3人以下への依存が招く運用崩壊
障害対応に「余裕なし」が9割超 運用担当316人調査で見えた「運用赤字」
障害対応に追われ、システム改善やドキュメント整備が後回しになる現象が深刻化している。PagerDutyの調査では運用担当者の9割超が限界を訴えた。現場を追い詰める「運用赤字」とは何か。
インシデント管理ツールベンダーPagerDutyは、システム障害処理の最前線で起きている実態を明らかにする調査レポートの第1弾を発表した。本調査は、従業員1000人以上の企業でシステム運用やSRE(サイト信頼性エンジニアリング)に携わり、過去1年以内にシステム障害処理を経験した316人を対象として、2026年8月に実施された。
調査結果によると、システムの安定稼働を支える現場で、現状の人員や体制のままでは運用を継続することが困難だと感じる担当者が9割を超えた。AIツールの導入や外部システムとの連携が進んでシステム構成が複雑化する中、日々のインシデント処理に追われて、本来の業務が停滞する構造的な問題が浮き彫りになった。企業が抱える負債の正体と、それが及ぼす事業への影響とは何か。
なぜ約7割の現場が「業務の継続困難」を訴えるのか
調査のデータから、システム運用の現場が極めて切迫した状況にあることが読み取れる。現在の人員や体制でシステム障害に「恒常的に対応し切れていない」と回答した割合は19.0%、「対応し切れないことがある」は47.2%であり、合計66.2%が処理の限界に直面している。「なんとか対応できているが、余裕はない」(27.5%)を含めると、全体の93.7%が人員に余裕のない状態で業務に当たっている。現状と同程度のシステム障害が今後も発生し続けた場合、現在の体制のままでは継続が難しいと回答した割合は77.4%に達した。
この背景にあるのが、運用対象となるシステムの急速な複雑化だ。調査時点から過去1年間に起きた変化として、「システム間・外部サービスとの連携が複雑になった」と回答した割合が50.6%で最多だった。次いで「運用するシステム・サービスの数が増えた」が49.4%、「AIを組み込んだシステム・サービスが増えた」が38.9%と続く。新たな技術や外部システムの導入が加速する一方で、「業務量に対して、人員が増えていない」と指摘する声も35.4%存在する。システムの高度化に見合うだけの人員の拡充が追い付かないことが、現場の負荷を押し上げる大きな要因だ。
隠れた負債「運用赤字」がもたらす属人化と事業リスク
目の前で発生するインシデントの解決が最優先される結果、中長期的な安定稼働に向けた業務が慢性的に後退している実情もある。システム障害の処理を優先した結果として後回しにした、あるいは着手できなかった業務として、「システムの改善・リファクタリング」が50.3%で首位となった。続いて「手順書・ドキュメントの整備」が44.9%、「障害の再発防止策の実施」が40.5%、「チームメンバーの育成・教育」が36.7%という結果が出た。
これらの積み残された業務は、いずれも次の障害を未然に防ぎ、作業の効率を上げるための前提になるものだ。PagerDutyは、このように体制を整えるための業務が停滞し続ける状態を、財務諸表には表れない「運用赤字」として定義する。運用赤字の膨張は、結果的に将来のさらなる障害発生と処理負荷の増加につながる悪循環を生み出す。
この運用赤字がもたらす最大のリスクが、業務の属人化だ。システム障害を処理するために必要な判断や知識を担う人数を尋ねたところ、「特定の1人に集中している」(6.0%)と「2〜3人に集中している」(33.9%)を合わせ、39.9%の職場で3人以下の少人数に依存することが明らかになった。中心となる担当者が急な退職や休職などで不在になった場合、「同じ水準の処理は難しいと思う」(40.2%)、「処理が遅れると思う」(27.8%)を合わせた68.0%が、現状の維持は困難であると見ている。自由回答でも、障害の発生理由や解決方法が個人の知識にとどまっており、同様の障害が発生した際の解決までの時間にばらつきがあるとの声が寄せられた。
経営陣との認識のずれと解決に向けた4つのアプローチ
現場の危機感に対して、経営層の理解は十分とは言えない。経営層や事業部門の責任者が現場の実態をどの程度把握しているかという設問において、「障害対応のために後回しになっている業務」について47.5%が「あまり把握していない」または「全く把握していない」と答えた。
現場が経営層や他部門に特に知ってほしいことの上位には、「障害対応のために、本来の業務が進まないケースがあること」(47.2%)、「いつ連絡が来るか分からず、気が休まらないこと」(46.8%)、「対応が特定の担当者に偏っていること」(45.9%)が挙がった。自由回答にも「個人の負担で成り立っている部分がある」「システムの安定運用には費用が必要であることを理解してほしい」といった、経営陣の認識とのギャップに対する訴えが見られた。
システム運用が機能不全に陥る事態を防ぐため、PagerDutyは以下の4つの対策を提示する。
- インシデント処理に費やす時間とその影響の可視化
- 経営層が把握できていない「後回しになっている業務」を具体的な項目として示し、何が停滞しているのかを明確にする。
- 後回しにされている業務への時間の再配分
- 手順書の整備や再発防止策の実施など、運用赤字を減らすための業務へ優先的に時間を割り当てる。
- 判断・知識が集中している前提での体制設計
- 少人数に依存している現状を前提に置き、個人の知識をチーム全体で共有し、組織として仕組み化する。
- 現場と経営における同一指標の共有
- 本来の業務への影響や特定の担当者への負荷の偏りといった、現場が共有を求めている論点を経営への報告指標として採用する。
複雑化したシステムに対処するには、単なる人員の増強にとどまらず、体制を整えるための前提業務を仕組みとして構築することが不可欠だ。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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