導入効果を引き出すERP選定の条件
経営者などの約半数が「ERPが何か分からない」 導入後最多のつまずきは?
プロトスターは、ERPの利用実態に関する調査結果を発表した。導入率は17.5%にとどまる一方、導入企業の57.1%が満足と回答した。導入期間の長期化やデータ移行、利用者間のスキル格差が課題として浮かび上がった。
ERP(統合基幹業務システム)は、会計や販売、在庫、人事などのデータを一元管理し、経営判断や業務効率化を支える。一方、プロトスターの調査「ERP(基幹システム)の利用に関する実態調査」によると、会社員・経営者などの54.0%が「ERPが何か分からない」と答え、ERPの導入率は17.5%にとどまった。調査は2026年7月9日、ERPの利用状況や選定基準、導入効果などを調べたものだ。
ERPを導入済みと答えた回答者のうち57.1%がERPに満足している一方、導入に当たってさまざまな課題に直面したという回答もあった。調査結果から、ERP導入でつまずく理由と、製品選定から運用定着までに押さえるべき成功のコツを探る。
ERP導入率は17.5%、半数以上が「ERPが何か分からない」
プロトスターの調査は同社が運営するSaaS比較メディア「起業LOG SaaS」の編集部が、全国の会社員や会社経営者などを対象に実施した。調査期間は2026年6月20~23日で、有効回答数は200人だった。
自社でERPを導入、運用していると回答した人は35人で、全体の17.5%だった。「導入を検討、比較している」は11.5%、「過去に検討したが見送った」は1.5%で、導入または検討の経験がある回答者は合計30.5%にとどまった。
一方、「ERPが何か分からない」と回答した人は54.0%に上った。ERPは複数部門の業務やデータを統合する仕組みだが、その役割や導入効果が十分に理解されていない実態がうかがえる。
機能だけでは選べない、操作性や支援体制も重視
ERPの導入または検討経験がある61人に、製品選定で重視する点を複数回答で尋ねたところ、最多は「自社業務に合う機能の網羅性」の39.3%だった。
次いで「操作性・画面の分かりやすさ」が37.7%、「サポート・導入支援の体制」が34.4%、「費用」が32.8%だった。この他、「既存システムとの連携」が23.0%、「同業種での導入実績・事例」と「セキュリティの高さ」がそれぞれ16.4%となった。
結果からは、多くの機能を備えているだけでは十分ではなく、従業員が日常業務で使いこなせるか、導入や運用をベンダーから支援してもらえるかも重視されていることが分かる。
機能が豊富でも、操作が複雑で現場に定着しなければ、データ入力が徹底されず、ERPによる一元管理の効果を得にくい。選定時には製品の機能表だけでなく、実際の画面や業務フローを確認する必要がある。
導入企業の57.1%が満足、経営状況の可視化に効果
ERPを導入済みと回答した35人に総合的な満足度を尋ねたところ、「満足」「やや満足」と回答した人は合計20人で、57.1%を占めた。「不満」「やや不満」は3人で、8.6%だった。
導入によって実感した効果では、「経営数字をリアルタイムに可視化できた」が34.3%で最も多かった。「入力ミス・データの不整合が減った」が31.4%、「部門間のデータ連携がスムーズになった」が22.9%で続いた。
部門ごとに異なるシステムや表計算ソフトを使っている場合、同じ売上高や在庫数でも、集計時期や定義が異なることがある。ERPでデータや業務プロセスを統合すれば、転記や集計に伴うミスを抑え、経営状況を迅速に把握しやすくなる。
ERPの価値は、個々の作業を効率化することだけではない。部門をまたいでデータを共有し、共通の情報に基づいて経営判断できる環境を整える点にもある。
導入時のつまずき、最多は「期間の長期化」
一方、ERP導入時の課題で最も多かったのは「導入期間が長引いた」の25.7%だった。「データ移行が大変だった」が20.0%、「既存業務との適合が不十分だった」が17.1%で続いた。
ERP導入では、既存システムから移行するデータの整理や重複の解消、入力形式の統一などが必要になる。移行対象やデータの品質を事前に確認していないと、導入工程の終盤で修正作業が増え、稼働開始が遅れる可能性がある。
調査の自由回答でも、ERP導入経験者から「データ移行を円滑に進められるよう、日頃から複数の目で確認と準備を行うことが大切」との意見が寄せられた。
既存業務への適合を求めすぎることも、導入の長期化や費用増加につながり得る。自由回答では「自社のやり方にこだわりすぎず、業務をシステムに合わせていくことがうまくいくコツ」との指摘もあった。
現行業務をそのままERP上で再現しようとすれば、追加開発やカスタマイズが増える。導入を機に既存業務の必要性を見直し、ERPの標準機能に合わせられる業務と、独自性を維持すべき業務を切り分ける必要がある。
初期費用だけでなく運用コストも確認する
ERPを導入済みの35人に初期費用を尋ねたところ、17人が「非公開・分からない」と回答し、金額を回答したのは15人だった。残る3人は無回答だった。
金額を回答した15人のうち13人は、初期費用が100万円以上だった。300万円以上と回答した人も複数いたという。
ただし、ERPにかかる費用は導入時だけではない。自由回答では「運用コストが予想以上にかかることがあるので、見積もりをよく考えて導入した方がよい」との意見があった。
ライセンスやクラウドサービスの利用料に加え、保守、従業員への教育、問い合わせ対応、法制度や業務変更に伴う改修などにも費用がかかる。選定時には初期費用だけを比べるのではなく、導入後の運用を含めた総保有コストを確認する必要がある。
導入後に残る「使いこなせる人」の格差
自由回答では、システムの機能や費用だけでなく、導入後の運用体制に関する課題も挙がった。
ある回答者は「使いこなせる人とそうでない人の差が大きく、苦手な人をフォローする体制づくりが課題として残る」と指摘した。ERPを導入しても、利用者が入力方法や新しい業務手順を理解していなければ、誤入力やシステム外での管理が残る。
また、「他システムと連携でき、後からでも改修しやすいものを選ばないと厳しい」との回答もあった。ERPは長期間にわたって利用することが多いため、導入時点の要件だけでなく、事業拡大や組織再編、周辺システムの変更に対応できるかどうかも選定基準になる。
今回の調査では、ERPの導入率や認知度は低い一方、導入済みの回答者の過半数が満足していた。ただし、回答者は200人、導入済みの回答者は35人に限られるため、結果を見る際には母数に留意する必要がある。
ERP導入で効果を得るには、製品を購入するだけでは不十分だ。複数製品を同じ条件で比較し、データ移行や業務変更の準備を進め、利用者の教育や運用支援まで含めて設計することが重要になる。
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