LayerXがコスト実態調査
月間AIコストは平均274万円 管理のために企業が把握したい情報の1位は?
LayerXは、企業のAI利用やコスト管理に関する実態調査の結果を公表した。AI利用コストを直近の経営課題と捉える回答は73.3%に上った。AI利用コストを管理する上で今後企業が握っておきたい情報のトップは?
企業のAI活用は、「まず使ってみる」段階から、利用実態や投資対効果を管理する段階へ移りつつある。特にAIエージェントの普及により、トークン消費やAPI利用量が増えやすくなり、AI利用コストの把握が新たな経営課題になっている。
LayerXは、製造業、サービス業、情報通信業など、多様な業界の企業でAIの利用コストを管理・把握している400人を対象に「企業のAI利用・コスト管理に関する実態調査 2026」を実施した。調査期間は2026年6月12~13日。
調査からは、AI利用コストの増加や利用実態の不透明さが課題になる中、企業が今後整備したいAI利用コストの管理項目が示された。
AIコスト月平均274万円 企業がこれから把握したい情報は?
調査によると、AI利用コストが勤務先の経営課題になると思うか尋ねたところ、「すでに経営課題」と回答した割合は19.0%だった。「1年以内に経営課題になる」は54.3%で、合計すると73.3%がAI利用コストを直近の重要な経営課題として捉えていた。
背景には、AIエージェントの利用拡大がある。AIエージェントは、従来のチャット型AIと比べて、複数回の推論や外部ツールの呼び出しを伴うことが多い。そのため、トークンの消費量やAPI利用量が増えやすい。利用が広がるほど、AIエージェントを導入するだけでなく、どの業務で、どれだけの費用が発生しているのかを把握する必要性は高まる。
AI利用コストの変化については、「大幅に増加している」が20.0%、「やや増加している」が46.5%だった。合わせて66.5%が、前年と比べてAI利用コストの増加を実感していることが分かった。
コーディングエージェントや業務エージェントの利用に伴うコスト変化については、「大幅に増加している」が16.5%、「やや増加している」が49.0%だった。合計65.5%が、AIエージェントの利用によってコストが増加していると回答した。
月間AI利用コストは平均約274万円
会社全体における月間のAI利用コストを尋ねたところ、「50万円以上~100万円未満」が26.3%、「100万円以上~500万円未満」が20.5%、「500万円以上~1000万円未満」が8.8%、「1000万円以上」が9.3%だった。
これらを合わせると、64.8%の企業で月間50万円以上のAI利用コストが発生している。平均値は約274万円だった。
AI利用が一部の検証やユーザーの個人利用にとどまっていた段階では、AI関連費用は小さな支出として扱うことができた。だが、開発、営業、管理部門などで生成AIやAIエージェントの利用が広がれば、ライセンス費用、API利用料、トークン消費量は積み上がる。AIコストは、もはや一部門だけで管理する費用ではなく、全社で把握すべき経営資源になりつつある。
最大の課題は「利用実態が見えにくい」こと
一方で、多くの企業はAI利用コストの把握に課題を感じていることが調査から明らかになった。具体的には、「非常に課題を感じている」が19.5%、「やや課題を感じている」が63.3%だった。合計82.8%がAI利用コストの把握に課題を感じているということだ。
具体的な課題として最も多かったのは、「セキュリティ、情報漏えいリスクへの懸念」で30.5%。次いで「従業員による個人立替などの実態把握」が25.1%、「請求額と利用内訳が結びつかない」「AI利用の成果やROIを測りにくい」「利用額を把握しにくい」がそれぞれ24.2%と続いた。
これらの結果から浮かび上がるのは、AI利用コストの問題が単なる金額の増加にとどまらないという点だ。従業員が個人でAIサービスを契約し、後から経費精算するケースが増えれば、企業は利用実態を把握しにくくなる。請求額だけを見ても、誰が、どのAIサービスを、どの業務で、どれだけ使ったのかまでは分からない。
この「誰が、何に、どれだけ使ったか」が見えにくい状態は、コスト管理だけでなく、セキュリティやガバナンスの課題にもつながる。業務データや機密情報が、管理されていないAIサービスに入力されていれば、情報漏えいリスクを高める恐れがある。AI利用の可視化は、費用削減のためだけでなく、リスク管理の観点からも重要になる。
今後整備したい項目のトップは「AI利用額と成果、ROIをひも付けたデータ」
現在把握できている項目としては、「部署、チーム別のAI利用額」が32.7%で最も多く、「プロジェクト、案件別のAI利用額」が28.8%で続いた。これらは実際の利用額に関する情報だ。一方、「利用申請、承認フローの状況」も27.7%に上っており、金額そのものだけでなく、誰がどのAIツールを申請し、承認されているのかといった利用管理の情報を把握している企業もあることが分かった。
現状では、部署やチーム、プロジェクトといった大枠での把握にとどまる企業が多いことがうかがえる。これに対して、今後新たに管理・整備したい項目を尋ねたところ、最多は「AI利用額と成果、ROIをひも付けたデータ」で21.8%だった。次いで「プロジェクト、案件別のAI利用額」が21.5%、「利用者、アカウント別のAI利用額」が19.8%だった。
企業の関心は、AI利用額を把握するだけでなく、その支出がどのような成果につながったのかを確認する方向へシフトしつつある。例えば、AIによって削減できた作業時間、短縮できた開発期間、改善した問い合わせ対応品質、増えた商談数などを利用額と結びつけて把握できれば、投資を続けるべき領域と見直すべき領域を判断しやすくなる。
AIは「使う」から「成果を説明する」段階へ
生成AIの導入初期には、社内利用を広げること自体が重視されやすかった。だが、AIエージェントの普及によって利用量が増え、コストが積み上がるようになると、企業はAIを人件費や広告費と同じように、投資対効果の観点から管理する必要がある。
そのためには、利用者、用途、トークン消費量、請求額、成果を結びつけて可視化する仕組みが欠かせない。どの部門でAI利用が進んでいるのか。どのプロジェクトで費用が増えているのか。どのAIサービスが業務成果に結びついているのか。こうした情報を把握できれば、効果の高い領域へ投資を集中し、不要な支出やリスクの高い利用を見直しやすくなる。
AI活用は、もはや「導入したかどうか」を競う段階ではない。今後は、AIをどれだけ使っているかだけでなく、どれだけのコストで、どのような成果を生んでいるかを説明できるかが問われる。AI利用コストの管理は、情シス部門や経理部門だけの課題ではなく、AIを経営資源として活用するための全社的なガバナンス課題になっていく。
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