「AI内製化」に挫折する企業が9割
AIプロジェクトが“目的不明”で凍結する理由 問題は「ツール選定」ではない?
AIプロジェクトの9割以上で停滞や頓挫が発生し、投資縮小や現場の抵抗感につながっている。従来のシステム導入とは異なり、企画立案自体が難航する背景には何があるのか。
企業におけるAI活用が急速に進む中、AIプロジェクトの内製化を目指す現場では深刻な構造的課題が生じている。エンジニア向け人材サービスを手掛けるTWOSTONE&Sonsは、企業のAI内製化における「限界」の実態調査結果を公開した。ここでのAI内製化とは、社内にAI活用やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の専任担当や専門部門を設置し、自社主導でAIプロジェクトの企画、開発、運用、全社展開を進める取り組みを指す。
調査によれば、AI活用を進める企業の経営層や推進責任者の大半が、自社の取り組み状況に対して競合他社や業界全体の動きと比較し、強い危機感を抱いていることが明らかになった。社内主導で進められたAIプロジェクトの多くが期待した成果を上げられず、途中で行き詰まる事態が発生している。プロジェクト全体の成否を分けているのは、技術やツールの選定以前の上流工程における企画および設計能力の不足である傾向が強い。
調査結果から見えてきた、AIプロジェクトが頓挫する根本的な原因と現場が直面している限界について解説する。
社内主導のプロジェクトを阻む「意外な壁」
併せて読みたいお薦め記事
AIプロジェクトが停滞する理由
本調査は2026年8月10日から8月12日にかけて実施された。対象は、従業員300人以上の企業で全社的にAIならびにDX推進に取り組む経営層およびAIプロジェクト/DX推進責任者111人だ。
回答企業のAI活用の進捗(しんちょく)状況を見ると、「全社的に活用・運用している段階」が24.3%、「複数部署・業務に展開している段階」が22.5%と、一定の広がりを見せている。しかし同時に、自社のAI活用状況に対して「危機感を感じる」と回答した割合は94.6%(「かなりある」35.1%、「ややある」59.5%)に上る。危機感の具体的な内容は、「競合他社にAI活用で後れを取ること」が69.5%、「業界全体の変化に自社が適合できないこと」が62.9%、「AI人材、デジタル人材を確保できないこと」が61.9%だった。
こうした危機感の背景には、社内主導のプロジェクトにおける高い失敗率がある。社内主導で進めたAIプロジェクトが期待した成果や規模に至らず「停滞、頓挫」した経験について、実に91.9%が「ある」と回答した(「何度もある」31.5%、「数回ある」55.9%、「一度だけある」4.5%)。
プロジェクトが足踏みしやすい段階としては、「AI活用の目的、テーマを決める段階」が57.7%で最も高い。次いで「戦略、構想を具体的な計画に落とし込む段階」「PoC(概念実証)、実証実験から本格導入に移行する段階」「AIの実装、開発を進める段階」がそれぞれ49.5%で並んでいる。従来のITシステム導入のように明確な要件が存在する前提のアプローチとは異なり、AI活用では「何のためにAIツールを使うのか」という企画立案自体が難航していることがうかがえる。
取り組みを始める前は十分に認識していなかったものの、実際には重要だったと感じた要素としても「AI活用の戦略、構想の設計」が58.6%、「実装、開発を担う人材の確保」が45.9%、「戦略、構想を実装計画に落とし込むこと」が43.2%、「AIを活用する経営課題・業務課題の特定」が40.5%を占めた。対照的に「AIに関する技術、ツールの選定」を挙げた割合は37.8%にとどまっており、導入企業が技術的な仕組みの構築よりも、事業目的とAIを結び付ける上流の設計工程に苦慮している実態が明確になっている。
プロジェクトが停滞、頓挫した背景として不足していた要素について問うと、「経営課題、業務課題をAI活用につなげる力」が58.8%、「AIの実装、開発を担える人材」が50.0%、「戦略、構想を実装に落とし込む設計力」と「プロジェクトを推進、管理するPM(プロジェクトマネジャー)/PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)人材」がそれぞれ49.0%という結果になった。これによって、現場部門でのAI活用に向けた不信感や抵抗感が高まり(53.9%)、本格導入や全社展開の時期が遅れ(55.9%)、結果としてプロジェクトや投資が縮小、凍結される(56.9%)という悪循環が発生している。推進責任者や担当者の業務負担が増加し(45.1%)、投じた費用や工数が十分な成果につながらなかった(41.2%)という声もあり、事業への直接的な影響は小さくない。
