各業界が取り組むサステナビリティ【第1回】
ビルの温室効果ガス削減の鍵は“あの技術”にあった
オフィスビルなどの商業ビルをエネルギー効率に優れた設計にし、温室効果ガスを削減するためには、ソフトウェアの活用が有効だ。ソフトウェアのどのような機能を使えばいいのか。
米国の非営利組織(NPO)で環境研究機関のWorld Resources Institute(WRI)によると、2016年の世界の温室効果ガス排出量は約500億トンCO2eq(CO2eqは二酸化炭素=CO2相当量)だ。そのうち商業ビルなど非住宅建築による排出量は6.6%(約33億トンCO2eq)を占める。これは空運、海運、セメント製造業界による温室効果ガス排出量の総計にほぼ相当する。
一般的なオフィスビルや教育施設などにおいては、従業員が使用するコンピュータなどの機器によるエネルギー消費が全体の約40%を占める。英国の建築コンサルティング会社Buro Happoldで建築物理部門のアソシエイトディレクターを務めるジェイク・ウィリアムズ氏は、残りの60%に注目している。
「エネルギー効率に優れた建物」を実現する“あの技術”とは?
建物全体のエネルギー消費量を削減するには、冷暖房や照明、エレベーターなどの設備を建物の特性に応じて設計する必要がある。例えば建物を平たくすると自然光を取り入れるスペースを確保しやすくなり、建物の表面積を少なくすると暖房の使用を減らせる可能性がある。壁の厚い大聖堂などの建物は室温を保つ断熱によって冷暖房の使用を減らせる。ただしそのための建築素材を必要とする。
ガラス窓が建物に占める割合もエネルギー消費量に影響する。窓が開閉可能であれば、冷涼な時期は冷房を使わず室内を涼しくできる。一方で寒冷期は暖房の熱を逃してしまう。このようにメリットとデメリットは常にトレードオフの関係にあり、プロジェクトで抱える課題はそれぞれ違うという。
Buro Happoldは、英国の建築資源効率分析ソフトウェアベンダーIntegrated Environmental Solutions(IES)のソフトウェアを使用して、建物のエネルギー消費量を予測する。これにより、建設や改装の設計時からCO2排出量の抑制策を検討できるという。
ウィリアムズ氏によれば、同社のソフトウェアは以下のような用途に活用できる。
- ブラインドの開閉や照明の点灯など、建物内における行動調査
- 気候変動により生じる、異常気温に対する建物の耐性テスト
- 再生可能エネルギーの利用増加に伴い重要性が高まっている、電気料金のダイナミックプライシング(需要状況に応じて価格を変動させる手法)の導入
例えばIESが提供しているのが、ビルパフォーマンス可視化サービス群「Virtual Environment」だ。ユーザー企業は同サービス群を用いて、建物のデジタルツイン(実世界に存在する人や機械を仮想世界に再現したもの)を作成できる。これにより、天候の変化や、建物の利用パターンに応じたパフォーマンスをシミュレートできる。日照や気流、エネルギー消費量など、ビル管理に関するさまざまな指標のパフォーマンスが分析の対象になる。
Virtual Environmentの機能はそれだけではない。既存の建物の改修時には実際のエネルギー消費量のデータを用いて、ガラスの取り付けや冷暖房の設置、ソーラーパネルの追加など、設備を建物に取り付ける際のシミュレーションが可能だ。
建築物が気候変動に与える影響は重要な社会課題として広く認識されるようになった。ウィリアムズ氏は、建築業界でも持続可能性(サステナビリティ)やネットゼロ(温室効果ガス排出量が実質的にゼロの状態)に向けたプロジェクトは重要度を増しているという。
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[o9ソリューションズ・ジャパン株式会社] 「改正物流効率化法対策」徹底解説 総物流費を抑制するサプライチェーン戦略 -
製品資料
[o9ソリューションズ・ジャパン株式会社] 「サプライチェーン最適化」実践ガイド:効果的な意思決定を実現する秘訣とは? -
製品資料
[株式会社リンプレス] 非デジタル/IT人材を「自走するDX推進者」に変えるための育成ロードマップ -
市場調査・トレンド
[ワンアイルコンサルティング株式会社] AI時代の組織設計:「判断と責任」を人に残すための2つの原則とは? -
技術文書・技術解説
[ワンアイルコンサルティング株式会社] システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
1200万円のSaaS導入を回避 スギ薬局「運用費10万円」のAIエージェント構築術
-
2
「完璧な設計」なのに3000万円溶けた AWSの失敗事例から学ぶ3つの教訓
-
3
クラウド資格コレクターは評価されない? 年収1000万を分ける“OSの理解度”
-
4
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
5
高額な「AI PC」を一般従業員も使えたら? 費用のハードルを一気に下げる方法
-
6
「コピペ運用の限界」に直面するAI活用 7割超が“別画面”のまま使う理由は?
-
7
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
8
「AIバブル」は崩壊するのか? 熱狂の後に来る“尻拭い”と4つの防衛策
-
9
IT調達担当者が知るべき「IT機器 大インフレ時代の前向きな選択肢」
-
10
2035年までに1億4500万台、急拡大する「フィジカルAI」市場の勝者は誰か
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
2
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
3
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
4
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
5
「Google Workspace」活用事例34選、先進の生成AIによる組織変革の全貌
-
6
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
7
「人員を増やす」という選択肢はない 情シスが負の連鎖から抜け出すには?
-
8
「問題が深刻化しやすいプロジェクト管理」から脱却する方法とは?
-
9
Linuxのスキルを証明する“激推し”の認定資格はこれだ
-
10
NTTドコモが実践したクラウド統合監視 業務量2倍でも残業削減を実現できた理由
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー