Case Study
顧客の気持ちがすぐ分かる──音声分析ソフトを活用するコールセンター
顧客からの電話を年間約400万件処理している保険機関のWPSでは、音声認識ソフトを利用して、「困った」や「キャンセル」など、顧客がトラブルを経験したことを示唆する言葉が通話中に出てこないかどうかをチェックしている。
非営利医療保険機関ウィスコンシン・フィジシャンズ・サービシズ(WPS)は高度な音声認識ソフトを利用して、「困った」や「キャンセル」など、顧客がトラブルを経験したことを示唆する言葉が通話中に出てこないかどうかをチェックしている。顧客がとげとげしい口調になったり、かんしゃくを起こした場合には、同ソフトでも識別され、そうした通話は特別な対処が必要なものと分類される。
特別な対処が必要と判断された通話の記録は、「ほぼ即座に」コールセンターの管理者に送られ、管理者はそれを聞いて顧客への事後対応を行う。これにより、顧客に好印象を与えることができるのだ。
音声分析市場は、まだ先進企業が採用する段階にとどまっているが、企業はこの技術にBIツールとしての可能性を見いだしている。音声分析ソフトで得られるデータは、ビジネス上の意味が導き出せれば全社的に共有することができ、それに基づいて適切に行動すれば、成果と利益を拡大できる可能性がある。
非営利医療保険機関ウィスコンシン・フィジシャンズ・サービシズ(WPS)は、顧客からの電話を年間約400万件処理している。1年ほど前から、同機関は顧客の声にますます真剣に耳を傾け始めた。
WPSは高度な音声認識ソフトを利用して、「困った」や「キャンセル」など、顧客がトラブルを経験したことを示唆する言葉が通話中に出てこないかどうかをチェックしている。またWPSは、顧客の気持ちが表れる声の高さ、大きさ、音色の変化をリアルタイムに監視することもできる。顧客がとげとげしい口調になったり、かんしゃくを起こした場合には、同ソフトでも識別され、そうした通話は特別な対処が必要なものと分類される。
「幸い、そうなるケースは多くないが、そうなった場合でも、われわれはサービスの差別化につながる対応を取ることができる」とWPSの加入者サービス担当副社長、シャロン・ホイットワム氏は語る。
特別な対処が必要と判断された通話の記録は、「ほぼ即座に」コールセンターの管理者に送られ、管理者はそれを聞いて顧客への事後対応を行う。「こうすることで、『おや、この組織はよく気を遣ってフォローの電話をかけてきてくれた』と顧客に好印象を与えることができる」と同氏は説明する。
WPSが利用している音声分析ソフトは、イスラエルのNICEシステムズの製品だ。同社は1986年から世界中の多くの大企業に通話記録サービスを提供してきた。2004年末にNICE Performをリリースし、このソフトのユーザー企業は現在約100社となっていると、グローバルマーケティング担当副社長のエヤル・ダノン氏は語る。
NICE Performの感情認識アルゴリズムは、うそ発見器のように、通話開始時の音声の状態を基準に取り、通話中の音声についてそこからの隔たりを測定するもので、メディアの注目を集めている。
だが、早期導入企業は同ソフトのワードスポッティング機能(あらかじめ指定した言葉のみを音声から抽出する機能)を利用して、通話傾向の把握や従業員教育、さらにはビジネス戦略の策定も行っている。例えば、フェデックスはNICEのソフトにより、顧客が「Wow」(喜びや驚きなどを表す)と声を上げた通話を特定し、顧客担当者らにそのやり取りを聞かせて、どうしたら顧客が喜ぶかを学ばせるようにした。
WPSのホイットワム氏は、ワードスポッティング機能は「実に有益だ」と語る。同氏によると、WPSは現在、高齢者の顧客から、政府の(分かりにくいことで悪名高い)メディケアの新しい処方薬プログラムへの加入を受け付ける業務で、NICEのソフトを試験的に運用している。WPSはワードスポッティング機能を利用して、「分からない」などの言葉が使われた通話を特定し、スタッフ教育の改善とマーケティング資料の改良のどちらによって問題が解決できるかを判断しているという。
「このメディケアの処方薬プログラムの業務リポートは、通話記録とリンクされており、リポートを読みながら通話記録を直接呼び出して聞けるようになっている」(ホイットワム氏)
また、音声分析ソフトの導入は現場のスタッフに影響を与える。WPSは、かねてから顧客対応の通話をすべて記録してきた。だが、ホイットワム氏は当初、スタッフが、自分の話す言葉をすべて監視するツールにどんな反応を示すかに注意を払ったという。WPSは2つのコールセンターで約90人のスタッフを抱えている。
「このツールの導入が成功するためには、われわれのスタッフがこのツールを、自分たちを見張るものとして敬遠するのではなく、仕事に役立つものとして受け入れることが必要だった」(ホイットワム氏)
このツールは着実に支持を獲得している。ホイットワム氏によると、約1年前、怒った顧客から苦情が殺到したことがあった。ある医療機関が顧客からの保険支払い請求の処理を誤り、請求を却下していたためだ。コールセンターのスタッフは困惑していた。「ワードスポッティング機能を利用することで、われわれは問題を突き止め、その医療機関に要請して誤りを修正してもらえた。スタッフは感謝してくれた」(ホイットワム氏)
市場調査会社フロスト&サリバンの業界アナリスト、シーマ・ラル氏は、音声分析市場は、まだ先進企業が採用する段階にとどまっているが、企業はこの技術にビジネスインテリジェンス(BI)ツールとしての可能性を見いだしていると語る。「音声分析ソフトで得られるデータは、ビジネス上の意味が導き出せれば全社的に共有することができ、それに基づいて適切に行動すれば、成果と利益を拡大できる可能性がある」と同氏は電子メールで述べた。
音声分析の分野では、NICE、ベリントシステムズ、エンビジョンテレフォニー、ウィトネスシステムズなどがしのぎを削っている。ラル氏は、NICEが最も包括的な製品を持っており、ベリントがわずかな差で続いていると指摘している。
WPSでは、音声分析ツールはビジネス価値を生み出しているとホイットワム氏は語る。同機関は最近、ある大都市自治体を新規顧客として獲得した。保険業者の変更は職員にとって重大なことであることを認識し、WPSはこの市の移行に対応したワードスポッティング機能をすぐに用意した。
「保険支払請求の処理を始めたばかりのごく早い段階で、われわれは1件の通話から、給付金の設定上の問題を発見した。見逃していたら、膨大な数の請求に対して誤った金額を支払ってしまうところだった」とホイットワム氏。「この問題を発見したことで回避できた損失は計り知れない」
(この記事は2006年2月6日に掲載されたものを翻訳しました。)
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