患者との関係強化にも有効
動き始めた「スマートフォン医療」 手のひらを医療現場に
スマートフォンなどのモバイルデバイスを医療に生かす「モバイル医療」の試みが広がっている。患者の健康改善や医療業務の効率化といった効果も明らかになり始めた。モバイル医療の最前線を追った。
現在のモバイル技術をもってすれば、ヘルスケア業界が今日経験しているよりもはるかに高いレベルのモバイル医療(mHealth)が実現できる――。そう考える専門家は少なくない。モバイルデバイスの処理能力が足りていないのではなく、価値のあるモバイル医療アプリケーションが出そろっていないだけだ。
そこで生じるのが、「どのような製品ならば、患者や医療従事者によるモバイル医療アプリの利用を最大限に促進できるか」「ヘルスケア分野の利害関係者はモバイル医療からどのような価値を引き出せるか」といった疑問である。
患者と保険者との関わり
ヘルスケア分野では、さまざまな利害関係者がサービスを提供し、患者と関わっている。医療保険の運営主体である保険者、疾病登録局、医療提供者、医療施設、研究組織、従業員など、官民を問わずさまざまな組織や人が関与している。患者の受診時には、医師が治療の円滑化や向上にモバイル医療を役立てる機会がありそうだ。モバイル技術のあらゆるユースケースの可能性を考えれば、医療分野におけるモバイル技術の活用度合いがまだ序の口にすぎないことは明らかだ。
医療費を負担する保険者からすれば、モバイル医療は「複雑な慢性疾患を抱える患者(被保険者)が自らの体調を管理し、転帰を改善するためのツール」になり得る。モバイル技術の恩恵を最も多く享受するであろう患者グループをサポートするアプリがあれば、恐らく長期的なコスト削減と転帰改善の両面でプラスに作用するはずだ。
雇用主の取り組み
企業の中には、医療費を抑えるために、従業員向けの健康プログラムを全社規模で実施しているところがある。大手企業グループの社内診療所には、地元の病院で定期健診や軽い病気の診察を受ける費用を無料にしているところもある。あるいは、社内のスポーツ活動や社員を対象としたダイエットコンテストへの参加を促すことで、従業員に活動的で健康なライフスタイルを奨励している企業もある。
どのような取り組みを推進するにせよ、モバイル医療アプリは、従業員が健康に関する助言を求めたり、自らの健康変化を追跡したりするためのプラットフォームとなる。こうしたプラットフォームは、従業員の参加状況に関する有益なデータを提供するだけでなく、より健康的なライフスタイルへと移行できた人たちに報酬を与える手段にもなる。従業員の健康改善が、医療費の削減だけでなく、より健全な労働力の確保につながる企業も出てくるだろう。
病院の関与
病院によっては、地域内の複数の場所で治療を提供することで患者との関係を強化しているところがある。だが米Kaiser Permanenteなど一部の病院では、モバイルデバイスを活用した取り組みに対する患者からの反応が良いという。検査結果、薬の補充要請、予約スケジュールの調整、啓発資料など、各種の情報やツールをスマートフォンから利用できるようにしたことで、多くの患者の間でモバイルツールの利用が広がっている。
臨床研究
臨床研究機関では従来、患者から治療体験に関するフィードバックを集めるために紙の書類が多用されてきた。だが今なら、患者のモバイルデバイスからリアルタイムでデータを取得することで、コストを大幅に削減できる。紙ベースの複雑なワークフローを管理する必要もなくなり、書類を保管したりスキャンしたりするコストも回避できる。患者の反応を追跡し、患者にフィードバックの報告を念押しするアプリもある。
モバイル医療は、ヘルスケア分野の多くの利害関係者に、患者の治療やケアを促進するための素晴らしい機会を提供してくれる。アプリの中には、すぐには投資効果を見込めないものもあるかもしれない。ただし、モバイル医療アプリが実際に人々の健康改善やコスト削減に役立ち、一部には増収につながるケースまであることは、既に幾つかの取り組みでも証明されている。
本稿筆者のレダ・シュファーニ氏は、医療業界向けのソフトウェア開発・導入サービスを手掛ける米Biz Technology Solutionsの開発担当副社長。
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