脱メインフレームで直面した処理性能問題
「COBOL」「JCL」計7000本のAWS移行 2000社を支える給与サービスを襲った危機
計7000本に及ぶレガシープログラム群を抱えるメインフレームのクラウド化は、安易に進めると処理速度低下という致命的なリスクを招く。三菱総研DCSはいかにしてこの課題を乗り越えたのか。
稼働し続けてきたメインフレームにおける維持・運用費用の増加や複雑化したプログラム群の扱いは、企業の情報システム部門にとって頭の痛い課題だ。これに対して、既存のソースコードを有効活用しながら移行リスクを最小限に抑えられる「リホスト方式」でのクラウド移行は、現実的な解決策になる。
しかし、ここに大きな落とし穴がある。「取りあえずクラウドサービスに載せ替えれば動く」と安易に考えて検証を進めると、「メインフレームと同等の処理性能が出ない」という壁にぶつかることがある。特に、大量のバッチ処理が中心となるシステムでは、I/O(入出力)のボトルネックが致命的な遅延を招き、業務に実害を及ぼすリスクが跳ね上がる。
システムインテグレーターの三菱総研DCSが提供する主力の人事給与サービス「PROSRV」は、メインフレームから「Amazon Web Services」(AWS)へのリホスト移行において、この“死角”に直面した。2026年7月時点で導入企業約2000社、月間55万人分の処理を支える同サービスは、「1円の誤りも許されない」というシビアな要件を抱えている。給与計算で処理遅延が起きれば、その代償は計り知れない。
移行プロジェクトを支援したエクサと共に、約4000本の「COBOL」プログラムと約3000本の「Job Control Language」(JCL)によるジョブ定義について、不要なプログラムの棚卸しと整理を進めていた三菱総研DCSは、検証段階で処理速度に関する課題を突き付けられた。年間で最大の高負荷期となる12月の「年末調整処理」を遅延なく完遂するために、どのような対策が必要だったのか。
検証段階で見つかった「処理遅延」の危機
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三菱総研DCSは、エクサの支援の下、人事給与サービスPROSRVのメインフレームをAWSにリホスト移行した。2000社、月間55万人分の処理を支えるインフラのクラウド化によって、インフラ費用の大幅な削減と高負荷期における安定稼働を実現した。
三菱総研DCSが提供するPROSRVは、導入企業約2000社、月間処理数55万人を誇る主力の人事給与サービスだ。同社では、従来のメインフレームにおける維持・運用費用の増加や、長年の運用で複雑化した既存プログラムの取り扱いが課題となっていた。
こうした背景を受け、三菱総研DCSは既存プログラムを有効活用して移行リスクを抑えられる「リホスト方式」によるAWSへのクラウド移行を決断した。マイグレーションで20年以上の実績を持つエクサをパートナーに選定し、2023年7月よりプロジェクトを発足させた。
プロジェクトでは、約4000本のCOBOLプログラムと約3000本のJCLによるジョブ定義に対し、利用状況の分析や不要資産の棚卸を実施。約7000本のプログラムおよびジョブ定義を整理・スリム化することで、安全な移行を完遂した。検証段階で浮き彫りとなった処理速度の課題に対しては、ストレージ構成を「Amazon Elastic Block Store」(Amazon EBS)へ変更するとともに、製品ベンダーと連携したシステム設定の最適化を図ることで、メインフレームと同等レベルの処理性能を確保した。
2025年8月の本稼働開始以降、新システムは安定稼働を継続しており、年間で最も高負荷となる12月の年末調整処理も遅延なく完遂した。インフラ費用の削減を達成した他、計画的な保守コントロールが可能な運用体制や、将来の機能拡張、BCP(事業継続計画)強化に向けた土台を整備した。
三菱総研DCS常務取締役の木本昌次氏は、「エクサの協力でクラウドにシステムを移行でき、他社との差異化ポイントが増えた。安定稼働と大幅な費用削減を実感しており、今後も技術力を借りながらサービスを磨き続けたい」と語る。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHUB.News」に掲載された「三菱総研DCS、PROSRVをAWSへ移行 安定稼働とインフラコスト削減を実現」(2026年7月23日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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