自社の人材や体制だけで対応することが難しい領域については、「AI戦略、活用構想の設計」が58.6%、「AIツール/技術の選定」が54.1%、「AIの実装、開発」が47.7%、「AIツールを活用する経営課題、業務課題の特定」が45.0%と続く。これらの領域を自社のみで完結させるのが困難な理由として「経営、事業、業務とAI技術の両方を理解できる人材がいないから」が53.6%、「複数部門を横断して推進、調整する体制がないから」が45.5%、「AI技術や市場環境の変化が速く、社内だけでは追随しにくいから」が43.6%に上る。技術的な専門知識だけでなく、ビジネス課題を解決するための全体アーキテクチャを描き、組織横断的に実行する推進人材の欠如が、内製化の限界として立ちふさがっている。
AI内製化の壁を突破するためには、単なる外部ツールの導入や特定部門でのPoCの繰り返しから脱却し、経営戦略に基づくAI活用構想の立案と、それを具体的な実装へと落とし込む設計力が求められる。企業は自社に不足している機能を客観的に把握し、上流工程から一貫して設計できる体制を構築するため、必要に応じて外部の専門的な知見を組み合わせることが、今後のAI活用を左右する重要な判断軸となる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
TechTarget ニュースプラス
国内のIT業界ニュースを迅速に報道します。企業動向から導入事例、市場トレンドまで幅広く取り上げ、実務に直結する情報をタイムリーに提供する連載です。
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
比較資料
[セコムトラストシステムズ株式会社] 「自社に合うEDR」はどれか分かる? 比較・検討時の見極めポイントを解説 -
製品資料
[アルプス システム インテグレーション株式会社] まだ社内で眠らせたまま? AI活用の糧となる「データ資産」を有効利用するには -
市場調査・トレンド
[AvePoint Japan株式会社] “SCS評価制度”対応の第一歩、自社環境と要求事項とのギャップを把握する方法 -
製品資料
[株式会社BREXA Technology] 情報整理の自動化でインシデントの初動対応を効率化、AIエージェント活用のコツ -
製品レビュー
[ヴィーム・ソフトウェア株式会社] SCS評価制度を導入するだけで十分? 組織の防御力を高める活用方法とは
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
パッチなしで「今すぐサーバを落とせ」 Kiteworks異例警告の波紋
-
2
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
3
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
4
Claude Codeでは「エージェントを作るな、スキルを作れ」 Anthropicが示すAI構築術
-
5
「WSUS」終了の時限爆弾 “本命”移行先ツールとMicrosoft提唱の新管理手法
-
6
VMware離れの決め手は“機能”以外だった 情シス109人が選んだ新基準と死角は
-
7
デンソークリエイト、Excelからの移行も簡単に行えるプロジェクト管理ツールを発表
-
8
「GPUが待ちぼうけ」の悪夢を防げ AIストレージベンダー7選
-
9
いまさら聞けない「ゼロクライアント」と「シンクライアント」の違いを比較
-
10
攻撃で“大慌て”になる企業に欠けていた「サイバーレジリエンス」の視点
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
「Google Workspace」活用事例34選、先進の生成AIによる組織変革の全貌
-
2
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
3
Linuxのスキルを証明する“激推し”の認定資格はこれだ
-
4
バックアップは“取っているから大丈夫”なのか? ランサムウェア時代の備え方
-
5
ネットワーク遅延の原因、「パケットロス」の基礎知識と効果的な解決策
-
6
月1000枚の紙を削減 9年動けなかった組織が、業務改革のその先に得たもの
-
7
「改正物流効率化法対策」徹底解説 総物流費を抑制するサプライチェーン戦略
-
8
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
9
5分で分かる Microsoft 365のデータ損失に備えるためのバックアップの仕組み
-
10
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー