通信逼迫とシャドーITを防ぐローカルブレークアウト
LGWAN端末3800台で「Google Workspace」活用 高崎市はどうリスクを排除した?
組織でSaaS導入が進む中、既存ネットワークのままでは通信集中による遅延や、個人アカウント経由の情報漏えいリスクが生じる。3800台の端末での安全なSaaS利用を実現した高崎市のネットワーク刷新事例を解説する。
業務効率化やDX(デジタルトランスフォーメーション)を目的に、組織はクラウド型オフィススイート「Google Workspace」をはじめとするSaaS(Software as a Service)の導入に乗り出している。しかし、従来の閉域網や社内ネットワークからインターネット上のSaaSに従業員が一斉にアクセスすると、ゲートウェイに通信が集中し、業務に支障を来すほどの遅延を引き起こす懸念がある。
セキュリティ上の見落としがちな盲点もある。組織で許可したSaaSを利用する場合であっても、従業員が私用の個人アカウントでログインできてしまえば、機密情報の不正な持ち出しの温床となってしまうからだ。
群馬県高崎市も、約3800台のLGWAN(総合行政ネットワーク)接続系端末からGoogle Workspaceへのアクセス経路を整備するに当たり、同様のリスクを抱えていた。同市はどのようにして通信トラフィックの逼迫(ひっぱく)を防ぎつつ、安全なSaaSの利用条件を整備したのか。
SaaSの壁を越える「通信の振り分け」と「アカウント制御」
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ローカルブレークアウトの活用例
群馬県高崎市は、庁内DXと働き方改革を推進するため、ADC(アプリケーションデリバリーコントローラー)とファイアウォールの機能を集約した製品「A10 Thunder CFW」を採用した。2026年8月20日、A10ネットワークスが発表した。職員が利用する約3800台のLGWAN接続系端末からGoogle Workspaceへのローカルブレークアウトを実装し、安全なアクセスと業務効率化を図る。
高崎市では、市民サービスの利便性向上や庁内業務の効率化に向けてDXを進めている。その一環として、職員が利用する端末やオンプレミス型グループウェア、庁内ネットワークが更新時期を迎えたことを契機に、従来のαモデルからα'モデルへの移行と、グループウェアのGoogle Workspace刷新を決めた。
採用に当たっては、約3800台の端末からアクセスしても安定した通信を維持できる性能や、組織アカウントと個人アカウントを識別して個人利用を制御できる機能を評価した。クラウドサービスで頻繁に発生するドメイン変更への自動追従機能や管理作業を抑えられる運用性、自治体でのローカルブレークアウトのシステム構成における豊富な導入実績も決め手となった。
この構成では、LGWAN接続系ネットワークにA10 Thunder CFWを配置し、許可されたGoogle Workspaceの通信をインターネットに直接振り分けるローカルブレークアウトを構築した(図)。SSL/TLS可視化機能を活用して個人アカウントの利用を制限する他、ドメイン変更への自動追従によって管理者の運用負担を軽減している。2026年8月時点では「Gmail」や「Google Meet」「Google Chat」「Googleドライブ」の他、生成AI「Gemini」やAIリサーチツール「Gemini Notebook」、カレンダー拡張機能「rakumo」などを活用している。
本稼働から約半年たった時点では致命的な停止はなく、安定した運用を継続している。電話中心だった職員間のコミュニケーションがチャットに移行して情報共有が円滑になった他、メール容量不足の解消やファイル検索性の向上といった効果が表れている。高崎市総務部情報管理課 情報セキュリティ担当主任主事の松田和也氏は「導入から半年ほど経過したが致命的な停止は一度もない。管理面でも特段の作業は不要で、負担のない安定したネットワーク環境が整備できた」と話す。同デジタル推進課 主任主事の矢端 仁氏は「コミュニケーション手段が電話中心からチャットへと切り替わり、効率化が進んでいる。ローカルブレークアウトが円滑に機能しているからこそできたシステムだ」とコメントする。
今後は、現場でGoogle Workspaceを効果的に活用できる人材の育成を進め、全庁的なDXを加速させる方針だ。クラウドサービスで扱う情報の範囲や生成AIへの入力管理などセキュリティルールの検討を継続し、生成AI向けセキュリティ製品「A10 AI Firewall」などのツールの活用も視野に入れながら利活用を深める考えだ。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHUB.News」に掲載された「高崎市、LGWAN端末3800台でGoogle Workspace活用 安全と効率化両立」(2026年8月21日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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