フィッシング耐性と利便性を両立する条件
認証強化が招く「利便性低下」のわな 光世証券に学ぶパスキー導入の判断基準
巧妙化するサイバー攻撃への対策として多要素認証の導入が推奨される中、過度なセキュリティ強化は利用者の利便性を損なうリスクをはらむ。安全性と使いやすさをどう両立すべきか。光世証券の事例から探る。
金融業界において、証券会社を狙ったフィッシング攻撃や不正アクセスが活発化している。顧客資産を保護するため、金融庁や日本証券業協会も「フィッシング耐性のある多要素認証」の導入を推奨するなど、金融機関にはより高度な認証対策が求められている状況だ。
しかし、顧客向けサービスの認証要件を厳格化し過ぎると、エンドユーザーに複雑なパスワードの管理や入力の手間を強いることになり、結果としてサービスの利便性が大きく損なわれるジレンマが生じる。セキュリティ要件のために自社でオンプレミス型の認証サーバを維持・運用しようとすれば、情報システム部門にとって重い運用負荷になる。
こうした「セキュリティの強化」と「利便性の確保」という相反する課題に直面していたのが、オンライン取引サイトを展開する光世証券だ。同社はどのようにして、複雑なパスワード入力を排除しつつ、フィッシング耐性のある強固な認証体制を短期間で構築したのか。
認証強化のジレンマを打ち破る選定基準
光世証券は、オンライン取引サイトにパスキー認証システム「FIDO・パスキー認証基盤:Capy生体認証ソリューション」を採用した。2026年9月24日、導入を支援したTISIが発表した。フィッシング攻撃や不正アクセス対策を強化するとともに、顧客が複雑なパスワードを入力する手間を省いて利便性を高めた。クラウド型サービスの活用によって、認証システムの運用負荷軽減も見込む。
光世証券は大阪府大阪市中央区に本社を置く証券会社で、ブローカー業務やディーリング業務、アンダーライティング業務、セリング業務などを手掛けている。近年、金融業界では証券会社を狙ったフィッシング攻撃や不正アクセス被害が活発化しており、顧客資産の保護や企業の信頼性維持に向けて高度な認証対策が求められていた。金融庁と日本証券業協会も、フィッシング耐性のある多要素認証の導入を推奨している。一方、認証を強化し過ぎると利用者の利便性が損なわれる可能性があるため、安全性と使いやすさの両立、短期間での導入が課題となっていた。
こうした課題に対し、光世証券は、Capyと連携するTISIが金融業界向け認証支援で培った知見に加え、短期間での導入を実現できる提案力を評価し、FIDO・パスキー認証基盤:Capy生体認証ソリューションの採用を決めた。同サービスは国際標準規格FIDOに準拠したパスキー認証サービスで、スマートフォンやPCの顔認証、指紋認証、端末PINなどを使ったパスワードレス認証を実現するクラウドサービスだ。
導入プロジェクトでは、TISIがプロジェクト管理、技術検証、問い合わせ対応を担った。2026年3月にPoC(概念実証)とリリースに向けた構築を開始し、通常は約6カ月を要する認証システム導入において、パスキー認証部分を3カ月で構築して同年6月に導入を完了した。その後、光世証券での準備期間を経て、同年9月にオンライン取引サイトでサービス提供を開始した。
新認証システムによって、パスワードの使い回しやフィッシング詐欺のリスクを低減し、不正ログイン対策を強化した。利用者は端末の生体認証機能や端末PINなどを使って、複雑なパスワードを入力せずにログインできる。オンライン取引における安全性と利便性の両立に加え、クラウド型認証サービスの採用によって、オンプレミス型認証サーバの維持・運用に伴う負荷の軽減も見込む。
TISIは今後、今回の事例で得た知見を基に、証券会社をはじめとする金融機関に向け、パスキー認証を活用した認証システムの展開を進める。電話認証も含む複数の認証方式を組み合わせ、多層的な認証セキュリティインフラの提供を推進する方針だ。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHUB.News」に掲載された「光世証券、パスキー認証基盤の導入でオンライン取引のセキュリティと利便性を両立」(2026年9月25日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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