時設定へのリセット、ソフトウェアによるデータ上書きツールの不適切な運用などがその例だ。
これとは対極にある極端な行動として、過剰な警戒心から正常に動作する機器を破壊してしまう実態がある。これは既存の廃棄プロセスが機能していないことの現れだ。調査において、破壊処分されたデバイスのうちモバイルデバイスの43%、ノートPCおよびデスクトップPCの35%、データセンターの機器の44%は、物理的に破壊された時点で完全に機能していた。
調査では、データセンター機器は、破壊された時点での平均稼働期間がわずか3年8カ月であり、デスクトップPCやノートPCなどの個人用デバイスに至っては3年で物理破壊されていたことが明らかになった。再生品(リファービッシュ品)の普及やサステナビリティの向上に尽力し、循環型経済の推進を叫ぶ関係者にとって、これらの数字は悲嘆すべき現実を示している。
Blancco Technology GroupのCEOを務めるルー・ディフルシオ氏は、「企業は顧客データを保護したいと願う一方で、不適切な手法や、データごと機器を破壊する手法を用いる事態が目立っている」と指摘する。
SSDやメモリの価格高騰など、新規デバイス導入にかかる費用が読みづらい2026年において、「企業はデータを安全に保ちつつ、機器を再利用できる持続可能な手法を検討すべきだ」とディフルシオ氏は語る。
サステナビリティを重要な要素だと見なす回答者は全体の33%であり、広く浸透している。その一方で、環境戦略を実際の資産廃棄プロセスに落とし込む工程においては、課題に直面している。
調査は、AIツールの高い処理要求に応えるための高性能ハードウェアへの投資と、旧型デバイスを物理破壊する割合の増加の間に、明確な因果関係があることを示している。過去1年間にAIツールを導入した企業(全体の90%)のほぼ全てに当たる99%が、データの露出を恐れて旧型デバイスを物理破壊したと回答した。
企業が資産を適切に廃棄し、データを正しく消去する動機として、最も多く挙がったのが法規制(41%)だ。これに加えて、サステナビリティ目標の達成(35%)、ストレージ技術の変化(34%)といった背景も、処分プロセスの変更を後押ししている。
コンプライアンス(法令順守)は、企業のIT投資を喚起する最大の引き金だ。調査対象となった回答者の59%が、2024年と比べてデータのプライバシー保護により多額の費用を充てるようになっている。
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