激動期を乗り切るCISOの行動指針
PHP2Shellは序章に過ぎない NVIDIA幹部が警告する「脆弱性の波」
世界を揺るがした「PHP2Shell」脆弱性は、AI時代がもたらす激動の序章に過ぎない。NVIDIAのセキュリティ幹部は、AIによって数十年放置された脆弱性が次々と暴かれる「巨大な波」が到来すると警告する。
10月に世界中の企業を混乱に陥れたPHPの脆弱(ぜいじゃく)性は、サイバーセキュリティにおける混とんとした時代の幕開けに過ぎない――。NVIDIAで長年CISO(最高情報セキュリティ責任者)を務め、現在はサイバーセキュリティポリシー責任者のマーク・ウェザーフォード(Mark Weatherford)氏は警告した。事態は最終的には好転するものの、それは前例のない混乱期を経てからだという。
ウェザーフォード氏は「PHPの件は、かけられた覆いを少しめくったようなものだ。今後数カ月でその覆いは完全にはぎ取られ、PHPのようなインシデントが立て続けに起きることになるだろう」と、コロラド州オーロラで開催されたISC2 Security Congress 2026のセッションで語った。
PHP Foundationは10月21日、PHPの2件の重大な脆弱性に対するパッチを公開した。PHPはWebサイトの約70%で使用されているオープンソースのWebスクリプト言語だ。研究者グループがOpenAIの「GPT-5.6 Sol」を使用して発見した「PHP2Shell」脆弱性は、攻撃者が悪用すればWebサーバを掌握される恐れがあると警告されていた。多くの専門家は、今後数カ月で同様に深刻なAI支援による脆弱性公開の波が押し寄せると予想している。セキュリティチームはAIを利用する攻撃者に悪用される前に、システムにパッチを適用しようと奔走することになるだろう。
「私たちは、10年、15年、あるいは20年前から存在していた脆弱性をAIが発見するのを目の当たりにしている。世界中のコードベース全体が書き直されるまで、今後も続くだろう」(ウェザーフォード氏)
AI時代を乗り切るための「CISO情報交換ネットワーク」の構築
CISOたちがPHP2Shell規模の脆弱性公開の波に身構える中、ウェザーフォード氏はセキュリティリーダーとしてAI時代をかじ取りするための現実的なアドバイスを提供した。比較的取り組みやすい策として同氏が挙げるのは、同業者同士のインフォーマルなネットワーク、すなわちCISO情報交換ネットワーク(CISO exchange network)を築くことだ。
ウェザーフォード氏の場合、GoogleやMicrosoft、OpenAI、Anthropicなど、NVIDIAの主要顧客やパートナー企業のCISOたちに連絡を取ることを意味する。
「私は彼らに『お互いが知っている情報を共有し合おう』と持ちかけました。この取り組みは信じられないほど素晴らしい結果をもたらしています」(ウェザーフォード氏)
このグループは半年に1回電話で話しているが、真の価値は形式ばらない突発的な会話にあるとウェザーフォード氏は言う。
「『さっきPHPの件を見たんだけど、何か情報はある?』『この脅威アクターについて聞いたんだけど、何か知ってる?』『この新しい技術はもう見た? どう思う?』といったやり取りこそ、非常に価値があるのです」とウェザーフォード氏は語る。
MCPが何かわからないなら、今週学ぼう
ウェザーフォード氏によると、多くのCISOは「AIの分野で既に大きく遅れをとっており、追いつくのは不可能だ」と感じているという。しかし、AI技術は急速に進化しているため、今や誰でも短期間でAIのエキスパートになれるとウェザーフォード氏は主張する。全てを一度に学ぼうとするのではなく、週に一つの新しいトピックに集中するようCISOたちに勧めた。
「MCP(Model Context Protocol)が何かわからないなら、今週学べばいい。プロンプトインジェクションが何かわからないなら、1週間かけて学べばいい。そうすれば、1年の終わりには52個の重要な知識を身に付けたことになる。それこそが、優秀な人材とそうでない者を分ける差になる」
今後数カ月の間にAI主導による脆弱性の発見や公開が相次ぎ、それに伴う攻撃は避けられないと予測しているものの、ウェザーフォード氏自身は「最終的にはこの技術がデジタル環境をより安全にする」と信じるAI楽観主義者であると語る。
「私の個人的な見解では、こうしたAIによる脆弱性の多くを軽減する方法は、より多くのAI、そしてより優れたAIを活用することだ」と同氏は述べた。大きな混乱期を経て「AIを使って欠陥を軽減してサイバーリスクを管理する能力はますます向上するだろう」とウェザーフォード氏は力説した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIに何を聞いても「汎用的な答え」しか返ってこないのはなぜか? -
製品資料
[サイボウズ株式会社] なぜAIは組織で定着しないのか? 全社活用を阻む「3つの壁」の突破法 -
製品資料
[株式会社スタディスト] 「不適合品率」改善はどこから始める? すぐにできて効果が大きいポイントとは -
製品資料
[株式会社スタディスト] 食品ロスを利益に変える「現場標準化」のすすめ -
技術文書・技術解説
[株式会社スタディスト] チョコ停・ドカ停を防ぐ「事前対策」の進め方
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
RAGで「データをAIに送る」運用が限界を迎えている理由
-
2
Claude利用8割のGMO、AI人材の評価軸が「トークン管理」に変わった
-
3
建設業のAI活用はなぜ「メール作成」止まりなのか 調査に見る“浸透の壁”
-
4
Googleの業務向けAIエージェント「Gemini Agent」が登場 しかし課題は山積み
-
5
「Copilot」がIT予算を食いつぶす? 高額請求を招く課金体系と節約術
-
6
いまIBM iエンジニアが直面する「5つの技術的課題」とその解決策
-
7
【基本情報技術者試験】データ消失リスクを防ぐ3つの「バックアップ手法」を比較
-
8
SAPの負荷増に苦しむZeissが「リアルタイム分析」「安定運用」を両立させた道
-
9
なぜ「Claude Code」拡張は消しても危ないのか? Cursorで不正版配信
-
10
Microsoft 365侵害企業の9割はMFA導入済み 1002人調査で見えた盲点
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
2
侵入から横展開まで27秒の脅威にどう立ち向かう? 防御のカギがEDRの理由
-
3
有識者が語る、中堅中小企業に求められる最新のサイバーセキュリティ対策とは
-
4
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
5
10G回線の真価をフルに享受するには? 導入前にチェックしたいポイント
-
6
なぜAIは組織で定着しないのか? 全社展開を阻む「3つの壁」と突破のヒント
-
7
パスワードレスへの移行で失敗しないためには? 導入・運用上の注意点を解説
-
8
自社のセキュリティ対策は大丈夫? 自己診断リストで対策の優先順位が分かる
-
9
ランサムウェア攻撃“究極の対策”はこれだ
-
10
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー