千葉県発、公立工業高校のIT活用【前編】
千葉工業高校がWindowsタブレットではなく「9.7インチiPad Pro」を選んだ理由(1/3 ページ)
2016年4月に「9.7インチiPad Pro」によるBYODを開始した千葉県立千葉工業高等学校 理数工学科。同科は9.7インチiPad Proをどのように活用しているのか。その選定理由とは。担当者に聞いた。
2016年4月、工学系の大学進学を目指す「理数工学科」を新設した千葉県立千葉工業高等学校(千葉市中央区)。併せて同科の新入生全40人を対象に、Appleの9.7型ディスプレイ搭載タブレット「9.7インチiPad Pro」をBYOD(私物端末の利用)形式で導入した(注)。ものづくりを学ぶ工業高校ならではのIT活用を目指して知恵を絞る。
※注 BYODは本来、個人が自分の意志で選択/購入したデバイスを業務で使用したり、組織内に持ち込んだりすることを指す。現在は教育機関や企業で、BYODにおいてもOSのバージョンや製品を限定したり、指定したりするケースが増えている。
以前から千葉工業高校は、生徒が先進的な技術やツールに触れながら学習できる環境作りを重視してきた。2015年には文部科学省から、専門性の高い知識や技能を持つ人材育成を図る「スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール」(SPH)の指定校に選ばれたことが、その証左だ。9.7インチiPad Proの導入でさらにIT環境の充実を図り、社会の第一線で活躍できる人材育成を目指す。
千葉工業高校は9.7インチiPad Proの導入をどのように進めたのか。選定の理由は何か。導入の陣頭指揮を執った電気科・ICT教育推進委員会の片岡伸一教諭に話を聞いた。
情報時代に1人1台タブレットの整備は「当たり前」
工業化学科、電子機械科、電気科、情報技術科の既存4科(定時制は機械科と電気科)に加えて、2016年4月に理数工学科を新設した千葉工業高校。同校では近年、就職希望者だけでなく、大学や専門学校への進学希望者が増えていることが、理数工学科新設の背景にある。
理数工学科の新設に当たっては、計画当初からタブレットの導入を進めることを決定していたという。その背景には「情報の重要性が高まった今の時代で、かつ技術を重視する工業高校に新設される学科となれば、生徒が自分専用の情報端末を持つことは当たり前」(片岡教諭)だという考えがあった。また工業高校が持つ専門性を生かした特色ある新しい学科を目指す上で、タブレットの1人1台環境が生かせるのではないか、という期待もあった。
ちなみにBYODという形を採用しなくとも、学校共有タブレットを授業において1人1台環境で使用したり、学校貸与で1人1台環境を築いたりする教育機関もある。同様の選択肢は考慮しなかったのか。片岡教諭は学校共有や学校貸与について「皆が同じ環境で使えることは使いやすさにつながる」とメリットを認める。それでもBYODを採用した理由として「生徒が必要なアプリをインストールしたり、生徒が思い通りに写真や動画、テキストデータを保存したりできるようにするには、BYODが最適だと考えた」と説明する。高校生という発達段階を考え、データの活用や蓄積において、ある程度の自由度を与えることを重視した形だ。
“無線LAN環境なし”でもできるIT活用から着手
千葉工業高校がタブレット導入の本格化に向けて準備を開始したのは、理数工学科開設の2年前に当たる2014年にさかのぼる。まず取り組んだのは教員用タブレットの整備だ。7.9型ディスプレイ搭載タブレットの「iPad mini 2」を教員用に8台導入。セットトップボックス「Apple TV」をプロジェクターに接続してiPad mini 2の画面を黒板に投影し、板書や資料提示に生かすことから活用を始めた。プロジェクターやマグネットスクリーンといった設備も同時に整備した。
当時は校内無線LAN環境を整備していなかった千葉工業高校では、Apple TVとiPad mini 2との接続手段として、デバイス同士が無線LANの電波を使って直接通信するP2P(ピアツーピア)接続を利用。その上で、画面転送機能「AirPlayミラーリング」を使ってiPad mini 2の画面を投影した。
1年後の2015年には、SPHの指定校に選ばれたことを機に、生徒が使う学校共有タブレットとして9.7型ディスプレイ搭載の「iPad Air 2」を42台導入した。併せて電子黒板も購入し、1クラス40人でタブレットを使った授業ができる環境を整備した。同年には校内無線LAN環境の構築に着手したり(詳細は後編で説明)、タブレット導入に先行する形で教育機関向けグループウェア「Office 365 Education」を契約して利用開始したりするなど、段階的に取り組みを進めていった。
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