「AIエージェントって何?」を手元で試せる
話題の「OpenClaw」をJavaで動かす、情シスが試すAI「ClawRunr」
AIエージェントを全社導入する前に手元で動かしてみたい――。この希望をかなえるのがJava製の個人向けAIエージェント「ClawRunr」だ。同製品を開発するロナルド・デフィサー氏は、その挙動や限界を紹介する。
AIエージェントに興味はあるものの、「具体的に何ができるのか」「どのような仕組みで動いているのか」がまだつかめない――。そんな情報システム(情シス)部門担当者が、自分の手元でAIエージェントを試す選択肢の1つが、プログラミング言語「Java」で開発されたオープンソースソフトウェア(OSS)「ClawRunr」だ。
ClawRunrは、バックグラウンドジョブライブラリ「JobRunr」を手掛けるロナルド・デフィサー氏らが開発した個人向けAIエージェントだ。メールやカレンダー、Webブラウザなどと接続し、自然言語で依頼した仕事を実行できる。毎朝のメール確認といった定期処理も可能だ。
デフィサー氏は、ソフトウェアベンダーJetBrainsのマリット・バン・ダイク氏(ディベロッパーアドボケイト)が司会を務める動画「IntelliJ IDEA Tech Talks」でClawRunrのセットアップから具体的な活用方法までを実演した。
「AI+ジョブスケジューラー」で何ができる?
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ClawRunrの発想はシンプルだ。AIとジョブスケジューラーを組み合わせ、ユーザーが日々繰り返している作業を自然言語で自動化する。
例えばチャットで「毎日メールを確認して」と指示すると、その処理を繰り返し実行するジョブを作成する。指定した時間になると、JobRunrがジョブを起動し、AIエージェントに「何をすべきか」を渡す。
この動きは、単なるリマインダーとは異なる。決められた時間に「メールを確認してください」と人間に通知するのではなく、AIエージェント自身がメールを調べ、必要な処理を実行する。
「今晩、この人にお礼メールを送って」といった一度限りの処理も予約可能だ。ClawRunrは自然言語による指示から実行すべき時刻とタスクを受け取り、ジョブを作成する。
まずはプロジェクトをクローンして動かす
ClawRunrはJava版の「OpenClaw」として開発された。以前は「JavaClaw」と呼ばれていた。
ClawRunrを利用するには、GitHubなどからClawRunrのソースコード一式を自分のPCに取得し、そのPC上でアプリケーションを実行する。
セットアップでは、まず利用する大規模言語モデル(LLM)を選択する。標準状態では、OpenAI、Anthropic、Ollamaの3つに対応している。ローカル環境ではQwenやGemmaなどのモデルも利用できるという。
デフィサー氏は、高品質なAIアシスタントを求めるのであればフロンティアモデルを使う一方、外部へ送りたくないデータがある場合にはローカルモデルを利用するよう勧める。
ローカルモデルは処理時間が長くなったり、タスクによってはフロンティアモデルほどよい結果を得られなかったりすることがある。それでも、機密性の高い情報をクラウドへ送信せずにAIエージェントの動作を試せる点は、情シス担当者にとって興味深いところだ。
モデルによって動作が異なることも理解しておく必要がある。デフィサー氏は、メール削除の指示をモデルごとに試した。その結果、指示通り削除するモデルがある一方、削除ではなくアーカイブしようとするモデルもあったという。
MCPでGmailやGoogleカレンダーにつないでみる
AIエージェントらしさを体験する上で重要なのが、外部サービスとの接続だ。
ClawRunrはMCP(Model Context Protocol)サーバを追加できる。Google MCPを設定し、GoogleカレンダーとGmailにアクセスさせるといった使い方が可能だ。
例えば、「確認すべき緊急メールはありますか?」とClawRunrに尋ねると、AIエージェントは利用できるツールを探し、メールを確認する。受信トレイを調べた上で、特に緊急のメールはないと回答するといった動きを実行する。
使えるツールを全部渡すと「コンテキスト」が埋まる
ClawRunrでは、AIエージェントが利用するツールの扱い方も試せる。外部システムとの連携を増やすほど、AIエージェントが利用できるツールは増える。ただし、それら全ての定義をLLMへ最初から渡せば、コンテキストを大量に消費する。
そこでClawRunrは、AIアプリケーション開発ツール「Spring AI」の動的なツール探索の仕組みを利用している。
処理を始める段階で全ツールをLLMに渡すのではなく、何かを実行する必要が生じたときに「利用できるツールはないか」とAIエージェント自身が探す。必要になったツールだけを選ぶことで、コンテキストの消費を抑える。
AIエージェントに接続する業務システムが増えたとき、数十、数百のツールをどう扱うのか。ClawRunrを試すことで、こうした設計上の課題も見えてくる。
ブラウザ操作やWeb検索も試せる
MCP以外のツールも利用できることが特徴だ。
