深夜残業の温床 “国会答弁”の過酷な業務はAWSの「生成AI」で救えるか?「想定問答」作成の裏側

国家公務員の重い負担になっている国会答弁の「想定問答」作成。この過酷な業務を救うために、ある中央省庁がAWSと組んで、短期間で高い評価を得る生成AIアプリケーションを開発した。開発を成功に導いた工夫とは。

2026年07月23日 05時00分 公開
[TechTargetジャパン]

 働き方改革が急務となる霞が関において、国家公務員の負担となっているのが国会答弁に向けた「想定問答」の作成や審査業務だ。行政の透明性と説明責任を果たすため、回答案には高い正確性と首尾一貫性が求められる。

 担当職員は限られた時間の中で、過去の膨大な資料や国会会議録を探し出し、必要な情報に素早くたどり着かなければならない。この課題を解決するため、ある中央省庁のシステム担当部局はAmazon Web Services(AWS)と共同で、生成AIを活用した業務支援アプリケーションのプロトタイプ「DietSearch」を構築した。

 DietSearchは人間の判断を中心に据え、関連文書の検索や初稿ドラフトの作成といった機械的処理をAIモデルに担わせる仕組みだ。試用した職員からは「作成される初稿ドラフトの質が想像よりも高かった」「作業が早くなる」と評価されており、2026年秋の本格導入を目指して準備が進められている。

 膨大な過去データから、いかにして精度の高いドラフトを生成しているのか。その裏側にある開発過程と、独自の技術的工夫に迫る。

中央省庁が挑む“脱・時代遅れ”の開発

 DietSearchは、想定問答の初稿ドラフト生成と、審査プロセスを効率化するAIアプリケーションだ。行政機関でのシステム構築は各工程を順番に進める「ウオーターフォール型」が主流であり、完成後には想定と異なる操作性になっているケースが散見されていた。DietSearchの開発では、短いサイクルで実装とテストを繰り返す「アジャイル型」を採用した。約半年にわたり、機能開発、デプロイ、フィードバック収集というサイクルを高頻度で回し、メジャーおよびマイナーバージョンアップを繰り返すことで、エンドユーザーのニーズを反映した使い勝手の良いシステムを作り上げた。

 機能面における特徴は、組織が保有する過去の想定問答ファイルを検索可能なナレッジベースとして構築し、さまざまなメタデータを付与する点だ。エンドユーザーが事前に定義したルールによって、文書のファイルパスから年月を抽出したり、プロパティから構造化された洞察を導出したりすることが可能だ。メタデータの生成ルールは画面上で自由にカスタマイズでき、生成AIの補助によってルールも容易に改善、拡張可能だ。

 検索処理には、ベクトル検索と全文検索を組み合わせたハイブリッド検索を採用している。エンドユーザーが質問を入力すると、大規模言語モデル(LLM)が検索にヒットした文書を文脈として参照し、初稿ドラフトを作成する。生成されたドラフトの各段落には参照した過去のファイルがひも付いており、利用者は過去の記載を確認しながら加筆、修正できる。

 作成・修正された答弁案に対し、過去の想定問答との類似性をシステムが自動検証し、関連性の高い箇所をハイライト表示することで審査も効率化する。APIを通じて公開されている国会会議録検索システムと連携し、該当する委員会で実際に発言があったかどうかをLLMが段落ごとに判別し、可視化する機能も備わっている。

 インフラは、サーバの管理やプロビジョニングを意識することなく自動で拡張・縮小が可能な「サーバレス構成」を採用し、運用負荷や費用を抑制している。既存の庁内認証システムと連携させることで、職員が日頃利用しているアカウントでそのまま安全にアクセスできる状態を整えた。システム全体をIaC(Infrastructure as a Code)で管理することで、デプロイ前のセキュリティ検証を自動化している。

 検索および答弁作成システムには、生成AIアプリケーション開発を容易にする「Amazon Bedrock」を採用した。推論モデルとしてAnthropicの「Claude」などのAIモデルが選択できる他、行政システムとして不可欠な、AI技術の安全性を保証する機能「Amazon Bedrock Guardrails」も組み込まれている。

 DietSearchは、本省庁にとどまらず、同様の業務課題を抱える他の中央省庁や地方自治体への展開も期待されている。「まず動かして確かめる」というプロトタイピングの手法は、生成AIの本格導入を判断する上で有効であることが示された形だ。

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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