「5G」を活用したスマート工場の進化にいち早く取り組んでいるのは、欧米の自動車メーカーだ。Ford MotorやMercedes-Benzは具体的に何をしているのか。
「5G」(第5世代移動通信システム)によるスマート工場の進化が注目を集めている。第2回「『5G×NFV』『ネットワークスライシング』でスマート工場を進化させる方法とは」は、5Gとともにネットワーク機能の仮想化(NFV)とネットワークスライシング(ネットワークを仮想的に分割する技術)を活用する利点をまとめた。第3回となる本稿は、Ford MotorとMercedes-Benzの事例を中心に紹介する。
企業は5Gを使用し、工場の機械からデータを収集して分析し、工場の稼働状態を監視できる。分析したデータを工場内の施設間で共有し、工場全体の運用効率を高めることも可能だ。調査を専門とする非営利団体Economic Strategy Instituteの上級研究員、ロバート・コーエン氏は「5Gがもたらす重要なメリットは、大量の情報を迅速に分析できることだ」と述べる。
5G活用による製造工程の改善は、結果として企業に収益をもたらす。では、自動車メーカーをはじめとした製造業は実際にどのような取り組みを進めているのか。Ford MotorとMercedes-Benzを例に紹介する。
Ford Motorはシステムインテグレーター(SIer)と協力し、5Gを使って各工場を相互に接続するシステムを構築している。同社の英国工場はバッテリー組み立て作業におけるセンサーのデータを収集し、分析エンジンに転送する。担当者の手元には機械の稼働状況に関するレポートが瞬時に届く。これにより、例えば欠陥のあるバッテリーを発見し、自動車に搭載する前に組み立て工程から対象のバッテリーを取り除くことができる。
コーエン氏によると、Ford MotorはSIerとの提携によって、システム運用の作業を改善している。SIerはネットワークを分割し、データの収集や分析も手掛けているという。
Mercedes-Benzはドイツにある複数の工場を5Gネットワークで相互に接続している。機械から収集して分析したデータは工場間で共有する。製造ラインの管理者がデータを閲覧し、製造工程の最適な管理方法に生かす。同社は、現実の世界から取得したデータを使ってデジタル空間で対象を再現する技術「デジタルツイン」も活用している。シミュレーションソフトウェアを使用し、デジタル空間で最良の製造方法を模索して製造工程に反映させている。
コーエン氏によると、Mercedes-Benzは6カ所の工場を相互に接続し、設計や製造、販売、点検など一連の工程でデータを活用している。その取り組みを支えているのが5Gネットワークだ。SIerと提携しているFord Motorと違い、Mercedes-Benzはシステム運用やデータ活用を全て自社で実施している。これにより、工場の構成変更に迅速に対応できるようにしている。
第4回は、VolkswagenとJohn Deereの取り組みを紹介する。
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