「移行の二度手間」を防ぐ第3の選択肢
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
RHELのサポート終了を受けて、延命のためだけに多額の費用をかけ、強制的にOSを移行することは避けたいものだ。みずほ銀行が選んだ、100億円規模の移行費用を回避する「第3の道」とは。
OSのサポート終了(EOL)は、ITインフラの運用において避けて通れない“時限爆弾”だ。特に、ミッションクリティカルなシステムを支える「Linux」が稼働するインフラの場合、EOLの影響は計り知れない。
みずほ銀行は、200台を超える「Red Hat Enterprise Linux」(RHEL)サーバのEOLに直面していた。金融機関に求められる厳格なコンプライアンスとセキュリティを維持するためには、サポート切れのままでは放置できない。しかし、ベンダーが提示するロードマップ通りにアップグレードすれば、システムごとに10億~100億円規模の費用と検証工数が発生する恐れがあった。
これに加えて、みずほ銀行を悩ませたのが「二度手間」の問題だ。同行がIT変革の軸として目指していたのは、ビジネスの俊敏性向上に向けた、コンテナ技術を中核とするパブリッククラウド上の共通システムの構築だ。それにもかかわらず、次世代インフラに移る前に「取りあえずOSをアップグレードする」という現状維持の作業に、人員や予算などの貴重な資産を奪われようとしていたのだ。
そこでみずほ銀行は、ベンダーの都合に合わせた高額なアップグレードを拒否し、厳しいセキュリティ要件を満たしたまま既存のシステム構成を安全に延命する“おきて破り”の選択肢を取った。その詳細とは。
100億円規模の「無駄な移行」を拒絶したみずほ銀行の“デジタル主権”
みずほ銀行は、ミッションクリティカルなLinuxシステムの維持に向けて「SUSE Multi-Linux Support」を採用した。2026年7月28日、SUSEが発表した。200台を超える既存のRHELサーバのセキュリティと可用性を維持し、大規模なOS移行作業に伴う費用や工数の増加を回避している。
みずほ銀行は、ビジネスの俊敏性向上に向けて、コンテナ技術を中核とするパブリッククラウド上の共通システムの構築を進めている。一方で、重要業務を支える200以上のRHELインスタンスがサポート終了を迎えつつあり、その対処が課題となっていた。金融機関としてシステムの安定稼働を維持しながら、旧システムの維持のみを目的とした大規模な移行作業に時間や予算を投じることの回避が求められていた。
複数のベンダーを検討する中、他社が多大な時間と費用を要するアップグレードを提示する一方、既存のRHELシステムを維持したまま保守サポートを提供するSUSEの提案を選定した。2011年からメインフレームで「SUSE Linux」を運用してきた実績や、オープンソースに対する姿勢も評価した。
SUSE Multi-Linux Supportの採用によって、みずほ銀行は1カ月未満で新たな保守体制を構築した。OSの強制的なアップグレードを回避したことで、当初見込まれた10億から100億円規模の移行費用や工数を抑制。OS移行を経てから新システムに移る二度手間を解消し、次世代システムに直接移行するリードタイムを確保した。特定ベンダーに依存しない運用体制を整え、創出した人材や資金などのリソースをAI技術活用などの新規投資に振り向けている。
みずほフィナンシャルグループ執行役員グループ副CIO(最高情報責任者)の相原寛史氏は、「SUSEは極めて価値の高いデジタル主権をもたらしてくれた。特定ベンダーのタイムラインに縛られず、自分たちのペースで移行を完遂できる自由を確保できた。回避できたリソースを将来施策に投じることで、より大きな長期的価値を生み出せる」と話す。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHUB.News」に掲載された「みずほ銀行、200台超のRHEL環境にSUSEの保守基盤を採用 移行コスト回避」(2026年7月29日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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