「Windows 9」へつながるMS「ユニバーサルアプリ」の深い狙い:スマートフォン、タブレットなどあらゆる「Windows」で稼働
スマートフォンやタブレット、PCなど「Windows」プラットフォームが稼働するあらゆる端末で実行可能な「ユニバーサルアプリ(ユニバーサルWindowsアプリ)」。同技術に対するITプロフェッショナルの見解はさまざまである。
関連キーワード
Windows 10 | Windows Phone 8 | Windows 8 | Windows | Microsoft(マイクロソフト) | Windows Phone | アプリケーション | アプリケーション開発 | BYOD(Bring Your Own Device) | OS | API
「Windows 8」が稼働するあらゆる端末で実行可能な「ユニバーサルアプリ(ユニバーサルWindowsアプリ)」は、同OS搭載デバイスの導入を検討しているITプロフェッショナルの関心を集めている。
米Microsoftが発表したユニバーサルアプリは、「Windows Phone」やタブレット、PCに至るまで、あらゆる端末で共通のコードベースを使用する仕組みとなっている。開発者は、単一のコードベースを使い、APIの99%以上を全てのWindows 8デバイスで共有することが可能だ。アプリをデバイスの画面に合わせるための若干の調整は必要だ。
関連記事
- Xbox、Windows PhoneでPCアプリが起動 MS「ユニバーサルアプリ」の破壊力は?
- 「Windows 9」で今度こそ“真のスタートボタン”が復活?
- Windowsタブレット向け 細か過ぎて伝わらない「Windows 8.1 Update」ガイド
- 「Windows 8.1」で真っ先に設定したいオススメ項目5選
ユニバーサルアプリはWindows Phoneの普及を促す「起爆剤」に成り得るという声もある。最終的には、多くの企業がWindows 8を導入することにつながるという。Microsoftは米国のスマートフォン市場でわずか3%超のシェアしか獲得できていない。米Googleの「Android」や米Appleの「iOS」に大きく差を付けられている。
米マサチューセッツ州フラミンガムのIT調査会社でアナリストを務めているアル・ヒルワ氏は次のように述べている。「Microsoftはユニバーサルアプリモデル以外にもWindows Phoneのデバイス管理面に注力している。この取り組みにより導入企業の数は増えるだろう」
このMicrosoftの取り組みに加え、特に「Windows Phone 8.1」に搭載された新しいパーソナルデジタルアシスタント「Cortana」について考えると、開発者コミュニティーもこの意見に賛同するようだ。
米ノースカロライナ州シャーロットを拠点とするマーケティングデータベースソフトウェア開発会社Quaeroで主任アプリケーション開発者を務めるジェフ・ハーモン氏は、今後半年の間にITがビジネスをけん引する力はさらに高まり、その結果Windows Phoneの採用も促進されるという見方を示している。同氏は最近、米ボストン地域のWindows 8開発者グループと最新のMicrosoftテクノロジーについて話し合うための会合を行っている。
関連記事
- 「Windows 8.1 Update」はもう適用した? マイナーアップデートを超えた使いやすさへの評価を見る
- パワーユーザーしか知らないWindows 8.1ヒント集をこっそり伝授
- “おなじみのWindows”に戻りつつある「Windows 8.1」のジレンマ
開発を容易にするユニバーサルアプリ
このWindowsアプリケーション開発に対する新しいアプローチは、企業のIT部門にさまざまな形で影響を与えることが予想される。
「例えば、IT部門がソフトウェアを記述する際は、1セットのコードを用意するだけでどのデバイスでも機能させることができる」と話すのは、ボストン地域でデスクトップ管理を専門に活動しているITコンサルタントのアーサー・キャノン氏だ。この概念は特にスマートフォンで有用だと同氏はいう。
「モバイルのセキュリティに関しては、全てのデバイスでプロトコルが使用されている。そのため、多くの場合、エンドユーザーはスマートフォンの通信を暗号化するためのソフトウェアをダウンロードしなければならない」(キャノン氏)
だが、用心深いITプロフェッショナルは、まだユニバーサルアプリを受け入れる準備が整っていない。それどころかMicrosoftが新しくリリースした「Windows 8.1 Update」すら警戒している。
「採用する目的はアプリとインタフェースどちらにあるのか」と米アラバマ州バーミンガムのAlabama Gasでデスクトップシステムの管理を担当しているデイビッド・ドリッガーズ氏は問い掛ける。
Windowsデバイスに期待されているのは親しみやすさなので、エンドユーザーは新しいインタフェースを理解できないと同氏は話す。また、Microsoftが「Windows 9」で予定しているWindowsストアアプリとスタートメニューの統合やクラシックデスクトップがビジネスでの使用にプラスに働くかどうかは疑問だという。
ハーモン氏は次のように予想する。「Windows 9はより強力になる。Windowsアプリはさらにビジネス向けになり、そのころにはWindows 8のけん引力が強くなっているだろう。だが、短期的にはWindows Phoneが役に立つだろう」
関連記事
- 「Windows 8.1」「Office 2013」、今からでも知っておくべき10の事柄
- Windows 8/8.1移行組に贈る、仕事がはかどるストアアプリ7選
- 徹底レビュー:知らないWindows 7ユーザーは損をする「Windows 8.1」の底力
ユニバーサルアプリは、BYOD(私物端末の業務利用)ポリシーを施行している企業にも影響を及ぼす可能性がある。携帯電話の契約が改定されて料金が安くなり、使用中の端末より魅力的なWindows Phoneが発売されれば、乗り換えを検討するエンドユーザーがいるからだ。
米シアトルに拠点を置くITサービスプロバイダーArterianの創設者兼CEOのジャミソン・ウエスト氏は「企業では“様子を見る”傾向が強い」という。Windows Phoneとユニバーサルアプリに関しては中小企業の方が速いペースで採用されるだろうとの見解を示している。
MicrosoftのユニバーサルアプリはWindows PhoneとWindows 8の環境向けに設計されている。だからといって、アプリが画面に収まるようにコードを調整しなくて済むわけではない。また、Microsoft以外のベンダーが提供している脱PC時代のデバイスの大半では、そのままの状態では実行できない。例えば、Appleの「iPhone」やGoogleのAndroidでは、ネイティブなユニバーサルアプリは、そのままでは機能しない。
真のクロスプラットフォーム開発を実現するには、米Xamarinのツールなどを使って開発者がコードをある程度改訂し、アプリがWindows以外のモバイルデバイスで動作するようにしなくてはならない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.