サイボウズ調査
予算が増える情シス、増えない情シス 明暗を分けた「たった1つの違い」
サイボウズの調査によると、IT戦略を経営戦略の一部として位置付ける企業ほど、IT予算を積極的に増額し、全社横断型の施策を推進する傾向が明らかになった。重点投資先にはどのようなものが挙がったのか。
「ITはコストか、それとも経営そのものか」――。この位置付けの違いが、企業のIT投資や施策の方向性に影響を与えている実態が明らかになった。
サイボウズが2026年5月14日に発表した調査によると、IT戦略を経営戦略の中に位置付ける企業では、IT予算を積極的に増額する傾向が見られた。一方で、約4割の企業では、IT戦略が経営戦略と個別に扱われていることも分かった。重点投資先にも違いがあり、「経営とITの距離感」が、企業のIT施策に影響している可能性がある。
“IT戦略が存在しない企業”は8%も
調査は、従業員数1000人以上の企業で、情報システム部門を管掌する取締役・執行役員、情報システム業務に関与する部長職を対象に実施したものだ。有効回答数は39社だった。
自社が抱える経営課題を尋ねた質問で多く挙がった回答は、「収益性の向上」(82%)、「生産性の向上」(79%)、「コスト削減の実現」(69%)だった。加えて、「人材採用と人材育成」(59%)、「グローバル対応」(54%)も過半数に達した。
調査からは、こうした経営課題に対して、情報システム部門(以下、情シス)にも「単なる運用・保守部門」ではなく、経営課題の解決に直結する役割が求められていることがうかがえる。
約4割の企業は「IT戦略が経営と別」
IT戦略の位置付けについて尋ねたところ、「IT戦略が経営戦略内に位置付けられている」と回答した企業は54%だった。一方で、「IT戦略が経営戦略と個別に位置付けられている」企業は38%、「明示されたIT戦略がない」企業も8%存在した。
この差は、IT施策の進め方にも現れている。
自由記述を分析したところ、IT戦略を経営戦略内に位置付ける企業では、複数部門をまたぐ標準化や共通化、全社展開など「全社横断型」の施策が多く見られた。一方、IT戦略が経営戦略と分離されている企業では、特定業務や機能単位の施策が中心となる傾向が確認された。
つまり、ITを「経営課題の解決手段」として捉える企業ほど、全社横断型のIT施策へ発展しやすい構造が見えてきた。
「セキュリティ」と「生成AI」が重点投資先に
2026年度のIT予算については、「2025年度比111~125%」と回答した企業が31%で最多だった。全体として、IT投資を増額する企業が中心となっている。
特に、IT戦略を経営戦略内に位置付けている企業では、「111~125%」の増額を見込む企業が43%に達した。一方、IT戦略が経営戦略と個別に位置付けられている企業では、「106~110%」が最多で、「前年同額(100%)」も27%を占めた。
重点投資先として最も多かったのは、「セキュリティ関連」と「生成AI」で、ともに67%だった。次いで、「クラウド基盤・クラウドサービス」が56%となった。
ただし、投資領域にも違いがみられる。IT戦略を経営戦略内に位置付ける企業では、「セキュリティ関連」が69%だったのに対し、IT戦略を個別に位置付ける企業では50%にとどまった。一方、「クラウド基盤・クラウドサービス」は、IT戦略を個別に位置付ける企業の方が75%と高かった。
この結果からは、ITを経営戦略と一体で捉える企業ほど、「全社リスク管理」や「ガバナンス強化」を重視する傾向がある一方、IT戦略が分離されている企業では、インフラ刷新や個別最適型の投資が中心になりやすい可能性があることが分かった。
情シスの関心は「AI活用」と「セキュリティ」
IT責任者の関心テーマとして最も多かったのは、「AIを活用した業務プロセスの変革」(72%)だった。次いで、「サイバーセキュリティ対策の強化」(69%)、「新技術(生成AIなど)の探索・導入」(62%)、「経営戦略と整合したIT戦略の策定・推進」(54%)が続いた。
生成AIの活用が進む中、情シスには単なる技術導入だけではなく、「どの業務を変えるのか」「全社でどう統制するのか」といった役割も求められ始めている。今回の調査結果は、「IT戦略を経営と切り離して考える企業」と、「経営そのものとして扱う企業」とで、投資姿勢や施策の広がりに差が出始めていることを示したといえそうだ。
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