予算を圧迫する部品や機器の高騰
なぜストレージ不足は長引くのか? 77%が「12〜18カ月続く」と予測
データを保存する機器の価格高騰と品薄状態が、企業にIT計画の抜本的な見直しを迫っている。機器の延命措置などの場当たり的な対処が限界を迎える中、どのようなインフラ戦略の再構築が求められるのか。
2026年は「深刻なストレージ不足」の年となった。最新のスマートフォンやPCに買い替えようとする一般消費者から、データセンターのサーバやストレージを最新化しようと計画する大企業まで、誰もがかつてない供給不足の影響を受けている。私たちのデジタル生活を支えるストレージやメモリ部品の価格は、大幅に上昇している。
この問題の原因は明白だ。データ量が爆発的に増え続ける世界規模のAI利用を支えるため、ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)や最先端AIモデル(フロンティアAI)の開発企業が、フラッシュメモリやDRAM(主記憶装置)を大量に買い占めているからだ。
原因が分かっても、企業への影響が和らぐわけではない。世界中のITリーダーや運用担当者は、2026年以降のインフラ計画の見直しや軌道修正、場合によっては完全な再設計を迫られている。自社へのAIツール導入、仮想化構成の進化、サイバー攻撃への備え、世界的な情勢不安への対処など、彼らがただでさえプレッシャーに直面している中、今回のストレージ不足はこれ以上ないほど最悪のタイミングだ。
ストレージ不足が予算を圧迫し、IT戦略を再編させる
Informa TechTargetの調査部門Omdiaは2026年5月、北米のITリーダー400人に対して、2026年のストレージ不足による影響とそれに伴う対処を調査した。今回の事態は、サプライチェーンで定期的に発生する一時的な混乱とは全く異なる。早期の解決は見込めず、影響は長期化する恐れがある。そのため、IT部門が眼前の課題への対処だけではなく、戦略的な対策を練らざるを得なくなる可能性がある。以下に調査結果から明らかになったポイントを挙げる。
ほぼ全ての企業に影響
調査によると、回答者の87%が「メモリとストレージの価格上昇が、現在のIT予算に中程度または深刻な影響を与えている」と答えた。大半の企業は当面の間、大幅な改善は見込めないと回答しており、77%が「今後12〜18カ月間は、ストレージ不足が深刻または中程度の影響を及ぼし続ける」と考えている。特に懸念されるのは、回答者の74%が「ストレージ不足のせいで、オンプレミスデータセンターにAIインフラを導入する動きが遅れている」と答えたことだ。
難局を切り抜けるための企業の戦術
ITリーダーは、目先の価格高騰と品薄状態による影響を最小限に抑えようと、さまざまな手段に打って出ている。「重要度の低い機器の購入を先送りする」「IT予算の他の項目から費用を回す」「既存のストレージ機器を計画よりも長く延命する」「一時的なつなぎとしてクラウドストレージを活用する」といった手法は、目先の出費を少しでも切り詰めたいITリーダーに好まれる選択肢だ。
長期的な戦略を再構築
回答者の80%が「インフラ全体の効率を高めようとしている」と答えた。ストレージを効率化する技術は新しいものではないが、激しい価格高騰の時代では、「あれば便利なもの」から「不可欠なもの」へと変わった。重複排除やデータ圧縮といったシステムレベルの機能はもちろん、全く新しいアプローチを企業が検討している点に注目したい。
例えば、頻繁に使うデータは高速なフラッシュストレージ、そうでないデータは安価なHDDやクラウドストレージ、磁気テープへと、データを利用頻度に応じて自動で移動させる「ティアリング技術」だ。プライマリーストレージ、セカンダリーストレージ、バックアップやアーカイブなど、複数のインフラを少数の物理機器に集約する製品群、データおよびストレージの管理を物理ハードウェアから切り離す「ソフトウェア定義ストレージ」(SDS)といった選択肢も候補に挙がっている。
企業にとって今回のストレージ不足は、自社システムをパブリッククラウドへ移行させたいという意欲を一段と後押しする結果になった。
今回の調査から見えてきた重要なテーマは、2026年の深刻なストレージ不足が、その発生タイミング、規模、期間の全てにおいて、ITリーダーに多大な影響を与えたことだ。彼らは短期的な危機を乗り切るために最善を尽くす一方で、再び同じ事態が起きたときに備えて万全の態勢を整えたいと考えている。
「長期的に見ればストレージやメモリの容量単価は下がり続け、調達に困ることはない」という市場への楽観的な前提は覆された。これを受けてITリーダーは、データやストレージを配置するシステムの設計や構築方法を見直している。インフラ機器の調達方法やベンダーとの連携方法など、他の関連要素も再評価している。
最後に、今回の調査が浮き彫りにした興味深い事実を紹介したい。それは、企業が保存しているデータの中身を、企業自身が深く理解できていない実態が、今回のストレージ不足によって暴かれたことだ。かつてないほどの価格高騰に直面する中、企業がため込んでいる膨大な「ダークデータ」(活用されていないデータ)は、多大な経費の浪費につながっている。それらのデータは未開拓の巨大なビジネスチャンスであると同時に、データ漏えいなどの重大なリスクを引き起こす火種にもなり得る。
2026年の深刻なストレージ不足は確かな爪痕を残しており、今後しばらくの間、企業の長期IT戦略に影響を与え続けるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIに何を聞いても「汎用的な答え」しか返ってこないのはなぜか? -
製品資料
[サイボウズ株式会社] なぜAIは組織で定着しないのか? 全社活用を阻む「3つの壁」の突破法 -
製品資料
[株式会社スタディスト] 「不適合品率」改善はどこから始める? すぐにできて効果が大きいポイントとは -
製品資料
[株式会社スタディスト] 食品ロスを利益に変える「現場標準化」のすすめ -
技術文書・技術解説
[株式会社スタディスト] チョコ停・ドカ停を防ぐ「事前対策」の進め方
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
RAGで「データをAIに送る」運用が限界を迎えている理由
-
2
Claude利用8割のGMO、AI人材の評価軸が「トークン管理」に変わった
-
3
建設業のAI活用はなぜ「メール作成」止まりなのか 調査に見る“浸透の壁”
-
4
Googleの業務向けAIエージェント「Gemini Agent」が登場 しかし課題は山積み
-
5
「Copilot」がIT予算を食いつぶす? 高額請求を招く課金体系と節約術
-
6
いまIBM iエンジニアが直面する「5つの技術的課題」とその解決策
-
7
【基本情報技術者試験】データ消失リスクを防ぐ3つの「バックアップ手法」を比較
-
8
SAPの負荷増に苦しむZeissが「リアルタイム分析」「安定運用」を両立させた道
-
9
なぜ「Claude Code」拡張は消しても危ないのか? Cursorで不正版配信
-
10
Microsoft 365侵害企業の9割はMFA導入済み 1002人調査で見えた盲点
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
2
侵入から横展開まで27秒の脅威にどう立ち向かう? 防御のカギがEDRの理由
-
3
有識者が語る、中堅中小企業に求められる最新のサイバーセキュリティ対策とは
-
4
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
5
10G回線の真価をフルに享受するには? 導入前にチェックしたいポイント
-
6
なぜAIは組織で定着しないのか? 全社展開を阻む「3つの壁」と突破のヒント
-
7
パスワードレスへの移行で失敗しないためには? 導入・運用上の注意点を解説
-
8
自社のセキュリティ対策は大丈夫? 自己診断リストで対策の優先順位が分かる
-
9
ランサムウェア攻撃“究極の対策”はこれだ
-
10
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー