クラウドをバックアップ/DRに活用するには? 目的別に要件を固める:バックアップ/災害対策にクラウドを使いこなす【第1回】(1/2 ページ)
「クラウドにバックアップデータを保存したい」「クラウドを災害対策(DR)に活用したい」場合に、幾つかの確認事項がある。クラウドを活用したバックアップ/DRについて目的や要件を整理する。
関連キーワード
IaaS | RPO(Recovery Point Objective) | Amazon Web Services | クラウドストレージ | Hyper-V | Microsoft(マイクロソフト) | VADP | VMware vSphere | Microsoft Azure | バックアップ | 災害対策 | ディザスタリカバリ
本連載では、クラウドを活用したバックアップ/災害対策(以下、DR)について、あいまいになりがちな用語を解説し、目的や要件、方式の決定、製品/サービスの選定について整理する。
次回以降の連載
【第2回】「クラウドをバックアップデータの複製先」とする場合の構成と注意点
【第3回】バックアップ/DRで「システムの切り替え先にクラウドを使用する」8つの方式
【第4回】どれを買う? クラウドを活用したバックアップ/DRに役立つ製品を一挙紹介
連載インデックス:バックアップ/災害対策にクラウドを使いこなす
本題に入る前に、国内市場動向として、TechTargetジャパンが2016年6月に実施した「企業のクラウドインフラに関するアンケート調査」を見てみよう。
まず、導入済みのパブリッククラウドの用途は、Webサービス、システム開発、情報系/業務システムが上位を占めている。バックアップが8.2%、DRが3.9%、アーカイブが2.3%であることから、バックアップ/DRに関する利用はまだまだ進んでいないようだ。
次に、パブリッククラウドを利用する際の課題や懸念点については、「既存システムや複数クラウドの統合管理や連携」「サービスの利用状況や運用状況の把握(可視化)」に課題があるようだ。これはクラウドをバックアップ/DRに利用する際にも重要視すべき課題である。
3つ目に、クラウド利用を想定した場合のバックアップに関する課題/懸念点としては、バックアップ/リストアのデータ転送量や時間への懸念が上位に挙がった。また、「クラウド間のポータビリティ」「バックアップデータの効率的な活用」という課題にも注目してほしい。
最近では、複数のクラウドと連携できるバックアップ製品やDR製品がリリースされている。それらをうまく活用することで、上記課題は解決できそうだ。本連載の終盤でも、具体的な製品/サービスについて言及する予定だ。
筆者はバックアップやDRに関する案件支援に携わっており、その数は年間100件を超える。ここ数年の案件対応の中で、「クラウドにバックアップを保存したい」「クラウドをバックアップ/DRに使用したい」という声が確実に増えてきている。だが、クラウドの利用方法を具体的にイメージできているケースは少ない。
クラウドと連携できるバックアップ/DR製品の採用を検討する前に大事なことが、目的と要件の明確化である。まず「目的と要件」を整理し、その要件を満たすバックアップ/DR「方式」を選び、それを実装できる「製品/サービス」を選べば、貴社のビジネスに貢献できるバックアップ/DRシステムが構築できるはずだ。
連載の第1回は、目的と要件の整理について解説する。目的や要件によって、利用するクラウドやバックアップ/DR方式は異なる。また、一口に「クラウド」と言っても、オブジェクトストレージのような「クラウドストレージ」と、抽象化したハードウェアリソースである「IaaS(Infrastructure as a Service)」のどちらを想定しているかの違いは大きい。例を挙げると「Amazon Web Services」(以下、AWS)の「Amazon S3」と「Amazon EC2」、どちらの利用を想定しているかによって変わる。さらにIaaSに関しても、AWSの「Amazon EC2」や「Microsoft Azure」の「Azure Virtual Machine」と、プライベートクラウド環境をホスティングサービスとして提供する「ホステッドプライベートクラウド」では、いずれを採用するかによって、できることが異なるので注意が必要だ。
用語 | 意味 |
---|---|
クラウドストレージ | ストレージリソースをインターネット経由でオンデマンドに提供するクラウドサービス(SaaSの一種) |
IaaS | ITインフラ(サーバ、ストレージなど)をインターネット経由でオンデマンドに提供するクラウドサービス(パブリッククラウドの一種) |
ホステッドプライベートクラウド | クラウド事業者がインフラサービスとして提供をするプライベートクラウド。資産を持たずに専用環境を利用できる |
筆者は、「クラウドにバックアップを保存したい」「クラウドをバックアップ/DRに使用したい」と相談された場合に、下記の内容を必ずヒアリングすることにしている。皆さんも自分(自社)だったら、どう答えるかを考えてみてほしい。
1 | バックアップ/DR保護対象の「データの種類」「総容量」「日次更新量」「リストアの頻度」 | |
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2 | 想定しているクラウドは、クラウドストレージかIaaSか | |
3 | 下記のどれを想定しているか | |
3−1 | クラウドを「長期保管先の安価なストレージ」として利用したい | |
3−2 | クラウドを「バックアップデータの複製先」として利用したい | |
3−3 | オンプレミスからクラウドへ「サイト間のシステム切り替え」をしたい |
以下にヒアリング項目の内容と意図を補足する。
1.バックアップ/DR保護対象の「総容量」「日次更新量」「データの種類」「リストアの頻度」
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