標準機能に業務プロセスを合わせる改革
パーソルHDが「SAP」で会計システム刷新 巨大グループの混乱をどう防いだ?
事業拡大で乱立したパーソルHDのグループ各社の会計システム。「SAP S/4HANA Cloud Public Edition」に各システムを集約して手作業のデータ連携をなくし、業務標準化を進めた道のりを紹介する。
国内外で多様な事業を展開するパーソルグループ。事業拡大に伴い、同社の管理会計や財務会計を支える共通システムは大きな刷新がなく、グループ各社のシステム連携の多くを手作業に頼る状態が続いていた。この状態を放置すれば、経理担当者の作業負担を増大させるだけではなく、グループ全体の経営状況の可視化を遅らせ、意思決定やガバナンス上の大きなボトルネックになる。
この課題を根本から解消するために、パーソルホールディングスは「SAP S/4HANA Cloud Public Edition」を中核として、グループ30社の会計システムを一元化する大規模な刷新プロジェクトを決断した。単なるシステムの入れ替えではなく、標準機能に業務プロセスを合わせる「Fit to Standard」を徹底し、グループ全体の業務標準化と組織変革を目指した。多様な既存システムと独自の業務プロセスを持つ30社をいかにしてまとめ上げたのか。
独自のプロセスを見直して「標準」に集約
パーソルホールディングスは、グループ30社の会計システムを、SAP S/4HANA Cloud Public Editionを中心とする新しい会計システムに刷新し、国内の主要会社で本格稼働させた。30社の仕訳データを、一括で取り込めるようになった。2026年10月15日、構築を支援したNTTデータ グローバルソリューションズ(NTTデータGSL)が発表した。
パーソルグループは、人材派遣、転職支援、ITアウトソーシング、設計開発など、多様な事業を国内外で展開する。事業の拡大と新たな挑戦が進む中、管理会計、社内稟議、財務会計を支える共通システムは、長年大きな刷新がなく、システム間の連携の多くを、手作業に頼っていた。パーソルホールディングスは、グループ経営の高度化を支える体制づくりを目的に、会計システムの刷新を、2023年に決めた。予実管理と財務データ連携の効率化に加え、将来の業務の自動化やAI機能の活用も視野に入れた。単なるシステム更改ではなく、標準機能に業務を合わせるFit to Standardの考え方で、グループ全体の業務標準化と組織変革を進めるプロジェクトに位置付けた。
新しい会計システムは、SAP S/4HANA Cloud Public Editionに、財務決算を支援する「BlackLine」、システム連携の「SAP Integration Suite」を組み合わせた。NTTデータGSLの支援範囲として示された導入社数は、SAP S/4HANA Cloud Public Editionが28社、BlackLineが13社、SAP Integration Suiteが30社だ。SAP S/4HANA Cloud Public Editionについては、2024年度(2024年4月~2025年3月)に2社への先行導入を済ませた。
課題は、グループ各社が使う多様な基幹システムとの連携と、各社独自の業務プロセスの見直しだった。財務部門、システム部門、各事業会社、業務委託先を含む体制で、対話を重ねながら進め、財務と管理会計の観点から必要なデータを整理して、各社で異なるデータ連携の流れを統一した。
成果は4つある。1つ目は、30社の仕訳データを一括で取り込める環境を整備し、経理担当者の作業負荷を軽減したことだ。2つ目は、月間数十万件に上る元帳データの検索性能が上がり、必要な情報へ素早くアクセスできるようになった。3つ目は、グループ共通のプロセスで、業務の透明性が高まり、ガバナンスの強化と内部統制の実効性の向上につながった。4つ目は、業務改革を通じて、従来のやり方にとらわれない改善の取り組みが、現場に広がったことだ。
パーソルホールディングスは、今回の刷新を、業務標準化、組織最適化、決算早期化など、これまで構想にとどまっていた変革を実行するための共通システムの構築であり、グループ全体の変革を加速させる重要な取り組みだと評価する。
今後は、整備した会計システムを使い、決算業務と債権消込業務の自動化とAI活用を強める。会計データを活用した異常値の検知、仕訳の提案、増減の分析、自動消込率の向上など、AIとの協働による財務業務の高度化にも取り組む計画だ。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHUB.News」に掲載された「パーソルホールディングス、グループ30社の会計基盤をSAPで刷新」(2026年10月16日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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