「ツールを入れただけDX」から脱却する
DX推進企業の78.6%が「業務は減っていない」――現場を悩ませる“3つの壁”とは
アイルは、バックオフィス業務のDXに関する調査結果を発表した。DXを実施・推進する企業の回答者の78.6%が「DX化しているのに業務は減っていない」と回答。課題が浮かび上がった。
業務システムを導入し、ペーパーレス化やデジタル化を進めた。それでも現場から「仕事が楽にならない」「むしろ入力する場所が増えた」と言われる――。DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する企業では、このような問題が起きているようだ。
アイルは2026年8月27日、バックオフィス業務のDXに関する調査結果を発表した。販売管理や在庫管理、受発注管理、請求管理、営業事務などに携わる全国の就業者587人を対象に、2026年6月にインターネット調査を実施した。
調査によると、勤務先について「十分DX化されている」「一部DX化されている」「DX化を進めている途中」と回答した人は合わせて64.6%だった。一方、DXを実施・推進している企業の回答者379人のうち、78.6%が「DX化しているのに業務は減っていない」と答えた。なぜ、システムを導入しても仕事は減らないのか。調査結果からは、情報システム部門(情シス)が見直すべき「3つの壁」が見えてくる。
「DX化したのに業務が減らない」理由とは?
壁その1.業務システムの外に表計算ソフトや手作業が残る
第1の壁は、業務の一部だけをデジタル化し、その周囲に従来の作業が残る「部分最適」だ。調査では、DX推進後も残っている業務を尋ねた。その結果、「電話対応」が55.1%で最も多かった。「表計算ソフトによる作業」は52.5%、「手入力」は49.9%、「紙管理」は48.5%だった。「手作業チェック」(31.4%)、「FAX対応」(30.6%)、「在庫照合」(29.6%)も約3割に上った。
つまり、新しい業務システムを導入しても、その前後で「Microsoft Excel」(以下、Excel)などの表計算ソフトにデータを書き出したり、別のシステムへ手入力したり、電話や紙で補完したりする作業が残れば、業務プロセス全体としては効率化しにくい。
実際、DXが進まない理由を尋ねた結果、「Office・Googleソフトでの管理」が27.7%で同率首位だった。「部分導入」も22.1%を占めた。
この結果からは、情シスにとって重要なのは、「システムを導入した業務」を数えることではなく、そのシステムの前後にどのような手作業が残っているかを確認することにあることが分かる。
例えば、受注情報をシステムで管理できるようにしても、取引先からの注文を電話で受け、担当者がExcelに転記し、さらに販売管理システムへ入力しているのであれば、デジタル化によって入力画面が1つ増えただけになりかねない。
壁2.システムを変えても「現場のやり方」が変わらない
第2の壁は、ITを導入しても現場の業務プロセスそのものが変わらないことだ。「DXが進まない理由」を尋ねた質問では、「現場運用が変わらない」が「Office・Googleソフトでの管理」と並び最多だった。
新しいシステムを導入しても、従来の確認手順や承認フロー、転記作業をそのまま残せば、システムと人手による作業が重複する可能性がある。こうした人手による作業が残る中、調査では入力ミスなども発生している。
調査では、回答者が過去に経験したミスを尋ねた。その結果、「入力ミス」が1位で54.2%。続いて、「在庫ズレ」が33.9%、「発注ミス」が30.3%、「請求ミス」は25.6%、「納期遅延」の25.4%が並んだ。
ミスの原因として最も多かったのは「確認不足」の61.4%で、「手入力」が48.8%、「業務量過多」が32.5%と続いた。
こうした結果は、「人が注意すれば防げる」と考えるだけでは確実な解決にならない。手入力や目視確認そのものを減らせる業務設計になっているかどうかを確認する必要がある。
ミスによる影響についても回答者に尋ねた。その結果、「再作業」(43.7%)、「残業・時間外対応の増加」(33.1%)、「売上損失」(30.1%)、「取引先からの信頼低下」(28.5%)、「顧客満足度の低下」(25.2%)が並んだ。
壁3.システム同士がつながらず、結局「人」が橋渡しする
第3の壁が、システム間の連携不足だ。調査では、DXが進まない理由として「システム連携不足」(26.1%)が3位に挙がった。例えば、EC(電子商取引)サイトのシステム、販売管理システム、在庫管理システム、会計システムをそれぞれ導入していても、データが自動的に連携されなければ、担当者がCSVファイルを出力して加工したり、別システムへ転記したりする必要が生じる。
システムは増えたにもかかわらず、その間をつなぐ作業を人間が担っている状態となる。
調査で、DX推進後も「表計算ソフトによる作業」や「手入力」が約半数残っているという結果になった。調査では「システム連携不足」もDXが進まない理由として挙がっており、システム間の分断が手作業を残す一因になっている可能性がある。
一方現場側も、この問題を認識している可能性がある。「現場が求める次のDX」を尋ねたところ、「ミス削減」(32.7%)、「システム連携」(30.3%)、「業務自動化」(27.9%)が並んだ。
AI導入の前に「人がデータを運ぶ業務」を探す
「AIに任せたい業務」を尋ねたところ、「データ入力」が42.2%で最も多く、「照合作業」が38.2%、「集計」が33.7%、「レポート作成」が32.2%だった。いずれも、大量のデータを入力、確認、加工する定型業務だ。
ただし、これらを単純にAIへ置き換えればDXが進むとは限らない。複数のシステムが分断されたままなら、AIを導入してもシステム間で情報を受け渡す別の仕組みが必要になる。
そこでまず確認したいのは、「人間がシステムとシステムの間でデータを運んでいる業務」がどこに存在するかだ。
CSVファイルのダウンロードとアップロード、表計算ソフトへの転記、メール添付ファイルからの入力、複数システム間での照合――。こうした作業を洗い出し、API連携やワークフロー自動化、RPA、AIなど、業務に適した手段で減らしていくことが重要になる。
アイルの青木健太郎氏(システムソリューション事業部 部長)は、システム化はあくまで業務改革の手段であり、現場の負荷削減や業務効率化につなげるには、長期的な視点で業務プロセス全体を見直す必要があるとの見方を示している。
本稿は、アイルが2026年8月27日に公開したDX推進企業の約8割が「DX化しても業務は減っていない」と回答。DX化後も電話・表計算ソフトなどによるアナログ作業が残り、半数以上が入力ミスを経験を基に作成しました。
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