CIOが追加予算で狙う「AI投資」の中身
IT予算が10%増えたら何に使う? 著名企業のCIOが明かす「最優先の投資先」
Informa TechTargetは、PagerDutyやRimini Streetなどさまざまな組織のCIOに、IT予算が10%増えた場合の最優先投資先を尋ねた。
IT予算が10%増えたら、CIOは何に最優先で投資するのか。Informa TechTargetは、PagerDutyやRimini Streetなど様々な業界のCIOに「IT予算が10%増えたら、最初にどこへ投資するか」と尋ねた。
CIOは、追加のIT予算を具体的に何へ振り向けようとしているのか。各社の回答を見ていく。
PagerDuty
インシデント管理サービスを手掛けるPagerDutyのCIO、エリック・ジョンソン氏が追加予算の投資先として挙げたのは、AIインフラの監視、ROI(投資利益率)の把握、セキュリティだ。
生成AIを支えるモデルやインフラは急速に進化している。企業がAI活用を全社規模に広げるには、新しいAIサービスを導入するだけでなく、利用状況を監視し、安全性を確保しながら、事業上の成果につながっているかを測定する必要がある。
ジョンソン氏は、AIを大規模に活用できる企業が将来の競争で優位に立つとの考えを示した。
デブライ大学(DeVry University)
米DeVry UniversityのCIO、クリス・キャンベル氏が重視するのは、AIの試験導入を企業全体で利用できる仕組みに発展させることだ。
キャンベル氏は、AI技術そのものは利用しやすくなっている一方、より大きな課題はAIを業務プロセスやデータ、ガバナンス、チェンジマネジメントと統合し、継続的な成果につなげることだと指摘する。
追加予算は、データプラットフォーム、ID管理、セキュリティ、システム連携などにも振り向ける考えだ。
キャンベル氏は、AIツールの購入だけに注力すると、実際のボトルネックがAIそのものではなく、その周辺にあることに気付くケースがあると指摘した。
Sutherland
BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)などを手掛けるSutherlandのCIO兼CDO(最高デジタル責任者)、ダグ・ギルバート氏もAIへの投資を挙げる。
特に注目するのはAIエージェントだ。同氏はAIを「人間を置き換えるもの」ではなく、人間の能力を補完するものと位置付けている。
ギルバート氏によると、同社がAIエージェントを導入した企業では、バックエンド業務の自動化などによって40~80%の効率改善が見られたケースがあるという。
さらに同氏は、AI導入によって顧客満足度が改善すると、従業員満足度にも大きな効果が表れると説明する。
単に作業時間を短縮するだけではなく、AIに定型業務を任せることで、人間を判断や顧客対応などの業務に集中させる。こうした従業員体験まで含めた効果を、AI投資の判断材料にしている。
Rimini Street
ITサービスを手掛けるRimini StreetのCIO、ジョー・ロカンドロ氏も、追加予算があればAI関連のイノベーションや研究開発に投資すると答えた。その理由は、投資による「レバレッジ効果」だ。
ロカンドロ氏は、新しいハードウェアやソフトウェアへの投資よりも、AIへの投資の方が、同じ追加予算からより大きな効果を引き出せる可能性があるとみる。
これは、IT投資の判断基準が変わりつつあることを示している。単に新しいIT製品を追加するのではなく、「限られた予算で人や既存システムの生産性をどこまで高められるか」が重要になる。
Sedgwick
保険請求管理などを手掛けるSedgwickのグローバルプラットフォーム兼デジタルソリューション担当CIO、ショーン・サフィー氏が追加投資したいとするのは、保険請求処理システムと査定担当者の間で動くAIだ。
受け付けや案件の振り分け、事故発生時の初期情報の記録といった事務作業をAIに担わせ、人間がより重要な判断に集中できるようにする。
今後さらに投資したいのが、AIエージェントがリアルタイムの情報へ高速かつ安全にアクセスできる環境だという。
AIの性能が高くても、必要な情報の取得に時間がかかったり、既存システムとの連携がボトルネックになったりすれば、業務全体の効率化にはつながらない。
このため、AI活用ではモデルだけでなく、APIやデータ基盤、ID管理、ネットワークなど、AIを業務システムにつなぐ部分への投資も必要になる。
AIの次に重要なのはサイバーセキュリティ
サフィー氏は、AIに次ぐ投資先としてサイバーセキュリティも挙げた。
AIが企業の業務システムに深く組み込まれ、大量のデータにアクセスするようになれば、AI活用の拡大と同時にセキュリティリスクも大きくなる。
同氏は、AIへの投資と並行して、セキュリティアーキテクチャ、ガバナンス、データ保護にも投資する必要があると指摘する。
企業にとってAIの利用範囲が広がるほど、「何ができるか」だけではなく、「誰がどのデータへアクセスできるか」「どのように利用を監視するか」といった統制が重要になる。
CIOの回答から見えた「AI投資」の中身
今回TechTargetがCIOに尋ねた回答では、AIが追加予算の主要な投資先として浮かび上がった。
ただし、そこでいう「AI投資」は、生成AIサービスやAIエージェントのライセンスを増やすことだけを意味しない。
各CIOの回答からは、AIを本番環境で利用するためのデータ基盤、インフラ、システム連携、ID管理、セキュリティ、ガバナンスなどにも予算を振り向ける必要があるとの認識が読み取れる。
さらに、投資効果として重視されているのは「AIを導入したかどうか」ではない。業務効率をどれだけ改善できたか、従業員や顧客の体験を改善できたか、投資に対してどれだけの成果を得られたかといった具体的なビジネス成果だ。
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