情シスの作業工数を「ほぼゼロ」に
「夜間バッチ遅延」「保守の属人化」の恐怖 “全面刷新しない”ERP移行の教訓
月間60万件超のデータ連携で夜間バッチが遅延すれば、現場の業務に深刻な被害が出る。ERP運用の属人化という“時限爆弾”を抱えていたゼロが、全面刷新を見送って新バージョンへの移行を決断した理由は。
法改正のたびに基幹システムの改修を重ねると、メンテナンス工数が肥大化し、特定の担当者しか仕様を把握していない「ブラックボックス化」に陥ってしまう。自動車輸送や整備を手掛けるゼロも、そうした“システムの限界”に直面していた。同社は2014年から国産ERP(統合基幹業務システム)「GRANDIT」を運用してきたが、月間60万件超のデータ連携に伴う夜間バッチ処理の遅延や保守の属人化といった課題が情報システム部門の負担になっていた。外部委託による紙の請求書発送で到着までに約1週間を要していた他、「Microsoft Excel」を用いた手作業による予算実績管理など、非効率な業務が現場の負荷を高めていた。
システムの老朽化に対し、企業は「最新の別システムへの全面刷新」を理想にしがちだ。ゼロもGRANDIT以外の製品を含めて比較検討をしたが、最終的に選んだのはGRANDITの新バージョンへの移行だった。立ち上げ期間の長期化リスクを回避し、これまでの実績と移行の確実性を重視した現実的な判断の裏には、情報システム部門が限られた人員を「真に解決すべき課題」に集中させるための戦略があった。
「他社製品への全面刷新」を見送った現実的な理由
ゼロは、基幹システムの国産ERPであるGRANDITをバージョンアップするとともに、帳票電子化・Web配信サービス「eco Deliver Express」を採用した。GRANDITの開発・販売を担うコンソーシアムの運営事務局を務めるインフォコムが、2026年8月20日に発表した。紙を中心とした請求業務のペーパーレス化や月次締め業務の省力化、運用の属人化解消を図る。
ゼロは自動車輸送や整備、中古車オークションの運営などを全国規模で展開している。同社は2014年にGRANDITを採用し、2018年にはグループ子会社5社に展開した。長年の運用を経て、法改正やメンテナンスに伴う工数の増加、保守の属人化が課題となっていた。外部委託による紙の請求書発送で顧客到着までに約1週間を要していた他、Microsoft Excelを用いた手作業による予算実績管理、月間60万件超のデータ連携に伴う夜間バッチ処理の遅延など、現場の負荷も限界に達していた。
今後の事業成長に耐え得るシステムを再構築するため、他社製品を含めた比較検討を実施。他社システムへの全面刷新は立ち上げ期間が長期化する懸念があったため、これまでの実績と移行の確実性を重視し、GRANDITの新バージョンへの移行を決断した。導入に当たっては、プライムパートナーであるベニックソリューションが支援を担当した。
プロジェクトでは要件定義を丁寧に進め、手作業が介在する一部システムの直結は見送る一方、受領請求書データの連携や経費精算システムの自動連携、eco Deliver Expressによる請求書配信自動化に人員を集中させた。開発からテストの過程では検証環境の構築遅延などの課題も生じたが、優先順位を再設計してスケジュール通りに本番切替を完了させた。
新バージョンの稼働によって、eco Deliver Expressの活用と稟議(りんぎ)のデジタル化が進み、稼働後5カ月で請求書約3万枚、申請関係約1万枚の合計約4万枚に及ぶペーパーレス化を達成した。書類保管スペースの縮小による賃料費用の削減も見込んでいる。
新規開発した明細取り込み機能によって、1伝票当たりの作業時間が数十分から約5分に短縮。仕入計上の自動連携機能も加わり、子会社各社の締め業務が1社当たり約1営業日短縮された。約100社の取引先に対する受け入れ・検収明細の送付業務も自動化され、システム部門の作業工数はほぼゼロになった。保守体制もチーム制に移行し、24時間365日のサポート体制を確立した。
今後は、eco Deliver Expressの顧客登録数を増やして紙の郵送をゼロに近づけるとともに、自動化によって創出された情報システム部門の余力を、蓄積したデータを活用したデータ分析や経営判断への貢献といった付加価値業務にシフトさせる計画だ。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHUB.News」に掲載された「ゼロ、基幹ERPの刷新で4万枚の書類削減 締め処理短縮と保守体制強化へ」(2026年8月21日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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