業務時間の2割が確認と手戻り対処
リーダーの時間を奪う「無駄な作業」 手戻り地獄から抜け出せない理由
プロジェクトリーダーが、確認作業や手戻りといった本来の業務以外の対処に追われ、疲弊している。既存の属人化解消策やマニュアル化では太刀打ちできない。真の課題はどこにあるのか。
ITコンサルティング企業グローバル・リンクは2026年6月、IT業界従事者200人を対象としたマネジメント実態調査を実施した。現場をけん引するプロジェクトマネジャー(PM)やリーダー層37人の回答を分析したところ、深刻な時間ロスの実態が明らかになった。
調査では、現場リーダー層の64%が「確認、手戻り」に業務時間の20%以上を費やしていた。約3人に2人が、業務の5分の1以上をマネジメント以外の確認・修正作業に奪われている計算になる。
なぜ、これほどまでに現場のリーダーは手戻りに時間を奪われているのか。調査データから見えてきた、情報共有体制の脆弱(ぜいじゃく)さと現場が抱えるジレンマを深掘りする。
認識のずれが時間を奪う根本原因
リーダーの時間を奪っている業務を見ると、設計や開発といった本来のプロジェクト業務ではないことが分かる。直近1カ月で最も時間を取られた業務について尋ねたところ、全体の43%が「顧客からの追加要望」を挙げ、最も高い割合を占めた。次いで「確認・問い合わせ対応」が38%、「進捗(しんちょく)遅延への対処」が35%だった。これらの上位項目は全て、プロジェクトに関する実作業そのものではなく、関係者間の調整や認識合わせに起因する業務だ。顧客との折衝やメンバー間の意思疎通に追われ、本来の設計やマネジメント業務が後回しになる悪循環に陥っている様子がうかがえる。手戻りや再作業も22%を占めており、本来の業務への集中を妨げる構造的な要因が数字によって裏付けられた形だ。
確認や手戻りが頻発する最大の原因は、「要件認識の違い」にある。手戻りが発生する要因として、約49%のリーダーが要件認識の食い違いを指摘している。確認作業が発生する理由としては、「要件が曖昧」「ドキュメント不足」「メンバー経験不足」がそれぞれ32%で上位に並んでいる。確認と手戻りの両方が、情報共有の不備やドキュメントの質といった情報共有体制の脆弱さに根ざしていることは明らかだ。開発現場におけるコミュニケーション不足として片付けるのではなく、要件定義や仕様書、業務指示の透明性を高めることが、結果として確認や手戻りの削減につながる根本的な解決策になる。
属人化解消への課題と従来型施策の限界
現場のリーダー層もこうした課題を明確に認識しており、最も優先度が高い業務課題として32%が「属人化解消」を挙げている。プロジェクトの成否が特定の個人のスキルや経験に依存する状況からの脱却を目指していることが分かる。しかし、その強い課題感に対して、現場で現在実施されている改善施策は十分とは言えない状況だ。具体的な取り組みとして「ナレッジ共有」が32%、「マニュアル整備」が30%と、従来型の手段にとどまっている。19%のリーダーは「まだ何も実施していない」と回答しており、課題の深刻さと実際の対策の間に大きなギャップが存在している。
AI技術の活用についても、優先課題として関心を示したのはわずか8%で、施策としても19%にとどまっている。高度なテクノロジーを扱うIT業界でありながら、自らのプロジェクトマネジメント現場においては、新しいツールやAI技術を利用した業務改善はまだ途上にあることがうかがえる。課題解決に向けた有効な手段を見いだせていない現場のジレンマが浮き彫りとなっている。
抜本的な仕組み化への潜在ニーズと今後の展望
現状の取り組みに対する評価では、半数超に当たる約51%のリーダーが「十分改善できていない」と回答し、既存の対策に限界を感じている。属人化を解消し、情報共有体制を整備するための適切な手段にまだ出会えていない層が存在している状態だ。一方で、「確認・手戻りが半減すること」に対しては、約59%が「魅力を感じる」と答えており、現状を打破する効果的な解決策に対する潜在的な需要は大きい。「手戻り削減の仕組み」への関心も約62%に達しており、精神論や単純なマニュアル化ではなく、業務プロセスに直接組み込まれた具体的な改善手段が強く求められている。
人材不足時代において、プロジェクトを成功に導くためには、単に人員を補充するだけでは根本的な解決にはならない。時間的ロスを定量的に可視化し、属人的な知識共有から組織的な情報共有体制に移行するなど、仕組みそのものを改善していく視点が不可欠だ。
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