組織をプロアクティブな姿勢に変革
アラート47%削減 オープンハウスが捨てた「全部メール通知」の監視体制
昼夜を問わず届く大量のアラートメール。重要度の低い通知に忙殺され、致命的なインシデントへの着手が遅れるリスクを、オープンハウスグループはどのようにして脱却し、プロアクティブな対処体制を築いたのか。
システムを止められない一方で、監視ツールから発せられる無数のアラートに情報システム担当者は疲弊している。特に問題になるのが、全てのアラートを一律にメールで受け取る運用体制だ。サーバの停止といった緊急対処を要するものから、夜間の一時的なネットワーク瞬断まで、重要度が異なるあらゆる通知が同じメールボックスに混在してしまう。結果として、大量の通知から重要なものを瞬時に見極めることが困難になり、優先すべき重大障害への初動に遅れが生じる潜在的なリスクを抱えることになる。担当者の個人のスキルや経験に依存した属人的な運用が続けば、本来機能すべき「異常に気付くための仕組み」そのものが形骸化してしまう。
不動産業界で多角的に事業を展開するオープンハウスグループも、かつてはこの課題に直面していた 。全国20数拠点に配置された約300台のサーバを横断的に運用する同社の情報システム部は、過剰な通知による現場の疲弊と、重要なアラートを見落としかねないメール運用の限界をいかにして払拭したのか。大量の通知ノイズを削減し、組織をプロアクティブな姿勢に変革させた意思決定のプロセスに迫る。
形骸化する「異常に気付く仕組み」からの脱却
オープンハウスグループは、人手に依存した運用監視体制の刷新とインシデント対処の迅速化を目的に、インシデント管理サービス「PagerDuty」を採用した。2026年7月8日、PagerDutyが発表した。AI技術によるアラートの自動グルーピング機能を活用することで不要な通知を約47%削減し、障害予兆の早期検出と現場の運用の仕組み化を達成した。
オープンハウスグループは、戸建関連事業、マンション事業、収益不動産事業、米国不動産事業などを多角的に展開する不動産企業だ。ベンチャーのスピード感と大手の規模感を強みに急成長を続けており、グループ全体のITインフラの安定稼働が企業活動の生命線となっている。
オープンハウスグループの情報システム部インフラストラクチャグループは、全国20数拠点に配置された約300台のサーバをはじめとするITインフラを横断的に運用していた。しかし、監視ツールからの大量のアラート通知を全てメールに集約していたため、重要度の異なる通知が一律に届き、緊急性の高いインシデントの判別に多大な時間と労力を要していた。過剰な通知による現場の疲弊に加え、システムごとに対処方針が異なり、個人のスキルに依存する属人的な運用体制が続いていたことから、全社横断での運用の仕組み化が急務となっていた。
こうした課題を解決するため、オープンハウスグループは複数のツールを比較検討した。Amazon Web Services(AWS)やGoogle Cloudなどのマルチクラウド構成に適合するアラートの集約能力、担当者への自動通知機能、AI技術による自動グルーピング機能などを高く評価して、PagerDutyの採用を決めた。
導入プロジェクトは、アラートの仕分けやスケジュールの設定を経て、2週間足らずで本稼働を開始した。導入後は、同一ホストの複数アラートが1つのチケットに集約されるようになり、直近45日間で総アラート数を1885件から884件へと約47%削減することに成功した。これによって、アラート確認に要する時間は担当者の体感で5分の1程度に減少した。スケジュール機能によって必要な担当者にピンポイントで確実に通知が届く仕組みを構築し、誰が対処中かをコンソールで可視化することで、チーム内での相互フォローや業務の標準化が実現した。
心理的負荷の軽減によって、現場が自ら情報を確認しにいくプロアクティブな姿勢へと組織文化が変化した。夜間の一時的なネットワーク瞬断といった微細な障害予兆をインシデント化する前に検出、対処できるようになり、大きな障害の発生抑制に手応えを得ている。
オープンハウスグループ 情報システム部インフラストラクチャグループ 上席課長の伊藤優氏は、重要なアラートを見落としかねないメール運用の限界や過剰な通知による疲弊が課題だったと振り返る。「PagerDutyの導入はエンジニアが本来の創造的な仕事に集中するための第一歩だ」と話し、今後はセキュリティアラートの統合や、Webhookを活用した自動復旧フローの構築、AI技術による予兆検出を推進し、ビジネス影響ゼロの世界を目指して活用を進化させる。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHUB.News」に掲載された「オープンハウスグループ、PagerDutyでアラートを47%削減 インフラ運用を高度化」(2026年7月9日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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