例えば検索エンジン「Brave」のWeb検索API「Brave Search API」を設定し、AIエージェントにWeb検索をさせるといった具合だ。さらにMicrosoftのE2E(エンドツーエンド)テストツール「Playwright」を使ったブラウザ自動操作にも対応し、Webフォームへの入力といった処理を実行できる。
Telegramから「自分専用AI」を操作
ClawRunrへの指示はWeb画面だけに限らない。メッセージングプラットフォーム「Telegram」や「Discord」と接続し、AIエージェントへ指示を出すことができる。
デフィサー氏自身も自宅でClawRunrを常時動かし、スマートフォンからTelegram経由でClawRunrを利用しているという。
例えば、自宅の電気設備を巡るトラブルに遭った際、旅行先からTelegramでClawRunrへ指示した。関連する過去のメールを全て調べ、何が起きたのかを整理し、裁判向けの案件資料を作成するよう依頼したところ、ClawRunrは関連メールを探し、時系列などをまとめた資料を作った。
デフィサー氏によれば、旅行中にスマートフォンから依頼し、約5分後には必要な情報がまとまっていた。裁判所へ書類を持ち込める時間まで調べたという。
AIは失敗する だからJobRunrを組み合わせる
ClawRunrを触ることで、AIエージェントの便利さだけではなく、「思った通りには動かない」という現実を体験することも可能だ。
デフィサー氏は、AIがAPIやツールを呼び出す際、正しい形式のJSONが返らないことがあると説明する。そこで同氏は、ClawRunrとJobRunrを組み合わせるという。
例えば複雑なタスクの途中で処理に失敗した場合、JobRunrがジョブを自動的に再試行できる。さらに、どの地点で失敗したのかという情報をAIエージェントへ渡せば、そのコンテキストを基に別の方法を選べる。
メール送信を「あえて許可しない」こともできる
情シス担当者がClawRunrを試す際、特に注目したいのが権限管理だ。
例えば、「今晩、JetBrainsの担当者へお礼メールを送って」と指示したものの、Google MCPにはメールを送信する権限をあえて与えない状態を作る。
その結果、ClawRunrは勝手にメールを送らず、処理を止めた。その後「下書きを作って」と指示すれば、ユーザーが内容を確認してから自分で送信する。
AIエージェントに何を許可し、何を許可しないのか。この境界を実際に設定してみることで、企業利用時の権限設計を具体的にイメージしやすくなる。
TelegramからClawRunrを操作できるユーザーを制限することも可能だ。利用を許可するTelegramのユーザー名を設定し、指定したユーザーからの要求だけに応答する仕組みだ。これにより、許可されたTelegramユーザーからの要求だけに応答するよう設定できる。第三者にAIエージェントを操作され、ユーザー本人のメールなどへアクセスされることを防ぐことができる。
AIの動きを全部コードにすると「ルールエンジン」に逆戻り
AIエージェントを自作するときに、どこまでコードを書くべきなのかという問題もある。
デフィサー氏はClawRunrを開発する中で、当初はさまざまな処理をコードとして記述していた。しかし、できるだけ多くをAIエージェントへ委ねる方がよいと考えるようになった。
全ての条件や処理手順をコードとして決めれば、結局は従来型の「ルールベースエンジン」を作ることになるからだ。
ClawRunrでは、実行するタスクを小さなMarkdownファイルとして保存する。指定時刻になるとJobRunrがその内容をAIエージェントへ渡し、「具体的にどう処理するか」はAIに判断させる。
ここで、AIに任せる部分と、コードで確実に制御する部分をどう分けるのかという疑問が湧く。これは、実際にAIエージェントを作ってみなければ分かりにくいポイントだ。ClawRunrは、その境界を試行錯誤するための材料にもなる。
企業に入れる前に「自分専用AI」で試してみる
AIエージェントについての記事や製品発表を読むだけでは、「チャットAIと何が違うのか」「MCPは何のために必要なのか」「権限を与えると何が危ないのか」といった点を理解しにくい。
ClawRunrを自分の環境で動かせば、LLMを選び、MCPで外部サービスへ接続し、ツールを呼び出し、定期ジョブを作り、失敗時にリトライさせるところまで一通り試すことができる。
一方で、AIにメール送信を許可するのか、ローカルファイルへのアクセスをどう制御するのか、どの情報をクラウドLLMへ渡すのかといった課題もすぐに表面化する。
だからこそ、企業全体でAIエージェントを導入する前に、まずは情シス担当者自身が小さな環境で動かしてみる意味がある。
ClawRunrは企業向けの完成品ではない。しかし、「AIエージェントとはどのような部品を組み合わせて動き、どこで失敗し、どこにリスクが生じるのか」を自分の手元で理解するための題材になりそうだ。
本稿は、IntelliJ IDEAが2026年7月30日に公開した動画「Your Java AI Agent at Home-Ronald Dehuysser | IntelliJ IDEA Tech Talks」を基に作成しました。
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