「Excelで代用」の落とし穴
「1つのIDを複数人で共有」はなぜ減らない? 業務ツール運用のゆがみとリスク
クラウドサービスを導入している企業の多くが、ライセンス費用を回避するためにID共有や代理入力を余儀なくされている。業務効率化や内部統制を阻害する「隠れたコスト」の正体とは。
企業の業務システムはクラウドサービスへの移行が進んでおり、利用者数に応じたアカウント単位の課金(以下、ID課金)が広く普及している。初期費用を抑えて導入できる利点がある一方で、運用現場においては、費用負担を避けるための利用制限が業務効率化の阻害要因となっている。
システムベンダーのNTTデータビジネスブレインズは2026年8月21日から22日にかけて、全国の業務・管理系部門のリーダーおよび管理職221人を対象に、業務システムの費用に関する実態調査を実施した。本調査では、多くの企業が費用を理由に本来想定されるシステム運用を制限している状況が明らかになった。
約9割が「非正規の運用」を経験
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本調査の結果から、システム費用に関する選定基準と、運用現場の課題が明確に示された。業務システムの導入可否を判断する際、買い手側が最も重視する指標は「初期費用の大きさ」(26.6%)や「年間の総額が予算上限に収まるかどうか」(24.0%)だった。「1人当たりの月額単価」を最重視する回答は8.4%にとどまり、買い手側は単価ではなく総額を基準に判断していることが分かる。
しかし、導入後に「想定していなかった費用」が発生した経験を持つ割合は87.0%に達した。その内訳として、「既存システムとの連携開発費」が39.0%、「帳票や入力画面のカスタマイズ費用」が37.0%、「利用人数の増加に伴う追加ライセンス費用」が29.9%となっている。これらは自社の要件に適合させるための開発費や、利用拡大に伴う変動費であり、事前の算出が難しい性質を持つ。買い手側が総保有コスト(TCO)で評価しようとする一方で、初期の見積もり段階では運用開始後の追加費用が見えにくいという構造的課題が存在する。
ID課金は、システムの運用方法に直接的な影響を与えている。費用を理由に「使うべき人に使わせていない業務がある」と回答した割合は60.4%だった。ID課金を理由に、本来とは異なる運用を実施した経験を持つ割合は88.3%に上る。具体的には、「1つのIDを複数人で共有した」(39.6%)、「承認者だけがIDを持ち、申請は代理で入力した」(32.5%)、「IDを持たない人の分は紙、メール、『Microsoft Excel』で運用した」(31.2%)といった回答が寄せられた。
これらの運用は、アクセスログの精度を低下させ、内部統制の観点でリスクとなるだけでなく、デジタル化による業務効率化という本来の目的と逆行している。取引先など社外との連携においても、58.4%の企業が費用を理由にシステムでのやりとりを制限、あるいは紙やメールなどで代替対応している。対象範囲を広げるほどライセンス費用が増加する構成が、サプライチェーン全体でのデータ連携を阻害する要因となっている。
実証検証の現場からも、同様の課題が報告されている。グループ全体で約2000人の従業員を抱える製造業の企業では、既存の有給申請ワークフローはユーザー数無制限で導入しているものの使い勝手に課題を抱えており、新しく導入したい申請ワークフローについては対象を一部の部門に限定し、安価に構築しようと検討している。別の卸売業では、既存のPOSシステムにデータ管理を組み込んでいるため、業務機能を外部システムに切り出すためのAPI連携開発に多額の費用が見込まれ、システム改修の意思決定が数年単位で停滞している。これらの事例は、システム拡張における費用構造が、技術的な連携の足かせとなっていることを示している。
システム導入が見送られる最大の理由は、「予算が確保できなかった」(14.4%)ではなく、「費用対効果を数値で示せなかった」(30.1%)ことだった。これに対し、導入の最終的な決め手となった理由の1位は「現場から使いたいという声が上がった」(23.4%)だ。現場の要求と、投資対効果の明確な説明がシステム導入の成否を分けている。
このような課題に対処するアプローチとして、利用者数に依存しないシステム構成への転換や、社内での内製化が挙げられる。例えばアカウント単位ではなく利用量に応じた従量課金制を採用することで、社内全体や外部の取引先へ利用範囲を拡大した際に、人数に比例して費用が増加する構造を回避できる可能性がある。ノーコード開発ツールを取り入れれば、外部委託によるカスタマイズ費用や連携開発費を内製化によって抑えつつ、プログラミングの専門知識を持たない社内の担当者が、業務データベースや入力画面を構成できるようになる。
企業システムの導入においては、初期段階での試験導入から、適用範囲を段階的に拡大していく手法が一般的だ。しかし、拡張のたびに多額の追加費用が発生する構成では、部分最適にとどまる危険性がある。長期的な費用対効果を最大化するためには、全社規模での利用や外部連携を見据え、従量課金やノーコード開発といった拡張性の高いシステムを選定することが、今後のインフラ構築における重要な判断軸となる。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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