電子文書の真正性と処理性能をどう両立する?
約8割が「無防備PDF」を問題視 月末の遅延・残業を招くタイムスタンプの実態
ウイングアーク1stは、電子文書やデータのセキュリティ調査の結果を公開した。生成AIの普及で電子文書の真正性への懸念が高まる中、企業では新たな課題が生じていることが分かった。
契約書や請求書、各種証明書など、企業間取引で扱う文書の電子化が進んでいる。業務効率化や人手不足への対応につながる一方、生成AIの普及によって、文書が本物かどうかを確認することは以前より難しくなりつつある。
ウイングアーク1stは、売上高100億円以上の企業でタイムスタンプ関連業務に従事する担当者510人を対象に、「2026年版 電子文書やデータのセキュリティ調査」を実施した。2025年にも同様の調査を実施しており、電子文書を取り巻く課題の変化を比較している。調査からは、タイムスタンプ利用企業の課題が示された。
タイムスタンプの最大の課題は?
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タイムスタンプは、電子文書やデータが特定の時点に存在し、それ以降に改ざんされていないことを証明するために使われる。
調査では、タイムスタンプについて「現在利用している(発行時に付与)」と回答した割合が42.5%で最も高かった。「現在利用しているが、付与するタイミングは不明」とした回答も15.7%あった。
タイムスタンプの利用者292人に課題を尋ねたところ、最も多かった回答は「大量データの処理が困難」の51.4%だった。2025年の調査から12.1ポイント増加し、課題の第1位に浮上した。
次いで「処理速度が遅い」が44.2%、「利用コストが高い」が36.6%だった。タイムスタンプを利用する企業では、文書の真正性を証明する機能だけでなく、大量のデータを短時間で処理できる性能が重要になっていることが分かった。
大量処理でシステム停止や残業が発生
大量の電子文書を処理する際に経験した問題を尋ねた質問では、「システムがフリーズ・エラーになった」が30.0%で最多だった。続いて、「処理待ちで残業が発生した」(28.6%)、「月末・月初の集中処理で大幅な遅延が発生した」(28.2%)が並んだ。電子文書の利用が増えても、処理基盤の能力が追い付かなければ、業務効率化を実現できなくなるだけでなく、システム停止や従業員の負担増加につながる可能性がある。
特に契約書や請求書を月末や月初にまとめて処理する企業では、タイムスタンプの付与や真正性の確認作業が集中しやすい。電子文書を導入する際は、通常時の処理件数だけでなく、繁忙期の最大処理量も想定してシステムを設計する必要がある。
生成AIによる改ざんを見抜けないことが最大の懸念
電子文書に関連するもう1つの課題が、生成AIを使った改ざんや偽造だ。
調査では、生成AIの発展によって企業間取引の電子文書に生じる懸念について尋ねた。その結果、「重要書類のAIによる改ざんに気付けない可能性がある」が30.8%で1位、だった。同回答は、2025年の調査から7.2ポイント増加している。
次いで、「取引先からの文書の真正性確認が困難になる」は22.2%だった。文章や画像を高い精度で生成できるAIが普及したことで、文書の内容や見た目だけを基に、真正性を判断することが難しくなりつつあることが示された。
実際、回答者の34.9%は、過去3年間に「取引先から文書が本物かどうか疑われた」経験があると答えた。「改ざんが疑われる事案があった」は29.4%、「受け取った文書が本物かどうか疑問に思った」は25.9%だった。
約8割が「無防備PDF問題」を問題視
調査では、重要な文書をPDFファイルとして送受信しているものの、電子署名やタイムスタンプなどの真正性を確認する仕組みが付与されていない状態を「無防備PDF問題」として取り上げた。
この問題について「問題だと思う」と答えた割合は42.7%、「深刻な問題だと思う」は35.7%だった。合計すると78.4%となり、約8割が何らかの問題意識を持っていることが分かった。
PDF形式に変換しただけでは、文書の改ざんを完全に防げるわけではない。パスワードの設定やアクセス制限だけでなく、誰がいつ発行した文書なのか、発行後に内容が変更されていないかを検証できる仕組みが必要になる。
真正性の確認は電話や紙から電子認証へ
重要な取引文書の真正性を確認する方法では、「電子的な認証(タイムスタンプなど)で確認している」が48.2%で最も多かった。同回答は2025年から9.4ポイント増加し、首位に浮上した。
一方、「電話やメールで発行元に確認している」と「紙の原本を別途送付してもらっている」は、いずれも34.5%だった。
電話やメールによる確認は、担当者の作業負担が大きく、大量の文書を処理する用途には向かない。紙の原本を併用すれば、保管や郵送のコストも発生する。電子文書の利用量が増えるほど、人手による確認から、電子署名やタイムスタンプなどを使った自動的な確認へ移行する必要性が高まる。
電子文書が本物で改ざんされていないことを証明する上で重視する時点については、「受信時点での証明」が32.2%で最多となった。「発行時点」と「受信時点」のどちらも同程度に重要とする回答も29.8%あった。
つまり、発行者側が真正性を証明するだけでなく、受信者側も、文書を受け取った時点の状態を証明できる仕組みが求められているということだ。
安全性だけでなくコストとの両立も課題
電子文書のセキュリティ強化に対する考えでは、「安全性は重要だが、コストも考慮したい」が42.2%で最も多かった。「コストより安全性を最優先すべき」は24.3%だった。
企業が全ての電子文書に同じ水準のセキュリティ対策を適用すれば、処理量や利用料金が増える可能性がある。そのため、契約書や請求書、知的財産に関する文書など、重要度に応じて対策を分ける方法が考えられる。
さらに、文書の種類や取引金額、保存期間、改ざんされた場合の影響を基にリスクを分類し、電子署名やタイムスタンプを付与する対象を決めることが重要になる。
今後3年間で電子文書はさらに増加
今後3年間で、自社における電子文書の利用はどのように変化するか尋ねたところ、「やや増加する」が46.9%、「大幅に増加する」が23.5%だった。合計すると70.4%が増加すると予想していることが分かった。
増加すると考える理由を尋ねたところ、「業務効率化の必要性がさらに高まる」が57.1%で最多だった。「人手不足により省力化が必須になる」は53.5%、「取引先からの電子化要請が増える」は38.7%だった。
電子文書の利用増加は、紙の削減や業務の迅速化につながる。一方、処理対象が増えるほど、タイムスタンプの処理速度やシステムの安定性、真正性を確認する仕組みの重要性も増す。
発行元となりすましを確認する仕組みが必要
調査では、取引先から受け取る電子文書について、発行元が本物であることを確認できる仕組みが必要か尋ねた。その結果、「非常にそう思う」が30.8%、「ややそう思う」が42.5%で、合計73.3%が必要性を感じていることが分かった。
タイムスタンプは、文書が特定の時点に存在し、その後に改ざんされていないことを証明する。一方、企業や組織が発行した文書であることを示す手段としては、電子署名やeシールなどがある。
企業は今後、「いつ存在した文書か」「内容が変更されていないか」だけでなく、「誰が発行した文書か」を組み合わせて証明する必要がある。
生成AIによって偽造文書を作りやすくなれば、文書の内容やレイアウトを目視で確認するだけでは十分ではない。発行時点から受信、保管までの各段階で真正性を検証し、大量の文書にも短時間で証明情報を付与できる基盤が求められる。
電子文書のセキュリティ対策では、真正性、処理性能、コストを個別に考えるのではなく、一体として設計することが重要になる。
本稿は、ウイングアーク1stが2026年7月23日に公開したプレスリリースを基に作成しました。
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